テレビに出た!らしい・老父篇
しばしば書いているが、私の父は無趣味で、暇をもてあますことに関しては右に出る者がいない。
仕事を辞めてかれこれ10年以上もたつから、もう10年以上も暇をもてあましていることになる。
最近は、意味もなく車を運転して、あちこちの道の駅に行ったりしているらしい。
先日の大型連休、久しぶりに実家に立ち寄ったとき、父が言った。
「この前、道の駅に行ったらさあ。石ちゃんが来ていたんで、握手してもらったよ」
「石ちゃん?」
「ほら、『まいうー』の人」
「ああ、ホンジャマカの石塚さんね」
「撮影しているなんて知らなくってさあ。近づいていったら握手してくれたんだよ」
「へえ」
「そしたら、それがテレビに映っちゃったみたいで」
「え?」
なんと、父はテレビに出たらしい。
「ほら、土曜の昼にやっているやつ…」
「ああ、『メレンゲのなんとか』って番組?」
「そうそう」
首都圏ローカルの長寿番組である。たしか、若い女性向けの番組だったと記憶する。
「その番組を、たまたまキョウコが見ていて、『おじさん、テレビに出てたでしょう』と、電話をくれたんだ」
「キョウコ」というのは、私のいとこである。たしかに、キョウコちゃんくらいの世代がよく見ている番組である。
「それにしても、キョウコちゃんはよく気がついたねえ。1年に1度、会うか会わないかっていうていどなのに。しかも、映ったのはほんの一瞬でしょう」
ほんとうに不思議である。その番組のメインは、「石ちゃん」が道の駅で美味しいものを食べまくる、ということであり、父と握手している場面などは、ほんの一瞬、映ったにすぎないはずなのだ。にもかかわらず、キョウコちゃんは、父の姿を見逃さなかったのである。
そういえば、映画「男はつらいよ」シリーズの中に、よくこんなシーンがある。
旅先の寅次郎が、なにかのひょうしに、チラッとテレビに映る。
たまたま、柴又の「とらや」でテレビを見ていた家族たちが、一瞬映った寅次郎の姿をめざとく見つけ、そこで寅次郎の安否を確認するのである。
映画を見ていたときは、「そんな偶然なんて、あるかよ~」と思っていたのだが…、
あるんだね。そういうことが。
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