ソナギのひとり旅
8月9日(木)
朝、ソウルに向かう御一行とM市のホテルで別れ、ひとりでG市に向かう。
学生がお世話になるC大学にご挨拶にうかがおうと思い、事前に連絡すると、「忙しいので」と断られた。まあ、突然のことだからもっともなことである。
そういえば、C大学に行ったことのある人から、先日メールが来ていたことを思い出した。
「もしC大学に行かれるのなら、裏門のところにある『ノルブボッサム』というお店が美味しいです」
これを読んで、思わず笑ってしまった。
だって、「ノルブボッサム」は、全国どこにでもあるチェーン店だもの。
私が大邱にいたときも、食べに行ったことがある。
たしかにそのお店は美味しくて、1日に2度も通ったことがあるくらいだ。
しかし、今回はひとり旅である。ひとりで食事をするお店としては、かなり抵抗があるので、今回は見送ることにした。
市内を何カ所か見学した後、C大学のカフェで、「アイスアメリカーノ」を飲みながら、少し涼んだ。
8月10日(金)
G市からバスで50分ほどのところにある、Tという町に向かう。目的は、その町にあるという、石灯籠を見に行くことである。かなりの田舎町である。
バスに乗ると、後ろの座席に、日本人の女性の3人組が座っていた。
あんな何もない町に、何しに行くんだろう?聞いてみたい衝動に駆られたが、キモい人だと思われるのがこわくて、結局何も聞かなかった。
ま、そういう自分も、同じバスに乗っているわけだが。
バスを降りて、タクシーに乗る。
「○○まで行ってください」と言って地図を見せると、
「かなり遠いですよ」と言う。
しかしそういわれても、こっちはそれが目的できたのだから、仕方がない。とりあえず、目的の場所まで行ってもらうことにした。
ところが、行けども行けども着かない。どんどん寂しい山の中に入っていく。
ようやく、目的の場所に着いた。民家も何もない、山深い場所である。
「運転手さん、ちょっと待っていてください。写真だけ撮ってきますので」
ここでタクシーに帰られてしまうと、私の帰る手段がなくなってしまう。私はタクシーから降りて、石の燈籠の写真を撮ることにした。
夏草の生い茂る空き地に、石灯籠がポツンと立っていた。
石灯籠の近くに寄って、一生懸命写真を撮っていると、ブンブンとハチの音が聞こえる。
(うるさいなあ)
すっかり写真を撮ることに集中していたが、ふと我に返り、石灯籠の中を見てびっくりした。
す、す、スズメバチの巣だあああぁぁぁぁぁ!!!
なんと、石灯籠の中に、ビックリするくらい大きなスズメバチの巣があるではないか!
すぐに写真を撮るのをやめて、あわててタクシーに駆け込んだ。
「戻りましょう!」
運転手さんは不審に思ったに違いない。高いお金をかけて石灯籠をたった1つだけ見に来て、写真を撮るかと思ったら、あわてて戻ってきたからである。
雨もポツリポツリと降りはじめる。そういえば天気予報では、今日は全国的に「ソナギ」(にわか雨、夕立)が降ると言っていた。
「ほかにどこか見るところはありますか?」と私。
「ここは竹が有名ですからねえ。竹の博物館なんてどうです?」
「じゃあそこに行ってください」
町に戻り、竹の博物館を見に行ったが、雨がやまない。
すっかり意気消沈した私は、バスでG市にもどることにした。
G市に戻ったのが、午後1時半。外は土砂降りの雨である。
(まったく、今日は散々だなあ)
G市のバスターミナルは、お店や食堂がいくつもある巨大な複合施設になっており、かなりの時間をここでつぶすことができるようになっている。
仕方がないので、本屋にはいると、なんと松本清張の小説が韓国語に翻訳されているではないか!
松本清張ファンとしては、チェックしておく必要がある。
またはじまった。悪いクセである。
本屋で松本清張の短編小説集『張り込み』(韓国語訳)を買い、その隣にあるコーヒーショップで、その中に収められている「顔」を読みはじめる。
もちろん、むかし読んだことがあるのだが、内容をすっかり忘れてしまった。
読みはじめると、これがなかなか面白い。つい時間を忘れて読みふけってしまう。
(待てよ。こんなことで、半日をつぶしてしまっていいのだろうか…)
せっかく韓国に来たのに、これではもったいない。
そこでハタとひらめいた。
(そうだ!映画を見よう!)
バスターミナルに隣接して、シネコン(映画館)があったことを思い出した。
午後5時、隣のシネコンに向かった。(つづく)
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