送別会ではなく、壮行会
7月29日(日)
若者は、ときに残酷である。
4年生のCさんから、この8月から韓国と台湾に1年間留学するOさんとSさんの送別会をしたいので、ついては私にも参加してほしい、と頼まれた。
「送別会ではなくて、壮行会だよ。送別会は、もう会えない人を送るときの会のことだ」
「へえ、そうなんですか」
先生の予定に合わせますから、と言われ、今日の日を指定したところ、集まったのは5人。
いつも不思議に思うのだが、若者たちに混じって私なんかが居たところで、面白くも何ともないと思うんだが。若者同士で気兼ねなくやればいいのに。
午後6時半に歓送会が始まった。
Oさんが言う。
「先生にお会いしたら、絶対に言わなきゃ、て思ってたことがあったんです」
「何です?」
「汗には、かいて痩せる汗と、かいても痩せない汗があるそうなんです」
「ほう」
「先生は、玉のような汗をかくでしょう」
「うん」
「それは、かいても痩せない汗なんです」
「……」
私がふだん大汗をかいているにもかかわらず、ちっとも痩せずに太ったままなのは、かいても痩せない汗をかいているから、ということらしい。
ということは、若者たちの目には、私が「汗をかいてもちっとも痩せない太ったオジサン」と映っているということである。
「つまり、新陳代謝が悪いんですよ」Cさんがたたみかけるように言う。
「で、痩せる汗をかくには、どうしたらいいの?」
「さあ、それはわかりません」
なんだよ!結局、たんに私のことを「汗をかいてもちっとも痩せない太ったオジサン」と指摘しただけだったのか!
話題は芸能人の話に移る。このあたりから、私はそっちのけである。
「芸能人なんて、みんなイジっている(整形している)のよ。顔の皺だって人工的に伸ばしたりしているんだから」とOさん。
「でもFさんはちがうでしょう」とSさん。「F」とは、私と同い年の、二枚目俳優のことである。
「Fだって、イジっているわよ。だって、あの年であんなに若いなんて、絶対おかしいじゃない。本当は顔だって皺だらけなんだから」Oさんが主張する。
おいおい!仮にも俳優Fは、私と同い年なんだぞ!
さらに話は続く。
「あ~。カッコいいオジサンに憧れるよなあ」とO君。
「ほんと、カッコいいオジサンて、いいよねえ」3人の女子が同意する。
「オジサンっていったって、カッコよくなくちゃダメだよねえ」
「そうよ。『カッコいいオジサン』っていうのがいいのよ」
おい!横に俺がいるんだぞ!話題に気を遣えよ!私はだんだん居たたまれなくなった。
「ささ、明日も朝から仕事があるんでね」と私。一刻も早くこの場から立ち去りたくなった。
気がつくと午前0時をまわっていた。
いったい私は何のために呼ばれたのか?
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コメント
A 何で後日談を書かないんですかね。
B 命にかかわる話なのにねえ。
A のんきに韓国なんぞ行っていないで、真剣に考えた方がいいですよ、「かいて良い汗、悪い汗」問題。
B そうですよ。「玉のような汗」というのが問題なんですよね。
A 有効な汗腺が少ないから、一つの汗腺から玉になるほどたくさん汗が出てしまう。その結果、体によい成分も汗と一緒に出ちゃうし、臭いの元にもなるんでしたね。
B だから、良い汗をかくためには、「なまけている汗腺」を鍛え直すことが必要なわけです。
A そこで我々は、「汗腺トレーニング」を実行すべく、はるばる9時間もかけて、先週末から、ここS地方に来ています。
B さすが南国。戸外に出ただけで蒸し風呂のような暑さだ。容赦ない湿気で、Tシャツはすぐに汗ぐっしょりです。
A しかもこのところの雨続きで、シューマイみたいに蒸しあがっちゃっています。列車の車窓も曇り、リュックの中身もしっとりしてますし。
B まさに「汗腺トレーニング」には最適の土地柄と言えるでしょう。
A しかし荷物が重いですなあ。今回は帰省ラッシュの道路渋滞を避けるために鉄道旅にしたので、リュックを背負って「裸の大将」スタイルで旅している訳なんですが、これじゃまるでゴルゴダの丘に登るキリストみたいな重荷っぷりだ。
B 実は、鉄道旅で移動時間がやたら長いと思ったので、リュック一杯に本を積み込んで来たんですよ。たぶん20キロ近くの荷物になってますから、これを背負って歩くだけで、相当の負荷トレーニングになるわけです。
A この肩に食い込むようなつらさも、「汗腺トレーニング」の一部というわけですね。
B その通り。一昨日はT市へ行ったのですが、K市やT市も大きなお祭りの最中で泊まれるホテルなどありません。従って、隣のU県S市に宿を取って特急で通っていたわけですが、長時間、重いリュックを背負っての移動も、実は負荷トレーニングの一環だったわけです。
A もしかして、K市やT市のお祭りに通ったのも、ただの観光ではなくて「汗腺トレーニング」だったわけですか。
B もちろんです。トレーニング効果を高めるためのお祭り参加ですから、リュックを背負ったまま参戦するプログラムとなっております。
A K市のお祭りは、スピーカーを満載した地方(じがた)車の爆音に圧倒されました。すごい人出で、それだけで汗だくでした。
B T市の祭りなんか、リュック背負ったまま、「にわか連」として演舞場へ踊り込んじゃいましたしね。この祭りの踊りは、見た目はゆったりしているんですけど、実はすごい運動量で、もう死にそうなほど汗だくになりました。
A こちらに来て5日くらいですが、かなり「汗腺トレーニング」の成果が出たんじゃないですか。
B ほら(ぺろり)、手足の先まで、まるで犬の鼻先のように、じっとりしてるでしょう。もう汗腺総動員体制、なまけてる汗腺なんか皆無ですよ。
A でもねえ。
B なんです?
