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卒業生はいつも突然やってくる

7月27日(金)

明日は、年に一度の「職場公開」のイベントである。1日、その準備で職場は慌ただしい。

私にとってはそんなことより、明日は朝9時からまる1日、補講である。

一度も休講にしていないのに、割りあてていた発表が終わらず、9人ほどが残ってしまった。

1人1時間発表するとして、少なくとも9時間は補講をしなければならない。

考えたあげく、どうせなら、「職場公開」の日に補講をぶつけてしまえ、と思いついた。

「模擬授業ではなく、実際の授業を高校生に公開する。これこそ本当の『職場公開』です!」

と主張したが、誰ひとりとりあってはくれなかった。ま、所詮、そのていどのものなのだろう。

夕方、明日の「職場公開」のイベントで展示するパネルの準備をしていると、「先生!」と呼ぶ声がする。

見ると、この3月に卒業したSさんである。

「どうしたの?」Sさんは、隣県で社会人1年生として働いている。

「まさか、仕事がつらくなってやめたんじゃ…」今日は金曜日である。

「違います。今日は休みを取って来たんです」

まったく卒業生というやつは、いつも突然やって来るものだ。

「先生、全然変わりませんね」

「当たり前でしょう!まだ卒業して4ヵ月しかたっていないんだから」

同じくこの3月に卒業し、今はこの職場に勤めているT君も合流して、しばし歓談する。

かなり仕事の愚痴がたまっていたらしく、立て板に水のごとく喋りはじめた。

「先生、このあと私たち同期が集まって飲みに行くので、よかったらぜひ来てください」

「わかった。仕事が片づいたら顔を出します」

そして夜8時、駅の近くのお店に向かう。

この3月に卒業した4名が集まっていた。T君とは今も頻繁に会っているが、3人の女子とこうしてお酒を飲むのは、卒業式以来である。

社会人1年生の3人の女子による、会社の愚痴が、たまらなく面白く、興味深い。みんな、自分の身のまわりにそのはけ口がないことを嘆いていた。

「社会人が、こんなに孤独なものとは思いませんでした」

「そうでしょう」私がもうずいぶん前から感じていたことだ。

「卒論を書いていたころが懐かしいです。卒論を書いていたころが、いちばん充実していました」Sさんがしみじみ言った。

「その言葉、今の4年生に聞かせてやりたいよ」と私。たぶん今の4年生には、まったく実感のわかない言葉だろう。

いま目の前でくり広げられている、3人の女子による、職場の愚痴の言い合い。

これが、ホンモノの女子会、というものだろうか。

気がつくと、深夜0時を過ぎていた。

「まだ話し足りませんね。次回はみんなで温泉に行きましょう」Sさんが提案した。

やはり私は、愚痴を受けとめるマシーンなんだな、と苦笑した。

横でT君も、苦笑していた。

「卒業生はいつも突然やってくる 会社の愚痴をおみやげにして」

なんてね。

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