ナベサダさん
4月24日(水)
もう少し、ナベサダさん(渡辺貞夫)について書く。
じつは、私が「ナベサダ」を熱心に聴いていたのは、80年代後半である。90年代以降になると、次第に遠ざかっていった。
だから私の中でのナベサダは、80年代で止まっていたのである。もっぱら聴いていたのも、80年代のものばかりである。
今回のライブでは、私が熱心に聴いていた80年代の曲は全くなく、そのほとんどが、最近のアルバムからのものであった。
過去の楽曲にこだわることなく、常にオリジナルを作り続け、発信し続けている。
80年代の楽曲にこだわり続けている私の方が、むしろ保守的で、退行的である。
ナベサダさんの若さの秘訣は、そこにあるのではないか、と思う。
若い頃に聴いたナベサダもいいが、本当は、今のナベサダをこそ、聴くべきなのだ。いまだにオリジナルを追求しつづけているナベサダを、である。
ライブが終わったあと、久しぶりに、ナベサダさんのCDを買い求めた。昨年(2011年)10月に発売された、「Come Today」という最新作である。
ナベサダさんは毎回、CDジャケットに、短いメッセージを寄せているが、このアルバムには、次のようなメッセージを寄せている。
「冬の土の奥に
芽生えのときを待つ生命があるように、
悲しみや困難を乗り越えた先には
希望があります。
『痛みの度合いは 喜びの深さを知るためにある』
これはチベットの格言ですが、
僕のそうした想いを、このアルバムに
感じてもらえればと願っています。」
おそらく、昨年3月の東日本大震災を念頭に置いたメッセージだろう、ということは、容易に想像できる。
しかしそこには、「がんばろう○○」といった狭小な表現は、微塵もみられない。
この世界で悲しみや困難に立ち向かっている、すべての人へのメッセージである。
チベットの格言を引用するあたりがナベサダさんらしい。困難を乗り越えるヒントが、世界中にあることを、私たちに教えてくれる。
音楽もまた、その一つかもしれない。
でも、音楽を通じて、強烈かつ特定のメッセージを発することを、ナベサダさんはたぶん、好まない。
それは、聞く側の感性にゆだねているからだと思う。聞く側の感性を、尊重しているのだ。
だからナベサダさんの音楽は、いつ、どんなときも軽やかである。
そしてその軽やかさは、さまざまな困難をつきぬけたあかつきに、ようやく手に入れることができるもののように思うのだ。
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