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続・往復100㎞の友情

往復100㎞の友情

4月16日(月)

午後の授業が終わった4時過ぎ、研究室でひと息ついていると、扉をたたく音がした。

「はい、どうぞ」

「どーもー」

と研究室に入ってきたのは、こぶぎさんと、Kさんであった。ともに、「前の職場」の同僚だった友人である。

「こ、こぶぎさん…。ど、どうしたんですか?」

私はこぶぎさんの突然の登場にビックリした。

「手伝いに来たんですよ。引っ越しの」

「まさか…」

「本当ですよ」こぶぎさんの後ろで、Kさんも笑っていた。

Photo 「だって、手伝ってくれって、ブログでフラグが立ってましたから」こぶぎさんはそう言うと、カバンの中から、ハタキを取り出した。「私の母親手製のハタキも、ほら、こうして持ってきました」

あまりに突然のことでビックリである。だって、こぶぎさんとKさんの職場から、うちの職場までは、片道50㎞もあるのだ。おいそれと来られる距離ではない。

「さ、やりましょう。何からしましょうか」

2 そう言うと、こぶぎさんは、本棚にハタキをかけ出した。

「いやいやいや、ちょっと待ってください。突然そんなこと言われても」

「でも、せっかく来たんですから、手伝わせてください」

どうやら、本気である。

「じゃあ、ダンボール箱を作ってください」

とりあえず、ダンボール箱を作ってもらうことにした。

2_3 ただ、ダンボール箱を作る空間がないので、廊下で作るしかない。

こぶぎさんとKさんが廊下でダンボール箱を作っていると、同僚たちが、「どこの業者さんなのか?」みたいな不審な者を見るような目で通り過ぎる。

「ダンボール箱作り、楽しいですねえ」とKさん。「この仕事に向いているかもしれません」

廊下で、二人が楽しげにダンボール箱を作れば作るほど、こちらは、周りの目が気になって仕方がない。

Photo_3 ダンボールを作っている姿を見ながら、たずねた。

「あのう、…本当は、今日は何かのついでに来たんでしょ?」

「いや違いますよ。本当にこのために来たんです。だからあらかじめ、そちらの学生さんにMさんの予定を聞いて、この時間ならいるようだ、というので、来たんです」

言ってみれば「ドッキリ」である。いずれにしても、私を驚かすためだけに、わざわざ片道50㎞の道を、車を走らせて引っ越しの手伝いに来てくれたんだな。私は、二人の「往復100㎞の友情」に感謝した。

そうこうしているうちに、6時近くになった。今日は6時から、新年度最初の、クリーニング作業の日なのだ。

「せっかくですから、新しくなった作業場を見ていってくださいよ」と私。

引っ越しのお手伝いを終えてもらい、Kさんとこぶぎさんを、新しい作業場に案内する。Kさんは、この活動の主要メンバーだからみんなに知られていたが、こぶぎさんをはじめて見た人が多かったようである。

2人が帰ってから、メンバーの1人であるSさんが私に聞いた。

「Kさんの隣にいた方は、どなたなんです?」

「あの方ですか?こぶぎさんですよ」

「ああ!あの方がこぶぎさんなんですか!」

すでにこぶぎさんは、「こぶぎさん」の名前で有名人であった。

「二人はどうしていらしたんです?」と、世話人代表のKさん。

「私の引っ越しを手伝いにきてくれたんですよ」

そう答えると、世話人代表のKさんは言った。

「なんか先を越されたようで、悔しいですねえ。私も手伝おうと思っていたのに…。あの二人、点数を稼ごうとしているんでしょう」

「何の点数ですか!?」点数を稼ぐ、の意味がわからない。

「今度は絶対、私も手伝いますからね」世話人代表のKさんは言った。

クリーニング作業が終わり、午後8時に解散したあと、元同僚のKさんから電話がかかってきた。

「まだこちらにいるんで、一緒に夕食をとりましょう」

いつものファミレスで、夕食をとりながら、いつものように、マニアックな話をする。

「少女時代」から「山本邦山」まで。

気がつくと夜11時半になっていた。

「もう引っ越しの手伝いはしないけれど、またいずれ」とこぶぎさん。

「気をつけて」

二人は、片道50㎞の道を、車で帰っていった。

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コメント

 いやー 世のため人のため。やはり善行すると気持ちがいいですねえ。特に、アポなしで押しかけるとねえ。
 上の一枚目の写真を撮りながら、「くっだらねー」と連呼されていましたが、最高のほめ言葉でしたよ。

 良いことをしたので運気も上昇したのか、お陰さまでKARAの追加公演チケットの抽選に当たるわ、さっきまで2話連続放送してた「オクセジャ(ドラマ「屋上部屋の皇太子」の略称)」もますます面白いわ、全く嬉しい限りです(いつもの「「カインとアベル」的どろっどろの社長跡目争い」という陳腐なストーリーが、朝鮮時代からタイムリープして来た人の転生譚を複線に入れるだけで、こんなに魅力的で楽しいロマンチックコメディになるとは大発見でした)。

 最後に、研究室を急襲したその時も、ネットで書籍注文した直後だったとか思いますが、「引越し中に、さらに荷物を増やしてどうすんの!」と突っ込んでおきますよ。

(おまけ)
 こちらのブログの最新記事ですが、初見の方にも分かりやすいように加筆しておきました。追加したリンク先の、スヨンとソニのコント動画が息もぴったりで、たまりません。

投稿: 引越しボランティア | 2012年4月20日 (金) 01時24分

KARAのチケットが当たりましたか!それはおめでとうございます。

話がこみ入ると思って本文には書きませんでしたが、こぶぎさんがコメント欄で紹介してくれた『魂の点火者』という本をインターネットで注文しようとした矢先に、こぶぎさんが来たので、「本人登場!」とばかりに驚いたわけでした。

「くっだらねー」は、コサキンリスナーにとっては、褒め言葉ですよね。

投稿: onigawaragonzou | 2012年4月21日 (土) 00時42分

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