二本の桜
4月26日(木)
今年の冬はとくに寒かったので、桜の開花も遅かったように思ったが、昨年もたしか、ちょうど同じ時期に満開になったのだった。
心なしか、昨年の桜の方が鮮やかである。
「悲しみや困難を乗り越えた先には希望がある」という、ナベサダさんの言葉を思い出した。
数年前、ある自治体から「桜について講演してください」という依頼があった。
それまでは、桜などにぜんぜん関心もなかったのだが、そのときに桜について調べて以来、春になると、なんとなく桜が気になる。
ソメイヨシノよりも、エドヒガンの方が好きである。私の住む町から車で1時間ほど行くと、エドヒガンの古木をいくつも見ることができるのだが、最近は時間がとれず、職場の桜の木を眺めるのがせいぜいである。
この時期になると思い出すのが、「二本の桜」(1991年放送)という、NHKの単発ドラマである。
岐阜の荘川桜をモチーフにしたドラマで、とても地味な内容だった。
銀行の支店長だったある男(江守徹)が、ある日突然、銀行を辞めて造園業をはじめる、と言い出す。家族は驚き、反対するが、結局、男は銀行を辞めてしまう。彼が造園業をはじめようと思ったのは、腕のいい植木職人で、今はすっかりうだつの上がらなくなった兄(長門裕之)に、もう一度、植木職人としての誇りを取り戻してもらいたいと思ったためであった。
…たしかこんな内容だったと思う。とにかく地味な内容で、しかもドラマに描かれている家族観は、今にして思えばやや古めかしいところもなくはないのだが、全体に丁寧な脚本と演出で、長く印象に残ったドラマだった。
ソフト化されていないので、いってみればまぼろしのドラマなのであるが、このドラマの脚本を書いた冨川元文は、このドラマで第10回の向田邦子賞を受賞している。
あのドラマを見て以来、一度、岐阜の荘川桜を見てみたい、と思っているのだが、はたしてそんな機会が訪れるだろうか。
岐阜の荘川桜といえば、水上勉の小説『櫻守』も印象深い。桜について調べなければ、出会えなかった小説である。
久しぶりに、読んでみようか。
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