ソン・ガンホは「寅さん」をめざすのか
3月25日(日)
夕方6時から、ホテルの大会場で、同業者が200人ほど集まるパーティーがある。人づきあいが苦手な私にとっては、とても気が重い。
夕方まで時間があるので、映画館で映画を見ることにした。
おりしも、いま日本で、私の大好きな俳優、ソン・ガンホが主演する映画「青い塩」を公開中である。監督は、あのチョン・ジヒョン主演の「イルマーレ」を撮った監督である。
この映画はたしか、昨年の夏に韓国で公開された映画である。昨年夏、韓国の大邱で、語学院でお世話になったナム先生御一行とドライブに行ったとき、この映画の話題が出たことを思い出した。そのときの会話。
「キョスニム、ソン・ガンホが好きだ、っておっしゃってたでしょう」
「ええ」
「いま、ソン・ガンホの映画が公開中ですよ」
「そうですか」
「相手役は、シン・セギョンです」
「ああ、『屋根を突き抜けてハイキック』の」
「そうです。あのかわいい女の子です」
「それは面白そうですね」
「そうでしょう。この映画はね…」
と、あろうことか、ナム先生は、ネタバレになるようなストーリーを話しはじめたのである。
「ネタバレ」になるような話を聞くことは、韓国でそれまでにも何度か経験したことがあって、韓国の人たちは、映画の「ネタバレ」に関して、日本ほど神経質でないのだな、と思った。
それはともかく。
さて、映画の感想だが…。
以前、山田洋次監督がソン・ガンホの映画を見て「韓国にも渥美清みたいな俳優がいるんだね」と評したことがある、と、このブログでも紹介したことがある。私の大好きな映画であるソン・ガンホ主演の「大統領の理髪師」は、渥美清主演の映画「拝啓天皇陛下様」(野村芳太郎監督)を彷彿とさせる、ということも、前に書いた。
ソン・ガンホは、「渥美清」化してるなあ、というのが、この映画を見ての感想。
どうだ、わからないでしょう。
ある人が、日本映画「男はつらいよ」を評して、
「暴力のないやくざ映画」
と言った。けだし名言である。
それに対して、ソン・ガンホがやくざに扮する映画は、
「暴力のある寅さん映画」
というべきものである。
たとえば、以前に彼が主演した映画「優雅な世界」がそうである。映画の中にあらわれている「暴力」の要素を除けば、彼の孤軍奮闘ぶりは、寅さんを彷彿とさせる。
今回の映画もそうである。
ソン・ガンホが、あまりにも「いい人」すぎるのである。相手役のシン・セギョンに対するまなざし、というか、愛情の注ぎ方、というのは、「寅さん」のそれとまったく一緒である。逆に、若き女性、シン・セギョンの「アジョッシ(おじさん)」に対するまなざしも、マドンナの寅さんに対するまなざしによく似ている。
つまりは、ソン・ガンホの「聖化」がはじまっているのではないか。それは、当初、暴力的で破天荒だった寅さんが、しだいに「いい人」になり、「聖化」されていったのと、同じように、である。
この映画のソン・ガンホは、たしかに、とてもかっこいい。以前にくらべて、体型も締まっており、先日見た映画「犯罪との戦争」で、チェ・ミンシクがすっかり中年太りになってしまったのとは、対照的である。正直言って、私もこんなアジョッシ(おじさん)になりたい、と思ったくらいである。ここ最近のソン・ガンホは、かつてのような「ぶざまな部分」が消え、「理想のアジョッシ(おじさん)」に「神格化」されつつあるように思えてならないのだ。
ソン・ガンホは、これからどこに向かうのか。
もう少し、注目していこう。
…ここまで読んでくれた人、ごめんなさい。何が何だかぜんぜんわからなかったでしょう。文章もこなれていないし。たぶんこの映画を見てこんな感想を抱く人は、誰もいないと思います。
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コメント
「寅さん スペース ソンガンホ クリック。」(漫才師の「HiHi」風に)
「男はつらいよ」韓国版 勝手にリメイク構想
http://www.asahi.com/international/seoul/TKY200406300291.html
その2
http://www.asahi.com/international/seoul/TKY200407140256.html
シン・セギョンは、現在(韓国で)放映中チャングンソク・少女時代ユナの月火ドラマ「さらんぴ(Love Rain)」の裏番組である、ドラマ「ファッション王」で、少女時代ユリと共演してますので、お好きな方はぜひ。
投稿: こぶぎ | 2012年3月29日 (木) 05時00分
なるほど。リンク先を読むと、結論は同じだが、考察は私ほど深くない(笑)。
投稿: onigawaragonzou | 2012年3月30日 (金) 00時12分