ため息をどうするわけでもないけれど
7月25日(水)
こんなことをしている場合ではないのだが、映画「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」(シリーズ第40作、1988年12月公開)を、つい見てしまう。
早稲田大学のロケのシーンで、こぶぎさんがエキストラで出演した、というので、それを確かめるためである。
本編ではカットされた、と、以前聞いていたが、万が一ってこともある。念のため、じっくりとそのシーンを確認することにした。
…しかし、やはりこぶぎさんは確認できなかった。残念!
私見によれば、「寅次郎サラダ記念日」は、「男はつらいよ」シリーズの曲がり角となった作品である。
渥美清の体力の衰えがはっきりとみてとれるのもその一因だが、なにより時代がバブル経済のまっただ中で、寅さんの世界観が時代とまったく乖離してしまったことが大きな原因である。
劇中では、バブル経済を謳歌している大学生が登場する。
実はこぶぎさんも、そしてこの私もその時代の大学生だったわけだが、私は映画に出てくるような大学生とは似てもにつかないくらい、悶々とした大学生活を過ごした。
だから当時映画を見ていて、「早稲田大学は、こんなにも楽しい大学なのか…」と思ったものである。
またそこに出てくるのが、尾美としのりだもの。
尾美としのりは、私たちの世代にとっては、ジュブナイル映画に欠かせない俳優である。言ってみれば、映画の中における私の「分身」である。その尾美としのりが寅さん映画の中で、「今どき」の爽やかな大学生の青年を演じる、というのが、尾美と同世代の私の心をくすぐったのである。
あらためて作品を見返してみると、たしかに以前に比べるとパワーダウンしたとはいえ、相変わらず、演出が丁寧であることには変わりがない。寅さん版「ジュブナイル映画」だと思えば、それはそれで楽しめるのである。
それに、なぜ「寅さん」に『サラダ記念日』?と、当時は思ったが、すっかり時代と乖離してしまった寅さんが、時代にとけ込んでいくためには、当時流行していたこの歌集を持ち出すしかなかったのかもしれない、とも思う。
『サラダ記念日』なんて言ったって、いまの若い人はわかんないだろうなあ。俵万智という歌人の、短歌集である。バブル経済まっただ中の1987年当時、めちゃくちゃ流行った短歌集だったんだから。
…ん?まてよ。まさか、山田洋次監督は、寅さんの啖呵(たんか)と、俵万智の短歌を掛けたんじゃ…!?。…まさかねえ。
映画を見て懐かしくなり、大手古本屋チェーン店に駆け込んで、『サラダ記念日』を買って久しぶりに読んでみることにした。
…そんなことやっている暇あるのか?
いま読むと、まあなんと甘ったるい短歌だろう、と思う。バブル期だから許されたのかなあ、とも思う。
でも告白すると、私は嫌いではない。
気になった短歌をいくつか。
「金曜の六時に君と会うために始まっている月曜の朝」
「文庫本読んで私を待っている背中見つけて少しくやしい」
「あなたにはあなたの土曜があるものね 見て見ぬふりの我の土曜日」
「中二日(なかふつか)あけて手紙を書いている今シーズンをのりきるために」
うーむ。かなり甘ったるいなあ。でも言葉のチョイスが素晴らしい。
さて、劇中でも紹介されていたものだが、
「ため息をどうするわけでもないけれど少し厚めにハム切ってみる」
という歌がある。この「ため息をどうするわけでもないけれど」というフレーズが、なんとなく好きである。
そこで今日のお題は、「ため息をどうするわけでもないけれど」。このあとに続く下の句を、考えてみようではないか。
…うーん。むずかしいな。
ため息をどうするわけでもないけれど
さあて仕事にもどるとするか
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「時代の趨勢」ではかたづけられない(2023.11.15)
- 文フリって何だ?(2023.11.12)
- ほんとにオーディオブックになっちゃった!(2023.10.16)
- 電光石火の早技、なのか?(2023.08.30)
- オダジマおじさんの諦念指南(2023.06.29)
コメント
A なんか、最近お題ばかり出るんで、朝から考えたてみたんですが。
B 「......」
A 「ため息をどうするわけでもないけれど 少し強めにサックスを吹く」なんてどうですかね。
B 「......」
A ちょっと何とか言って下さいよ(グイ)
B (ばたっ)
A こ、こいつ、白い灰になってやがる。昨秋の競争的研究資金の時と同じ展開だが、今回はイ・パクサの「ガッツだぜ!!」をかけてと。
(ひむれ! はんぼん ふられーのじ)
B (むくっ)お、おわったー
A 終わったって、今回の新曲もオリコン1位に届かなかったIU(アイユ)のことですか?
B だから、そうゆう不穏当な発言はやめなさいって(今回の「You & I」MVも気に入ってるんだから)。いやー、ここ半年近く悩まされてきた「はりつける刑」が、昨日やっと一段落したんですよ。
A はりつけの刑?
