中堅芸人の被害妄想
少しもどって、8月24日(金)~26日(日)
毎年開かれる、お笑い芸人たちによる2泊3日の「合宿ライブ」。今年は、隣県で開催される。
もちろん、これはたとえ話。
中堅芸人の私は、初日の「全体ライブ」で、「ネタ」をやるようにと、主催者の友人に言われた。古い友人からの誘いなので、断れない。
おもに若手芸人たちが集まる合宿ライブなので、もう参加することはないだろうと、ここ数年参加していなかったので、じつに5年ぶりである。
行ってみると、大御所の師匠たちも、数人参加されていた。
(困ったなあ…例年、大御所の師匠は来ないはずなのに…)
こういうとき、中堅の芸人はいちばん困る。若手芸人の芸が未熟なのは仕方がない。だがいい年をした中堅芸人は、そういうわけにもいかない。若手からは、
(フフフ、あいつのネタも、その程度か)
と思われたり、大御所の師匠たちからは、
(あいつ、まだまだ全然ダメだな。やめちゃえばいいのに)
と思われたりする。つまり、トクすることは何もないのである。
初日は、市民会館大ホールを使っての、中堅芸人2人、大御所の師匠2人によるネタ。
2日目は、3つのライブハウスに分かれて、若手芸人たちによる「ミニライブ」である。
私は初日のトップバッター。唯一よかったことは、最初に済ませてしまうので、あとは気兼ねなくお酒を飲めることだ。
初日の懇親会で、(よし、少しは若手芸人たちと交流をもつか!)と、よせばいいのに柄にもないことを考える。
同じ事務所の、かなり下の後輩芸人がいたので、少し話をする。
自分としては、アドバイス的なことを話しているのだが、話せば話すほど、「上から目線」で喋っていることに気付く。
後輩の顔は、明らかに、
(やっかいだなあ。この先輩)
という顔をしている。いや、そんなふうに見えるのだ。
私がその後輩の立場だったら、絶対にそう思うだろう。
(うわぁ…。絶対、やっかいな先輩と思われているぞ…)
そう思いはじめると、被害妄想はどんどんふくらみ、もう何も話せなくなった。
若い女性芸人と話しているときも、話の流れで、
「…そうですか。じゃあ今度、私の書いたものをお送りします」
などと言っては見たものの、
(あのバカ、本気にしやがった。こっちは社交辞令で言ってるだけなのに。キモ~イ)
と思っているように思われてきて、
(どうしよう…いまさら、やっぱり送りませんとは言えないしなあ)
と、やはりひどく後悔した。
2日目の若手芸人のライブで、中堅芸人として、ネタに対するコメントを言わなければならない。
なかにはネタに対して懇切に「指導」する中堅芸人もいるようなのだが、私はすっかりビビってしまって、それができない。
「たたた、…たいへん面白かったです」
そんな自分にひどく落ちこんだが、何人かの古い友人たちと再会し、何人かの新しい後輩たちと知りあえたことは、この3日間の大きな収穫だった。
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