つかの間の韓国気分
午後、妻が都内で所用があるというので、その間、私は新宿で「ワンドゥギ」という韓国映画を見た。
夕方、妻と合流し、久しぶりに新大久保で韓国料理を食べようということになった。
久しぶりに行ってみると、新大久保は若者たち、とくに若い女性たちで、ごった返しているではないか!
こんなにたくさんの韓国料理店があったっけ?というくらい、お店ができていて、しかもそのほとんどが、若い女性客であふれかえっている。ずいぶん、様変わりしたものだ。
界隈をひとまわりして、路地に入ったところの、小さな焼肉店に入った。
「ご予約の方ですか?」と、店の人が聞いたので、
「いいえ」と答えると、
「申し訳ございません。8時以降でないと席が空きません」という。
仕方がないので、携帯電話の番号を教えて、席が空いたら電話をください、といって、ふたたび、新大久保界隈を歩くことにした。
「コリアプラザ」で、CDやDVD、書籍などを見て、そのあと、「韓国市場」というスーパーに行った。
ここでは、韓国のたいていの食材が揃っている。
「なあんだ。韓国に行かなくても、ここで食材が揃うんだったら、韓国に行ったふりをして、ここでお土産を買ってもわからないよな」
妻は私の言葉に相変わらず呆れた様子である。
ここで、チャプチェ(韓国風はるさめ炒め)の材料である、韓国はるさめ(さつまいもの澱粉でつくったはるさめ)を買った。
韓国に留学していたとき、大学近くの、学生が集まるような大衆食堂で、「チャプチェ定食」をよく食べていた。たぶん韓国人なら、チャプチェは「家庭の味」の代表ともいえる料理ではないだろうか。
最近、手軽に作れる「チャプチェの素」、というのが、日本のどこのスーパーでも売っている。私はこの「チャプチェの素」をよく買って作っているのだが、妻は、これが口に合わないらしい。たしかに、韓国で食べるチャプチェとは、だいぶ味付けが違っている。
そこで、「チャプチェの素」に頼らず、最初からチャプチェを作ろう、ということになったのである。
韓国市場で買い物すませると、すでに夜8時である。そろそろかなと思い、さっきの食堂に向かっていると、携帯電話が鳴り、「席が空きました」と連絡が来た。
さっそく店に入り、サムギョプサル(豚の三段バラ肉の焼肉)、マッコリ、焼酎などを注文する。
私がその店を気に入ったのは、韓国の大衆酒場とか、小さな焼肉屋によくある、「ステンレスの円テーブル」が置いてあったからである。
韓国の映画やドラマを見ていると、上司と衝突した主人公が、ひとりで小さな大衆酒場みたいなところに行き、焼酎のビンを何本も空にしながら、ヤケ酒をあおっているシーンがあるでしょう。で、そこに同僚とか友人が合流して、日ごろの憂さを晴らしたりして。そして最終的には泥酔して、同僚や友人に背負われて帰ったりして。
そのときに主人公たちが座っているのが、ステンレス製の円テーブルなのである。
うーむ。どうもわかりにくいな。
ともかく、そのテーブルを見ると、韓国の大衆酒場を思い出すのである。
つい、ここは韓国か、と錯覚してしまい、マッコリに加え、焼酎2本をあけてしまう。最後は、冷麺でしめた。
会計は、韓国ではおよそ考えられないくらい高い値段だったが、まあ、しばし韓国の気分を味わわせてもらったのだから、仕方がない。
おかげで2人とも泥酔し、帰りは家まで千鳥足だった。
翌日午後。
昨日買った、韓国はるさめを使って、2人でチャプチェ作りに挑戦する。
「チャプチェの素」を使うと、あっという間に完成してしまうのだが、最初からすべて作ろうとすると、これが、けっこう手間がかかる。
なるほど、だからこれが「家庭の味」なんだな。
1時間ほどかけて、チャプチェが完成した。
味見をしてみると、市販の「チャプチェの素」で作ったものよりも、はるかに美味しい。そうそう、韓国で食べたチャプチェは、こんな感じだったことを思い出した。
せっかくなので、作ったチャプチェを弁当にして、帰りの新幹線の中の夕食にすることにした。
冷めてもまた、美味しい。
というわけで、大型連休前半は、とくに何をしたというわけでもなかったが、つかの間の韓国気分を味わったのであった。
| 固定リンク
« 今こそ読め、『櫻守』 | トップページ | 老木の桜 »
コメント