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韓流は人生を豊かにする

妻に言わせると、自分が韓流のドラマや映画を見たりしていることを、あまり他人には言えないものらしい。

妻は、ビックリするくらいの数の映画やドラマを見ているのだが、それを、なかなか他人に言うことができないという。

理由は、周りが「どん引き」するからである。

だから自分の近くに韓流ファンがいても、なかなか気づかないものである。

いつもクリーニング作業に来る社会人のAさんは、好青年といった感じの若者である。

クリーニング作業をしながらよもやま話をしていると、映画の話になった。

私が韓国映画をよく見る、と言ったら、Aさんが言った。

「ちょっと前に、『ポエトリー』という映画を公開していましたね」

「『ポエトリー』?」

「『シークレットサンシャイン』を撮った監督の最新作ですよ」

私は驚いた。「シークレットサンシャイン」は、韓国の原題を「ミリャン」といい、私の大好きな映画だからである。昨年の9月には、わざわざロケ地のミリャン(密陽)までおとずれたほどである

「『シークレットサンシャイン』、見たんですか?」私はAさんに思わず聞いた。

「ええ」

「あの映画、いいでしょう」

「いいですねえ。なんというか、喜怒哀楽のどれにも属さない感じの映画ですよねえ」

なるほど、上手い表現である。私も同感だった。

ひとしきり、韓国映画の話になる。

「『殺人の追憶』は名作ですねえ」

「ええ、最高です」

こういう話をするときは、「同士を得た」という感じになるから、不思議である。

さて、最近職場に1人、韓流ファンがいることがわかった。

こう言っては失礼かもしれないが、見た目はごくふつうの主婦、といった感じの方である。決して派手ではなく、むしろふだんは地道に仕事をされている。

あるとき事務室で何とはなしにお話をしていると、その方が韓流のドラマや映画をかなり見ていることが分かった。

ふだん、よけいな話はいっさいしないタイプの方なのだが、韓流の映画やドラマに出てくる俳優の名前などが、どんどん出てくる。

たぶん妻と同様で、まわりに話したところで理解されないと思い、ふだんはご自分から話すことはないのだろう。

私も、職場ではなるべくそういう話題を出さないことにしているのだが、あるとき、印刷をしようと印刷室に入ると、その方がいたので、思いきって聞いてみた。

「韓国の俳優では誰のファンなんですか?」

するとその方は答えた。

「実は、○○のファンなんです」その方は、あるアイドル歌手の名前をあげた。「その歌手があるドラマで主演しているのを見てからファンになったんです。それ以来、コンサートを見に、韓国はもちろん、ラスベガスとか、タイとかにも追っかけていきました」

「ラスベガス!?タイ!?」

私は驚いた。ふだんは、およそそんなアクティブな感じにはみえなかったからである。

「おかげで、ラスベガスとかタイとか、今までだったら絶対に行かなかっただろうな、というところにも行けたんです。私の世界が広がったんです」

「とてもすばらしいです!」私は感動した。「絶対に、ファンを続けるべきです」

数年前に韓国で放映されたドラマに、「主婦キム・グァンジャの第3活動」というのがあった。主人公の主婦を演じたのは、ドラマ「チャングムの誓い」で、ハンサングンを演じたヤン・ミギョンである。

平凡な主婦、キム・グァンジャが、あるとき、タクシーの中で流れていたアイドルの歌を聴き、それをきっかけに、そのアイドルにのめり込む。

それまで全く関心のなかったパソコンを勉強しはじめ、ファンサイトにアクセスして、ファンとチャットをはじめたりして、どんどんとパソコンの技術を習得していく。やがてファンの中でも、カリスマ的な存在になっていくのである。

私はその方の話を聞いて、このドラマのことを思い出したのである。

韓流の素晴らしさとは何か?

それは、自分の世界が広がることである。人生の幅が広がることである。

いや、きっかけは韓流でなくともよい。

自分の世界を広げたり、人生の幅を広げたりすることが、素晴らしいのだ。

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コメント

 職場の保護者会の日。学生のお父さんお母さんとの会食で、がらにもなく背広を着て、レストランの丸テーブルに一緒に座らされたものの、隣のお父さんとの共通話題がない。

 世代はほぼ同じだと思うが、こちらは子育て論も教育信条もないし、向こうも大学の先生なんて難しい話しかしないと思っているのか、「どちらにお住まいですか」から始まって、(話が広がるはずもない)自分の研究分野とか、しまいには近所のおいしいラーメン店に行ったの行かないのと、たわいない会話が続く。

 しかも車で来られているので、ウーロン茶でしらふ。酔いの力にも頼れず、トークの手探り状態は続く。

 会話も料理も尽きたので、目の前に座っている「金八もどき先生」の熱い教育論を拝聴する。保護者の皆さんもうんうんと頷いて、こういう席のためには熱血教育論の一つでも用意すべきと痛感した。

 いよいよ会もお開き。お母さんに韓流ドラマの話を振った返す刀で、隣のお父さんに「韓国の歌も好きで、たとえば少女時代とかよく聞くんですよ」と、思わずカミングアウトしたところ、なんと、そのお父さんも少女時代ファンだったことが判明。これはご同輩、お目が高い。

 最初からソウォン(少女時代のファンクラブ名、広義では少女時代のファンを指す)と分かっていたら、「金八もどき先生」ほとの情熱で語り合えたかもしれない。まわりはきっと引くだろうが。

投稿: こぶぎ | 2012年7月12日 (木) 21時49分

きっとまわりは引くでしょうな。ガストで我々が会話しているときのように。

投稿: onigawaragonzou | 2012年7月13日 (金) 00時17分

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