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坂田明だった!

表題は、若いころに読んだ、原田宗典のエッセイ集『十七歳だった!』のパロディだが、たぶん誰もわからないだろうなあ。

最近、世話人代表のKさんの登場頻度が異常に高くて、書いてるこっちもしゃくにさわるのだが、週に2回ほど顔を合わせているのだから、仕方がない。

先々週の金曜日、R市に行ったときのことである

世話人代表のKさんの運転する車の中でかかっていた音楽が、妙に印象に残った。

映画「ひまわり」のテーマ曲とか、「見上げてごらん夜の星を」とか、「遠くへ行きたい」とかといった印象的なメロディを、アルトサックスが奏でているCDである。

私が最近アルトサックスをはじめたことを知ったKさんが、私をからかうつもりでかけているのかな、と、そのときは思い、ここでうっかり触れてしまうと、Kさんの思うつぼになってしまう気がして、何も聞かなかった。

しかし、その後も、あのアルトサックスの奏でる音楽がどうしても気になって仕方がない。

先週の木曜日、丘の上の作業場での作業が終わったあと、kさんと卒業生のT君と3人で「ガスト会議」をしたとき、思い切って聞いてみた。

「あのう、聞こうか聞くまいか迷っていたんですが」

「何です?」

「R市に行く道中で、アルトサックスのCDをかけていたでしょう。『ひまわり』とか、『遠くへ行きたい』とか」

「ええ」

「あのCDは、いったい何です?」

「ああ、あれですか?あれは坂田明です」

「坂田明ですか?!!あの坂田明?」

「そうです。ミジンコを研究している」

私は驚いた。あの、哀愁ただよう、魂のこもったアルトサックスのメロディが、坂田明によるものだったとは!

私が驚いたのも無理はない。坂田明といえば、フリージャズ専門のアルトサックス奏者である。一時期、タモリと一緒にテレビに出たりして(というか、坂田明は、ハナモゲラ語をあやつり、タモリを見出した人物である)、見た目は、何というか、いいかげんそうなオッサンである。

私は学生時代、いちど、新宿のライブハウスに坂田明のライブを聞きに行ったことがある。フリージャズ奏者なので、とにかくメチャクチャを吹きまくるのが持ち味だった。

だから、坂田明が、メロディを「ちゃんと」演奏していることに、驚いたのである。

「意外ですねえ。坂田明がちゃんとした曲を吹くなんて」

「でしょう」

「とくに最初の『ひまわり』はよかった」

「アルバムのタイトルも『ひまわり』ですよ。チェルノブイリやイラクでは、白血病の子供が今もたくさんいるんですが、このCDの売り上げは、子供たちのための医薬品や医療機器を購入することにあてられるそうです」

その話もまた意外だった。どこからどう見ても、いいかげんなオッサンにしか見えない坂田明とは、まったく結びつかないイメージである。およそ、そんな「運動」とは無縁のオッサンのように思えたのである。

「だから親しみやすいメロディの曲を集めたんですね」

「そうです」

映画「ひまわり」のテーマ曲もよかったが、もう一曲、とても印象に残った曲があった。

「あれは、『死んだ男の残したものは』という曲ですよ」とKさん。「谷川俊太郎の詩に、現代音楽の武満徹が曲を付けたものです」

恥ずかしながらはじめて聞いたが、とても印象的な曲だった。武満徹って、本当にすごい作曲家なんだなあと、あらためて思った。

坂田明の話でひとしきりKさんと盛り上がるが、横で聞いていた20代のT君は、ポカーンとしていた。

坂田明って、いま、どのくらいの知名度なんだろう?

51wtr0fz6tl__ss500_ それはともかく、私はKさんのおかげで坂田明のことを久々に思い出し、さっそくアルバム『ひまわり』を買ってみた。

CDのジャケットを見ると、“がんばらない”レーベルとある。それがまた粋である。

あらためてじっくり聞くが、どれもすばらしい。

学生のころ聞いたフリージャズのイメージとは、まったく違う。だが、音色はまったく同じだった。

以下、収録曲をあげる。

1 ひまわり

2 見上げてごらん夜の星を

3 ウェディング・マーチ

4 遠くへ行きたい

5 死んだ男の残したものは

6 早春賦

7 水母

8 G線上のアリア

CDのライナーノーツを見ると、このCDを企画したのは、長野県の医師の鎌田實さんである。鎌田さんが文章を寄せていて、「インターネットで宣伝して欲しい」と書いてあったので、宣伝することにした。

こういうCDに出会うと、アルトサックスが好きでよかったなあ、と、ちょっと誇らしく思う。

学生時代、アルトサックス奏者のライブに行くのが好きだった。

渡辺貞夫、MALTA、坂田明、スクエアの伊東たけし、本多俊之…。

どの奏者も、個性が全然違う。でもいずれも好きだった。

あらためて気づく。

私は音楽よりも、アルトサックスを奏でる人間の個性が好きだったのではないだろうか、と。

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