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老先生との対話

7月10日(火)

相変わらずの「陸の孤島」の中の、さらにまた「孤島」の生活である。

午後は、その「陸の孤島の中の孤島」を飛び出して、60㎞離れた城下町に向かう。城下町に住む、老先生にお会いするためである。

私たちがこれから、新たな活動をしていく上で、どうしても先生にご相談しなければならないことが生じたのである。

世話人代表のKさんとともに、先生のお宅にうかがう。

齢八十をこえるその先生は、地元の高校で長らく教師をしておられ、地元の人々からの信頼も厚い。もちろん、教え子たちもいまだに先生のことを慕っている。

前もってお手紙で相談内容を簡単に記しておいたのだが、先生は相談内容に対する回答を、あらかじめメモにして準備しておられ、そのメモにもとづいて、じつに明快にお答えになった。

私は、これまで3度ほど、お目にかかってお話ししただけであるが、そんな私にも、じつに懇切にお話くださる。おそらく誰に対しても、公平に接しておられれるのだな、ということがよくわかる。先生が多くの人々に慕われている理由は、まさにその点だろう。

私が、たとえば学生から相談を受けたとして、これほどのメモを準備してのぞむことは、なかなかできないだろう。

私たちの趣旨をきちんと理解してくださり、適切なアドバイスをくださる。

謙虚で、物腰の柔らかなお方だが、確乎たる信念をお持ちである。

帰り際に、今度出版される予定のご本のお話を、ポツリポツリとなさるが、その内容が、じつに面白い。

そのお話をうかがいながら思う。この先生の最大の魅力は、人間に対する共感に溢れているところにあるのだ、と。

「人間に対する共感」。これこそが、先生がこれまで手がけてきた数多くの仕事の、原点なのではないか。

だから多くの人々が、先生のお話に共感するのである。

向かい合って座り、先生のお話をじっくりと聞く。1時間程度でおいとまするつもりが、気がついたら、2時間半が過ぎていた。

これからもたびたび、先生にご相談するだろう。

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