そうめんか、冷や麦か
7月8日(日)
義妹夫婦が、新築のマンションに引っ越した、というので、遊びに行くことにする。目的は、6ヵ月になる姪に会いに行くためである。
姪は、会うといつも私の顔をじっと見つめる。おそらく私のことが大好きなのだろう。姪は私に会いたがっているに違いない。
「お昼はどうする?向こう(義妹の家)で一緒に食べようと思うんだけど」と妻。
「そうめんが食べたい」と私。
「そうめん?」
「七夕といえばそうめんだろう。昔からそう決まっているんだ。昨日食べられなかったからね」
妻が妹に電話をする。
「あのさあ。お昼、そうめんがいいっていうんだけど、そっちにある?」
電話のやりとりから察するに、どうやらないらしい。
「冷や麦ならあるって」妻が言う。
「ダメだよ、そうめんでないと。七夕といったらそうめんなんだ」
「ふーん」
ということで、義妹の家の近くにあるスーパーでそうめんを買ってから、いよいよ新居訪問である。
300グラムのそうめんを3袋、買う。
「どのくらい茹でたらいいかなあ?」と妻。
「ぜんぶ茹でたらいいじゃん」
「え?900グラムも?だって、1人分は100グラムって書いてあるよ」
ここにいるのは、私と妻と妻の母、そして義妹夫婦の5人である。つまり500グラムあれば十分なはずなのだ。
だが私は主張した。
「そうめん100グラムなんて、病気の小鳥が食うくらいの量だよ。5人もいれば900グラムなんてすぐなくなるよ」
妻が呆れた顔をして、提案する。
「じゃあ、とりあえず2袋(600グラム)茹でて、もし足りなかったら、もう一袋茹でるということにしたら?」
仕方なく同意した。
さて、実際に茹で上がり、そうめんを食べてみると、5人で600グラムは、食べても食べてもなかなか減らない。
それもそのはずである。そうめんのほかに、家から作って持ってきたおにぎりを3つも食べたのだ。たちまちお腹いっぱいになった。
「どうする?もうひと袋茹でる?」
「いえ、けっこうです」
私以外の4人は、ほら見ろ、という顔をした。
食べ終わった私が、ポツリと言った。
「そうめんじゃなくて、やっぱり冷や麦の方がよかったな…」
私以外の4人が、どないやねん!という顔をした。
「冷や麦だったら、うちにあったのに」さすがの義妹も呆れ顔である。
そうめんとおにぎりを腹一杯食べたら、急に眠くなった。
「少し横になったらどうです?」眠そうな顔を見かねたのか、義妹が言う。
「じゃあそうさせてもらうわ」
リビングに寝ている6ヵ月の姪の横で、姪と同じ姿勢で横になった。
すると、5分もたたないうちに大きなイビキをかいたらしい。
新築のマンションで、やれそうめんがいいだの冷や麦がいいだの駄々をこねたあげく、腹一杯食って、みんなの見ている前で大イビキをかいて昼寝をする。
なんとまあ、傍若無人な「長女の婿」だろう。
しばらくして目覚めると、姪はすでに起きていて、妻の母にだっこされていた。
(私のイビキで起きたのかな…)
私はいたたまれなくなり、「新幹線の時間があるので…」といってマンションを出たのであった。
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