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愛があれば、字幕なんて

4月20日(金)

先日(16日)、前の職場の同僚のこぶぎさんとKさんが、突然、私の職場に「引っ越しの手伝い」と称してやってきて、そのあと「ガスト会議」をやったことは、すでに書いた

こぶぎさんとKさんは、気の合う友人どうしなのだが、趣味、という点でいうと、まったく合わない。

こぶぎさんは、韓流ドラマやK-Popアイドルが好きで、その話をすると止まらなくなるのだが、Kさんは、その方面に関する知識も興味もない。

他方、Kさんの方は、古典芸能とか、むかしのドラマの劇伴作曲家とか、そういうものに興味があるのだが、こぶぎさんは、その方面に関する興味がない。

これほど趣味の合わない2人が、ふだん、どんな会話をしているんだろう?

で、私は、というと、どちらにも、そこそこの知識がある。

「そこそこ」と言ったのは、2人があまりにもマニアックで、興味のない人にとってみたら、まったくワカラナイ話なのだが、私は、2人の出す話題に、「そこそこ」ついていけるのである。

こぶぎさんが、まくしたてるように、K-popの話をしはじめる。で、おもむろに私が、

「『少女時代』のメンバーの名前を、少し覚えましたよ」と言う。

「へえ」

「元リーダーのテヨン、マンネ(末っ子)のソヒョン、『永遠のセンター』のユナ、日本語が達者なスヨン。この4人なら、顔と名前が一致します」

「すごいねえ。じゃあ、あと残るは5人だね」

とか、

こぶぎ「最近、キム・グラの司会ぶりも毒が薄まったね」

私「そうですか?『不朽の名曲2』の司会は、相変わらず毒があって面白いと思いますけど」

みたいな会話。

韓国の毒舌司会者であるキム・グラについて話をしている人なんて、日本中のファミレスを探しても、ここだけなんじゃないか。

しばらくそんな話をしていると、Kさんが退屈してくる。私が話題を変える。

「この前、久しぶりに映画『悪魔が来りて笛を吹く』を見たんですよ。西田敏行が金田一耕助をやっているやつです」

「へえ」

「映画の内容自体は今ひとつだったんですが、音楽がよかったんです。山本邦山という人が劇伴を担当していましてね」

「山本邦山!」kさんがその言葉に反応した。

「山本邦山といったら、有名な尺八演奏家ではないですか!」

「そうなんですか?」恥ずかしながら、私は知らなかった。

「え?え?どうして、山本邦山が『悪魔が来りて笛を吹く』の劇伴を担当しているんです?」

「わかりませんよ。でも、たしかに山本邦山でしたよ」

「…あ、そうか…。山本邦山は、尺八だけではなくて、ジャズにも造詣が深いから、ありうるかもしれない…」Kさんは、ひとりで納得した。

そこから、ひとしきり、Kさんの独壇場。私もできる限り、その話についていく。

こんどはこぶぎさんが、キョトン、とした感じになる。

…とまあこんな感じで、気がつくと夜11時半になってしまうのである。

さて、この日のおしゃべりで、こぶぎさんは名言を残した。

「こぶぎさん、字幕もなくて、よく韓国のバラエティ番組とかドラマとかを見られますね」

「愛があれば、字幕なんていらないんだよ」

なるほど、愛があれば字幕なんて、か。

翌日。

この夏から韓国の大学に留学する予定のOさんが、研究室にやってきた。

ひとしきり、韓国語の勉強の話や、K-Popアイドルの話になる。

Oさんは、シャイニーという男性アイドルグループの大ファンらしい。

「先生も、ぜひ聞いてみてください。絶対いいですから」

「そうするよ」

「いま、アイドルが出ているバラエティ番組を字幕なしで見ながら、韓国語の勉強をしているんです」

「それはいいことだよ」と私。

「どういうことです?」

「好きな人が話していたら、一生懸命その人の言っていることを聞こうと思うでしょう」

「ええ」

「つまり、愛があれば、字幕なんていらないんです」私はこぶぎさんの名言をいただいた。

「なるほど」

Oさんは、我が意を得たり、という顔をした。

「ところで先生」

「何です?」

「実は、留学先の大学に出す推薦書を書いていただきたいんです」

「いいですよ」

「これです」といって出した紙には、英語しか書かれていない。

「なんだいこれは?」

「留学先の大学が用意した、推薦書の様式です」

「英語しか書いてないじゃないの」

「ええ、ですから、英語で推薦書を書いてほしいそうです」

「ええぇぇぇ???」恥ずかしながら、私は英語がまったくダメなのだ。

「もし英語でなければ、韓国語でもいいそうです」

英語よりはマシだが、それもなあ。

もういちど推薦書の様式をじっくりと見た。

何度見ても、英語しか書かれていない。

うーむ。愛がないなあ、愛が。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

 Kさんとの共通話題には、演劇ネタと落語ネタもありますからね。ちなみに今日の晩飯時のネタは、プロレスと演劇を融合して、「プロレスの向こう側」を目指した「マッスル坂井」についてでした。

「泣いて馬謖を斬る 再び」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1051520

 「泣いて馬謖を斬る」とは、死体が3倍くらい重く感じることを利用すべく、パートナーの「ジャイアント馬謖」(京劇の覆面をしている)を中国人レスラーの趙雲子龍が涙ながらに斬り、対戦相手を押さえ込ませるプロレス技です。

 演者のうち、カーリーヘアのメガネの人は、「総合演出」の鶴見亜門(本当は劇団の役者さん。ちなみにスポーツに「総合演出」がいちゃいけません)。鈴々舎馬風似の人がマッスル坂井で、今は引退して家業の鉄工所を継いでいるそうです。

 小演劇と学生プロレスと映画研究会のテイストが入り混じって、バカバカしくていい感じでしょう? 客の反応も的確で素晴らしいし。このシーンには出ませんが、解説・実況のお2人も冴えていますよ。

投稿: こぶぎ | 2012年4月23日 (月) 23時03分

バカバカしすぎる!(笑)そういえばむかし談志師匠が、どこかの大学の学園祭に行ったときに、「落語研究会は面白くもなんともなかったが、プロレス研究会には笑った」と言っていたことを思い出しました。

投稿: onigawaragonzou | 2012年4月24日 (火) 00時15分

 連休中に、ドラマ「屋根裏部屋の皇太子」の同時通訳をツイッターで実況されている奇特な方の存在を知りました。

 そこで本日のドラマ鑑賞では、パソコンにつなげてある2台のモニターのうち、メインモニターにはテレビ画面、サブモニターにはツイッターのタイムラインを4本展開して、刻々と書き込まれる画面キャプチャの写真、同時通訳実況、普通の感想などを横目で追う、まるで株の「デイ・トレーダー」みたいな視聴を始めたところ、分かりやすいったら、ありゃしない。

 ツイッターといえば、これまではKARAのメンバー同士の愛犬自慢といったスダ話くらいしか読んでいなかったのに、こんな使い方もできるのね。

 そこで謹んで前言を訂正させていただきます。

愛があれば字幕なんていらないが、「訳ツイ(通訳ツイートのことらしい)」は必要だと。

投稿: ツイートこぶぎ | 2012年5月10日 (木) 03時36分

愛があるからこそ「訳ツイ」などということができるんでしょうね。
で、それを見つけて、「デイ・トレーダー」のように視聴するこぶぎさんもこぶぎさんだ。
訳ツイをしている人もきっと、「訳ツイ冥利に尽きる」と思っていることでしょうな。

投稿: onigawaragonzou | 2012年5月10日 (木) 23時13分

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