A 疲労困憊でへろへろなんですけど。座ったり歩いたりしている時はいいんですが、立ち上がる時に脚に力が入らなくてよろけるのです。頭痛も吐き気もしますし、寝付きも悪い。毎朝、出るのはため息ばかりなんですが。
B 患者さん、それは夏バテですね。では、ユンケル黄帝液を点滴しますから、こちらへどうぞ(グイ)。
A はい、よろしくお願いしますって(振り払い)、そんなもの点滴したら元気な人やて、死んでしまうじゃきに。そういうおまんやって、目の下にひどいクマができちょるき、熱中症のきらいもあると、ちゃうか?
B 確かに汗腺は鍛えられたと思うんですけど、それ以上に、ひどい夏バテになってしまったようで。
A それに加えてねえ、昨日もらったコイツが、もう足手まといで。
B 最初はうれしかったんですが、とにかく図体がデカいので、コイツを抱えて観光地巡りするのが辛くて辛くて。
A 何で当たっちゃったんだろうね、横綱犬・土佐司号の抱き枕(Lサイズ)。
B さあ、お盆明けの帰省ラッシュの人混みの中、大型犬1匹つれて、はたして無事に帰れるんでしょうか?
A うちに着いたら冷房つけて、ゆっくり休養しないとね。
投稿: こぶぎ | 2012年8月15日 (水) 23時37分
金田一「等々力警部、どうやらこぶぎさんは、南国の有名な夏祭りをハシゴしたようですね」
等々力「そのようだね、金田一さん」
金田一「順番からいうと、K市→T市ということでしょうか」
等々力「日程的にはそうでしょう」
金田一「しかしU県というのは?…思いあたりませんが…」
等々力「そりゃあーた、最近改名した県ですよ」
金田一「え!改名したんですか?」
等々力「いや、ほんとに改名したのかどうかはわからんがね」
金田一「しかしなぜ、いまになって私の汗腺批判をしたのでしょう?」
等々力「こぶぎさんが、本当にあなたの汗のことを心配したからじゃないかな?」
金田一「だって、私だって韓国で大きな荷物を抱えて大汗をかきながら過ごしたんですよ」
等々力「ふーむ。たしかにそうだね。汗腺トレーニングは、こぶぎさん並みにしたといってもよい」
金田一「なのになぜ…?」
等々力「ようし!わかった!」(加藤武風に)
金田一「ど、どうしたんです?いきなり」
等々力「こぶぎさんは汗に関するアドバイスをすると見せかけて、たんに自分が南国の夏祭りをハシゴした旅行記を書きたかったんだ!」
金田一「なるほど…すると、T市でリュックを背負ったまま『にわか連』として踊り狂ったことも、K市で横綱犬・土佐司号の抱き枕が当たったことも、すべてこれは、このコメント欄に書いて自慢したかったという…」
等々力「そういうことだ」
金田一「等々力さん、見事な推理ですよ!こぶぎさんはたしかに、他人のコメント欄を自分の身辺雑記に使う習慣がありましたからね」
等々力「オホン!どうだね。少しは見直したかね」
金田一「はい。ところで、こぶぎさんは無事、帰ってこられたんでしょうか?」
等々力「金田一さん、それはわからんよ」
投稿: onigawaragonzou | 2012年8月16日 (木) 18時42分