« 粗忽ぬりえ | トップページ | 引っ越しは私を破壊する! »

引っ越しは私を破壊するか

4月2日(月)

職場の建物の耐震工事のため、研究室を引っ越さなければならない。あけわたしの期限はよくわからないが、たぶん、5月の連休明けくらいだろうか。

そのときまでに、研究室を整理して、仮住まいの場所に運ばなければならない。

中学生のころ、定期試験が近づくと、友達とのあいだで決まって交わされた会話が、次のようなものだった。

「あ~、ぜんぜん試験の準備してねえや。おまえ、してる?」

「いや、ぜんぜんしてない。まったくしていないよ」

そう言いながら、裏で必死で試験の準備をしていたのが、中学生のころの私である。

「そろそろ引っ越しの準備をしないといけませんね。もうはじめてます?」

「いえ、まったくしていません」

そう言いながら、中学生のころのように、同僚を出し抜いて引っ越し準備を進めようと思ったが、今回ばかりは、とてもそんなことができない。なにしろ、研究室の中の本が、尋常な量ではないのだ。

各部局を含めて、この職場に教員が何人いるんだろう?数百人くらいか?とにかく、その中でいちばん本の量が多いのは、この私である。これは、断言できる。本の冊数ではない。本の重量である。

ま、あまり自慢できることではない。

今日から1週間、引っ越しの準備に専念することに決めたが、本をダンボールにつめてもつめても、あとからあとから泉のように本が湧いてくる。

どうなってんだ、まったく!

「先生お一人じゃ絶対に無理ですよ」と、引っ越し担当の職員さんにも言われるが、そう言われても、手伝ってくれる人など、どこにもいない。学生に手伝ってもらうのはしのびないし。なにしろ私は、友達が少ないのだ。

だいたい私は片づけにむいていない。むしろ、モノをため込むようにできているようである。

韓国の有名な随筆集に、ポプチョンという僧侶が書いた『無所有』という本がある。たぶん、韓国人なら誰でも読んだことのある本である。内容はその名の通り、すべての物欲を捨てて潔く生きることの大切さを説いている。

私はその『無所有』という本を、韓国語の原版、日本語翻訳版、そして韓国語小説版と、合計3冊も持っているのである。この時点ですでに私は、「無所有」という考えに反しているのだ。

先日、職場のゴミ置き場に、ゴミ箱が捨ててあった。

「廃棄」と書かれた紙が貼られているが、まだ、ぜんぜん使えるではないか。

しかも、これから引っ越しの準備ということになると、ゴミもたくさん出ることだし、ゴミ箱は絶対に必要だな。

…そう思った私は、そのゴミ箱を拾って、自分の研究室に持っていったのであった。自分の研究室に同じ形のゴミ箱があるにもかかわらず、である。これで、ゴミ箱は2つになってしまった。

かくして、研究室にはどんどんモノがたまっていく。

こんな調子で、はたして引っ越しの準備は進むのか?

心が破壊されずに、引っ越しの準備を続けられるだろうか?

|

« 粗忽ぬりえ | トップページ | 引っ越しは私を破壊する! »

職場の出来事」カテゴリの記事

コメント

 こちらの職場に来た時に12トントラックで乗り付けてたんですから、この何年かで単純に2倍に増えたとしても、鬼瓦本の総重量は24トン。

 つまり、小ぶりのアフリカ象で換算すると、約5頭分の重さを段ボールに小分けして運ぼうというのだから、一人で無理をしてはいけません。しかも、仮住まいということは再び「出戻り引っ越し」も必要なはず。

 出戻り引っ越しを避けるために、例の大雪で倒れた自宅の物置に詰め込んでしまえば、ゾウが上に乗るどころか5頭も中に入っているんですから、二度と横転することはないでしょうが、それでも人手はかかります。なんとか人をタダで使う方法はないかと考えついたのが「棚売り」です。

 本屋で「ここからここまで」と指さして本を買う「棚買い」は蔵書家の夢ですが(どうも超お金持ち大学に勤める先輩は、これを実際にやったらしい)、反対に古本屋を呼び出して「ここからここまで」と売るのが「棚売り」。たぶん棚買いと似た幻惑感が味わえるほか、向こうで勝手に持って行ってくれる上に、二束三文ながら小金も貯まります。

 でも、これでは自分の読みたい時にいちいち古本屋に買いに行かなくてはいけません。お金がかからない方法ということで、大学図書館に生前寄贈するというのはどうでしょう。これも向こうから取りに来てくれますし、選書基準に適わない本は、持ち主の思い入れとは一切無縁に、ばっさばっさと捨ててくれます。

 実は去年、なくなった先生の研究室整理を学科でやれと言われて(泣)、はたきと雑巾を持って、大量の蔵書と格闘したのですが、やはり、こういうものは「辞世の句作り」と同じく、元気なうちに自分で始末しておいた方がいいのです。図書館内に「鬼瓦文庫」なんて棚を作ってもらえれば、読みたくなって自分で借り出す時にも探しやすいでしょう。

 ただ、これは寄付行為になりますので、大学経理上の理由から、全ての本の値段を打ち込んだ寄贈図書リストを作って、寄付総額がいくらになるか金銭換算しないと、受け取ってもらえませんからね。がんばってゾウ5頭分の値段を打ち込んでくださいね。

投稿: こぶぎ | 2012年4月 4日 (水) 07時19分

アフリカ象ならば自分で歩いて移動してくれるんですけどねえ。本だとそうはいかない。

うちの職場の図書館は、手狭だという理由でひきとってくれるはずもないし、留学でお世話になった韓国の大学に寄贈しようか、と思ったけれど、送料がバカにならないし、いまから韓国語で手続きする時間がない。やるとしたらリタイアした後ですな。

あと考えているのは、廃校になった田舎の分校を買い取るか借りるかして、そこに蔵書を持っていく、ということです。で、私が死んだら、廃校ごとテキトーに処分してもらえばいい。

いまはそんなことばかり考えています。

投稿: onigawaragonzou | 2012年4月 4日 (水) 20時09分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 粗忽ぬりえ | トップページ | 引っ越しは私を破壊する! »