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氷基準

8月1日(水)

相変わらず、暑い日が続いておりますな。

私の仕事部屋には、冷蔵庫がない。

唯一あるのが、小さめの「ポット型魔法瓶」である。

職場で捨てられそうになっていたところを、もらいうけたものである。

夏場は、氷水を入れておくと意外とこれが重宝する。

事務室の隣に応接室みたいな部屋があって、そこに共有の冷蔵庫が置いてある。その冷蔵庫の冷凍庫から、氷を拝借して、「ポット型魔法瓶」に入れ、そこに、浄水器の水を入れる。そして氷水を飲む。

これが、最近の私の日課である。「氷水は身体に悪い」と言われながらも、こればかりはやめることができない。

面倒なことに、いま私は「陸の孤島」にいるので、わざわざ「陸の孤島」を出て、暑い中を日差しの強い大通りを横切り、自分の所属する部局の建物の事務室まで行かなければならないのである。

つまり、水を汲むのも一苦労、というわけである。

さらに厄介なことに、冷蔵庫が置いてある部屋は、応接室にもなっていて、たまにそこで会議をやっていたりする。

会議中は、その部屋に入ることはできない。つまり、氷を取ることはできないのである。

ポット型魔法瓶を持って、大汗をかきながら「陸の孤島」から所属部局の建物に行き、さあ氷をもらおうとその部屋の前まで行くと、

「会議中」

という看板が掛かっている。

すると、またいそいそと、大汗をかいて「陸の孤島」に戻るのである。

そんなことが2回くらい続いた。

今日、それを見かねたのか、ある職員の方が、

「会議が終わり次第、私が氷と水をポットに入れておきますよ」

と言ってくれた。

だが私は逡巡した。

「いえ、いいです。自分でやりますから」

「いえ、大丈夫ですよ。氷を入れて、浄水を入れればいいんでしょう?」

「はあ、まあそうなんですが…」

私が逡巡したのには、理由がある。

それは、私はそのポット型魔法瓶に、ふだんはビックリするくらいの量の氷を入れているからである。

もう、ポット型魔法瓶が全部埋まるくらいの量の氷である。どちらかといえば氷メインで、その隙間に水がある、という感じである。

そうしないと、時間が経つにつれて猛烈な勢いで氷がとけてしまうのである。少なくとも1日持たせるには、めいっぱい氷を入れなければならない。で、キンキンに冷えた水を飲む。これが最強なのである。

職員の方にそれが理解できているか、不安だった。これまでの経験だと、たぶんこの方に私の本意は理解されないだろうなあ。

しかしむげに断るわけにもいかず、「じゃあ、お願いします」と言って、事務室を出た。

ころあいを見て、暑い中を再び事務室に行く。

「氷と水を入れておきました」

「ありがとうございました。おかげで助かりました」と私。

念のため、ポット型魔法瓶を少し振ってみる。

ふだんだったら、「カランカラン」と、氷がポットの内壁に勢いよくぶつかって、涼しげな音が鳴るのだが、今回ばかりは振っても鳴らない。いや、かろうじて小さい音で「カランカラン」と聞こえる程度である。

(やっぱりなあ…)

申し訳程度に、氷が入っているだけであった。

案の定、ポット型魔法瓶の中の氷は、1時間もたたないうちに、猛烈な勢いで溶けてなくなってしまった。

(やはり自分でやればよかった…)

私と他人とは「氷基準」が異なるにもかかわらず、それを他人に任せてしまったことを反省した。

「冷房の温度と氷の分量は 自分でせぬと気が済まぬ俺」(『うなぎ記念日』(未刊)より)

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