MALTA、勝手にディスコグラフィ
気分がひどく落ち込んだときは、MALTAを聞くと少し立ち直れることを思い出した。
高校時代からそうである。
80年代のフュージョンには、何ともいえぬ高揚感がある。
とくにMALTAの音楽はそうだった。
…あ、知らない人のために言っておきますけど、MALTAは鳥取県出身のオッサンですよ。
高1のときに、MALTAのファーストアルバム「MALTA」を聴いたときは、衝撃を受けた。
とくに1曲目の「shiny lady」は、運命の1曲である。
曲といい、演奏といい、完成度が高い。というか、完璧である。
こんなふうに、自在にアルトサックスが吹けたら、どんなにいいだろう、と思った。
…ま、おなじことは、ナベサダさんを聴いていても思ったんだけどね。
セカンドアルバムの「SWEET MAGIC」。これも、伝説の名盤である。アルバムのタイトルにもなった「SWEET MAGIC」は、日本で暮らしている人なら誰でもを聴いたことがあるはずである。
この2枚のアルバムで、当時デビューしたてのMALTAは、一躍「時の人」になる。1983年に日本で正式にデビューするまで、彼は長い間アメリカで活躍していた。たしか日本でデビューしたときは35歳くらいだったと思う。
私はこのとき、新宿の厚生年金会館で行われたMALTAのデビューコンサートを聴きにいっている(当時高1)。
このあとに出すアルバムも、どれも完成度が高い。
3枚目の「SUMMER DREAMIN'」は、私の中でベストのアルバムである。このアルバムから、MALTAといえば夏の音楽、というイメージが定着して、真夏に各地で行われる野外のジャズフェスティバルには、引っ張りだこだったのではないかと思う。
4枚目の「SPARKLING」も、MALTAの楽曲のスタイルが存分に発揮されている名盤である。「底抜けに明るくポップな曲調」「大空を突き抜けるような伸びやかな曲調」「ロックのように暴れ回る曲調」「しっとりしたバラード」いずれも、MALTAの魅力が全開である。記録によれば、第1回日本ゴールドディスク大賞に輝いたとある。
5枚目の「HIGH PRESSURE」に至り、MALTAは天下を取ったのだと思う。とくにアルバムのタイトルともなっている「HIGH PRESSURE」は、「向かうところ敵なし」といった、イケイケドンドンな感じの曲である。MALTAがこの曲をステージで自在に演奏する姿は、何をしても許されるといった感じの、ある種頂点に達した感があった。それほどの高揚感があったのである。
私はこれ以降、MALTAの音楽から次第に離れてゆく。大学生になって、アルトサックスそのものへの思い入れが薄らいだからかもしれないが、それ以上に、MALTAがこの「HIGH PRESSURE」で頂点を極めてしまったことが、大きく関係しているように思う。
事実、このあとMALTAは、「MY BALLADS」というバラードのベストアルバムを出し、さらに「OBSESSION」という新作アルバムを出したあと、初のベストアルバムを出す(このベストアルバムは、ライブ仕立てに演奏し直したもので、やはり名盤である)。ここらあたりが、やはりひとつの区切りだったのだろう。なにしろ、名盤を量産しすぎたのだ。
その後に出されたアルバム「SAPPHIRE」も、かなり好きだったが、「佳品ぞろい」といった印象で、かつてのような「ワクワク感」が、あまり感じられなかったと記憶する。しかしそれは、私が勝手に期待していたことにすぎない。
そして今また私は、MALTAの音楽に回帰している。もちろん、「HIGH PRESSURE」以前のMALTAに、である。
後ろ向き、といわれるかも知れない。だが、この音楽を聴けば元気になるのだから仕方がない。
私はスポーツにまったく関心がないからわからないが、スポーツの好きな人って、例えば、プロ野球選手が抜群のタイミングでホームランを打ったり、サッカー選手が鮮やかにゴールを決めたりすると、気分が高揚するんでしょう?
文化系の私にとっては、それと同じなんですよ。ナベサダさんやMALTAの演奏を聴くっていうのは。
…あれ?書いているうちに、少し元気になってきたぞ。やはり自分の好きなことを書くのは、健康にいいのかもしれないぞ。
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