B キリストじゃないんだから。面白くもない文章を右から左に張り付けながら、ワープロで45ページも書かなくてはいけない、そんな苦役です。
A それはお気の毒に。なんか、それ以外にも韓国ゼミ旅行の手配とか、ここでは書けないパボ仕事も目白押しみたいですね。
B ですから、やっと一段落したところで気が抜けず、昨晩はうな重で気晴らしした次第で。楽しみなのはブログを読むくらいですよ。
A そこで、この「吹きだまり」ブログを読み漁っていると。
B まさか! 一番楽しみなのは自分のブロクを読むことですよ。
A はい?
B 他人様のブログのコメント欄だから種明かししちゃいますけど、こんな事態を想定して、5月の連休中に来年の1月分まで、自分のブログ記事を書いちゃったんですよ。それがタイマーで少しずつ自動公開されるわけ(手間いらず)。3ヶ月も経つと、さすがに何を書いたか忘れちゃいますんで、新鮮ですよ。今回は何が来るのかなーって。
A あんたね。「ブログ」って 「ウェブ」の「ログ」(日誌)の略語だって、知ってました? 夏休み最終日の小学生じゃないんだから、日記をまとめ書きって...
B 「未来日記」、もしくは何かの予言書として読んで頂いても楽しめますよ。
A そこで、日々の雑感みたいな記事はこのコメント欄で済まそうと。
B こんな風に新たに記事を書いちゃうと、既に書いてある記事との順番入れ替えが大変で。タイマーもセットし直さなければいけないし。でも入れ替え作業をしないと、公開されるのは早くて来年の2月以降になっちゃいますからね。
「ため息をどうするわけでもないけれど 夜明け過ぎまでパボブログ打つ」(こぶぎ)
投稿: 俵こぶぎ | 2012年7月26日 (木) 09時06分
C「2回も連続でお題を出したりして、こぶぎさんには気の毒でしたな」
D「だってあなた、こぶぎさんが絶対乗ってくるってわかって、ああいう書き方をしたんでしょう」
C「ええ。その通りです。英会話の話題も短歌の話題も、こぶぎさんが書きやすいだろうと思って」
D「でも、こぶぎさんがここ最近『はりつける刑』という苦役で死ぬほど忙しかったことは、知っていたわけでしょう?」
C「ええ。先日電話で話したとき、そう言っていましたから」
D「だったら、お題なんてやめればよかったのに」
C「いや、本当のことを言うと、いろんな人から反応が来るかな、と、少し期待してたんです。コメント欄に書かないまでも、英語上達法を個人的に教えてくれるとか、下の句を考えてくれるとか」
D「はあ」
C「でも、結局なんにもなかった」
D「友達がいないんだから仕方ないでしょう。それにコメント欄は『ハガキ職人』のこぶぎさんの独壇場ですからね。あのレベルのコメントはなかなか書けないでしょうし」
C「たしかにそうです。このブログは『ラジオのフリートークのような文章で書く』というのがモットーですから。こぶぎさんのラジオ魂が、コメントを書かせているんでしょうね」
D「こぶぎさんの『ブログのまとめ書き』というのも衝撃でしたね」
C「それも、以前に聞いていましたよ」
D「いちばん最近の記事は、『LED電球を買いました』というタイトルですが、あれもずいぶん前に書いたんでしょうね」
C「そうです。でも、あれこそがパボブログの真骨頂だなあ。私はあの記事が好きですよ」
D「そうですね。読者を置いてきぼりにするK-POP記事もいいですけど、あれこそ、どうでもいい話の極致ですね」
C「私も、そんな話題を探し続けますよ」
ため息をどうするわけでもないけれど 踊りの練習窓から眺める(鬼瓦)
投稿: onigawaragonzou | 2012年7月27日 (金) 00時05分
「ため息をどうするわけでもないけれど LED電球買ったの3月」(こぶぎ)
さて、「寅次郎サラダ記念日」を今夜購入し、早速視聴終了。
47分33秒の三國一朗先生が建物入口に入るシーンを、当時の現場で画面後方から見てた記憶があります。心眼でみれば、画面はるか奥に、当時体重60キロ台のボクが見えるはず。
56分01秒からの寅さん・三田寛子の芝居の背後で歩くエキストラ学生の位置と動きが、僕の出演シーンとそっくりです。
わたくしめ、助監督に2人組にされて演出をつけられ、多分画面を横切るように歩いたと思うのですが、アドリブで両手を打って小芝居しているので、映っていれば分かるはずなんですが。
でも現場では三國一朗しか見かけず、三田寛子も寅さんも見た記憶がないし、キャメラは背後の方から撮っていたと思うので、多分このシーンの前あたりに入るような、学生達がキャンパスを歩くインサートシーンみたいのに出演していて、全カットされたのかな、と思います。
ただ一つだけ自慢すると、寅さんが座っていた教室でボクも授業受けてましたよ(どや顔)。
あと、あの時計塔からチャイムなんか鳴りません。
ちなみに、44分06秒の「ぷらんたん」の看板がある通りが、この前、食べ物屋が多いと紹介した南門通りです。あの「ぷらんたん」、まだあるみたいですねえ。
投稿: こぶぎ | 2012年7月27日 (金) 02時04分