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車は人なり

4月22日(日)

自分の車を車検に出した。

私は、車というものに、まったく思い入れがない。

世に、どのような名前の車が走っているかなど、まったく関心がないのである。

車の名前に興味を持つとすれば、その車に乗っている人に興味を持った場合である。

だから順番としては、その人に興味を持ち、その結果として、その人の乗っている車に興味を持つのである。

それで思い出したことがあった。

前の職場の同僚だった、Oさんの車である。

Oさんは、この日記でもたびたび登場する、私に韓国留学のきっかけを与えてくれた人である。

10年ほど前の話である。Oさんが乗っている車は、靴でいえば履きたおして靴底がすり減った感じの、「乗りたおした」感じの車だった。

で、ときどき、よく故障した。

その車にまつわるエピソードはたくさんあったが、覚えている範囲で書くと…、

ある夏の日のことである。Oさんは東京に出張に行くため、車を、駅の近くの河川敷にとめた。

本当はそんなところに駐車してはいけないのだが、駅前の有料駐車場の代金を惜しんだOさんは、(2、3日のことだから、まあいいだろう)と、気にもせずに駐車したのである。

数日後、出張から帰ったOさんは、車を止めておいた河川敷に行って驚愕した。

車が、駐車したはずの場所からかなり離れた場所にあり、しかも横転しているではないか!

どういうこっちゃ?と思っていろいろ調べてみると、Oさんが東京出張している間、この河川敷で、大規模な花火大会が行われた。

河川敷には当然、屋台が出る。

屋台を出すはずの場所に、不法に駐車している車があるではないか。

これはジャマだ!どかしてしまえ!ということで、オッチャンたちが、ヨイショヨイショと車を押して移動させ、最後、怒りにまかせて横転させた、というわけである。

この顛末に、Oさんは怒り心頭だったが、そもそもそんなところに駐車した方が悪い、と、その話を聞きながら思った。

そんなふうに手荒く扱われている車だから、当然、ガタがくる。

あるとき、Oさんが職場から家に帰ってきて、家の駐車スペースに車を止めると、車が走ってきたルートに、1本の液体の筋ができている。

よく見ると、ガソリンである。

どうやら、ガソリンがタンクから漏れていたのである。

さっそく修理しに行こうと思ったが、

(待てよ、いまうっかりエンジンをかけると、漏れたガソリンに引火して、車が爆発するかもしれない)

と思い、そう思うととたんに恐くなって、

(そうだ、ここはいったん、一晩かけてガソリンを全部出してしまおう)

ということで、一晩待つことにした。

翌日、車のガソリンタンクからガソリンがすっかり漏れだしたことを確認した上で、その車を修理工場へ持っていった、という。

家の駐車スペースをガソリンびたしにする方がよっぽど危険ではないか?と、話を聞きながら思ったものである。

そうやって、だましだましその満身創痍の車に乗り続けたが、あるとき、隣県に向かう高速道路を走行中、急に煙を吹いて、車がピクリとも動かなくなってしまった。そしてついに、その車とお別れすることになってしまったのである。

私にとっても、見慣れていていた車だっただけに、その車とのお別れは少し寂しかった。

それからほどなくして、Oさんは亡くなってしまった。私は、Oさんが乗っていたのと同じ車を町で見かけるたびに、ひょっとしてOさんが乗っているのではないか、などと思ったりした。いまではすっかりモデルチェンジしてしまって、見かけることはほとんどなくなった。

…ところで、あの車の名前は、何だったっけなあ?

数日前から、そのことばかり考えている。

当時は名前を覚えていたのだが、いまはその車を見かけることもほとんどなくなったので、忘れてしまった。メーカーも分からない。

ワゴンタイプの車だった、ということと、「ふてぶてしい感じの車だった」ということくらいしか、手がかりがない。

こういうときが、いちばん困る。

たしか「C」ではじまったような…。そこまでは何となく思い出した。「キャラバン」っていったかな?いや、ちょっと違うな…。

車の形や色は鮮明に覚えているのだが、後ろに書いてあったロゴが何だったのかが、どうしても思い出せない。

親しかった元同僚のこぶぎさんに聞こうと思ったが、こぶぎさんは携帯電話を持っていないし、やはり親しかった元同僚のKさんは、車に興味があるとも思えない。

(困ったなあ…。これを思い出せないことには、仕事が先に進まない…)

数日間、悶々とした日が続き、今日、職場の駐車場にとめてある車を見て、思い出した。

「カリブだ!」

職場の駐車場には、なぜかふだん見ない「カリブ」がとまっていたのだ!モデルチェンジしたあとの車ではあったが、ふてぶてしい感じは、相変わらずである。

これからも、「カリブ」を見るたびに、Oさんのことを思い出すだろう。

「カリブ」という名前を忘れないために、ここに記しておく。

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コメント

 お菓子の代わりにガソリンを撒いて来るとは、とんだ「ヘンゼルとグレーテル」ですな。乗り合わせた人の話だと、燃料計の針が動いていく様子がはっきり目に見えたそうですしね。
 ちなみに、河川敷にひっくり返された時も、あの時点で、走っているのが不思議なくらいのオンボロ車でしたからね。きっと不法投棄の廃車両と思われて、手荒に片付けられたんだと思います。

 そういえば壊れたストーブとか、広い荷台にいろんなガラクタを載せたまま、いつも走っていましたな。

投稿: こぶぎ | 2012年4月23日 (月) 13時27分

そうそう、刑事コロンボの車に匹敵するくらい、オンボロ車でしたね。不法投棄の廃車両と勘違いした気持ち、よくわかります。

そういえば後ろの広い荷台には、ビックリするくらいの数の「コウモリ傘」が積んでありました。さらに、カラフルなビーチパラソルもなぜか1つ積んでありました。ほんと、ガラクタばかりでしたな。

投稿: onigawaragonzou | 2012年4月23日 (月) 23時56分

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