卒業祝賀会フリートーク・その2
3月23日(金)
12時半にホテルに着くと、会場ではすでに集合写真を撮影する準備が始まっていた。
集合写真を撮り終えたあと、同じ場所で祝賀会が行われるので、会場設営に少し時間がかかる。そのあいだは、着かざった学生たちと、廊下や階段で「写真撮影タイム」である。
最初は普通のネクタイ(というか少し派手な色のネクタイ)をしていたが、やはりどうも、背広の右ポケットに入っている「蝶ネクタイ」が気になる。
SさんとMさんが「一緒に写真を撮りましょう」と言ったときに、意を決して、提案することにした。
「実はこんなものがあるんだが…」
私は右ポケットから蝶ネクタイをとりだして見せた。
「普通のネクタイよりも、蝶ネクタイの方が絶対いいです」2人が口をそろえて言う。
そりゃあ、絵的にはそうだろう。
結局、SさんやMさんに後押しされる形で、蝶ネクタイに変えることにした。
「あくまでも、撮影用ね、撮影用」
自分に言い聞かせるように、ネクタイをつけかえた。
「あ、いいですねえ。絶対に蝶ネクタイの方がいいですよ」と、SさんとMさんが言う。
だが、疑り深い私は、その言葉を素直には信じない。
「そんなこと言って、私を陥れようとしているんだろ」
「そんなことありませんよ!」
「いや、絶対に心の中ではバカにしているはずだ」
「そんなことありませんって!」
そう言うと、Sさんは通りかかる学生をつかまえては、
「ねえねえ、蝶ネクタイの方がいいよね」
とみんなに確認させる。
私はだんだん恥ずかしくなった。
ただ、それがあまり恥ずかしくなくなったのは、会場の設営が終わり、みんなが着席して、祝賀会が始まってからである。
料理を運んでくるホテルの従業員たちは、みんな蝶ネクタイをしているではないか!
(なあんだ。蝶ネクタイをしたくらいで恥ずかしがっていたら、このホテルの従業員はつとまらないぞ)
そう思うと、少し気が楽になった。
気が楽になるどころか、少し気が大きくなりだした。偉い方々の挨拶が終わって祝宴がはじまると、会場を無意味に歩きまわって同僚に自慢したり、一緒に写真を撮ったりと、結局、まんざらでもない感じになった。
(こんなことなら、最初っから蝶ネクタイをしてくればよかった)
まったく、厄介な性格である。
…あれ?まだ料理を食べてないぞ!
この続きは、次回に。
| 固定リンク
「職場の出来事」カテゴリの記事
- 1週間を乗り越える(2025.01.11)
- 仕事始め(2025.01.06)
- 疲労のピーク(2024.10.29)
- 2連勤の2日目・Tシャツを着て仕事をする(2024.10.20)
- 2連勤の1日目(2024.10.19)
コメント