凹むひと言
隣県のY高校の出張講義におじゃましたのは、これで2回目である。
このY高校は、早くからこういうことに取り組んでいて、システムがしっかりしている。
まず、出張講義をする側の私たちは、同じ内容の講義を、2コマしなければならない。
1コマ目と2コマ目では、生徒が入れ替わるのである。
つまり、生徒の側からすれば、いくつもある講義のなかから、2コマを選択することができるので、一粒で2度美味しい、という効果をもたらす。
だが、同じ内容の講義を2コマ連続で行う、というのは、やる側としては、けっこうツライ。
何が恥ずかしいって、1コマ目と2コマ目で、同じ冗談を言わなければならないときである。
生徒は入れ替わっているので問題ないといえば問題ないのだが、困るのは教室の一番後ろに座っている高校の先生である。
2コマともいらっしゃるので、2回とも同じ冗談を言うのは、どうも恥ずかしい。
(さっきと同じ冗談を言ってる…)と思っているんじゃないかと思っただけで、2回目に言う冗談は精彩を欠いてしまう。
なにしろ、言っている本人が、いちばん恥ずかしいのだ。
そんなことを、電話で妻に話した。
「講義のなかで、たとえ話として、携帯電話を例に出して○○○○○○○○っていう冗談を言ったんだけど、1回目はともかく、2回目に同じ冗談を言うのは、かなりキツイでしょ」
「そうねえ。1回目に聞いたとしてもかなりキツイものねえ」
…ということは、いまの冗談は、ツマラナイということか?
妻は、相手を凹ませるようなひと言を言う天才である。
こんな話題にもなった。
「フェイスブックをはじめてみようかなあ。今日たまたま、今年定年退職した職員のオジサンからメールをもらったんだけどさあ。フェイスブックをはじめたらベトナム人の友人が30人もできたんだってよ。すごいねえ」と私。
「ま、フェイスブックの『友人』は、本当の意味での友人とは限らないけどね」
これは正論。私がフェイスブックにあまり関心がない理由のひとつは、私が本当に信頼している友人の多くが、おそらくはフェイスブックに関心がないと思われるからである。
こんなこともあった。
先月、韓国に旅行したときのことである。
韓国人の友人の車に乗っていたとき、話題が右側通行と左側通行の話になった。
「日本は右側にハンドルがあって、左側通行ですよね。韓国と反対ですよね」と、運転していた友人が言う。「あれは、日本と英国だけですか?」
「いえ、たしか豪州も日本と同じだったはずですよ」と私。
そこから、よせばいいのに、これにまつわる何かおもしろエピソードを話さなきゃと、急に思ってしまった。
「左ハンドルを運転すると、ウィンカーとワイパーのレバーが日本とは左右逆でしょう。左ハンドルの車を運転していたとき、ウィンカーを出そうとして、うっかり右側のレバーを動かしたら、ウィンカーではなく、ワイパーが動きだしてしまって、焦ったんですよ」
という話を思いつき、それを韓国語で話そう、と思ってしまったのである。
しかし、この話を韓国語でおもしろおかしく話すのは、かなり至難の業である、ということを、話しはじめてから気づいた。
だが話しはじめてしまってので、途中でやめるわけにも行かず、結局、グダグダな感じで、この話は終わってしまった。
…という話を、帰国してから、妻にしてみた。
「韓国語では、込み入った冗談は言わない方がいいな。自滅するだけだ」と、私が言うと、
「そうねえ。日本語で聞いても、たいして面白い話でもないしねえ」
ガーン!
つまり、私の話は、総じて「面白くない」ということなのか?
いまのいままで、私の話を、「面白くない」と思いながら聞いていたということなのか???
どこの家でも、身内って、こんな凹むひと言を言うものなのか?
それとも、単に本当に俺が面白くないだけなのか???
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 便座(2024.11.26)
- もう一人、懐かしい教え子について語ろうか(2024.11.17)
- 懐かしい教え子からのメール(2024.11.17)
- 散歩リハビリ・14年後(2024.10.21)
- ふたたびの相談(2024.09.29)
コメント
いや、「凹む言葉」なんでとんでもない。鬼嫁(「鬼瓦の嫁さん」の略)さんは、的確に鬼瓦さんのフリを承けて落としてますよ。もうオチが成立しているのですから、鬼瓦が放つ最後のセリフは何でもよく、
「ほーる、てばく」(呆れた時にいう若者言葉)でも、
「おっとけ あらっち!」(どうしてわかったの、KBSギャクコンサート「感受城」コーナー風に)でも、
「権三いぬん のんだみ しーちょー、しちょー」(ゴンちゃんは冗談が きーらい、きーらい、同「生活の発見」コーナーのゲスト風に。この場合、鬼嫁さんが「うり へあじじゃ(私たち 離れましょう)」と続けて、コント本編に突入するパターンもあります)でも、
にまうむでろ、思いのままです。何と、できた奥さんなのでしょうか。
すっかりシン・ボラのファンになった私としては、「ガーン」と落ち込んだ所にKBSギャクコンサートの人気コーナー「勇敢な奴ら」の3人組が登場して、さらに事態をややこしくする、というくだりを希望しますけど。
授業中のギャクを最初からパワーポイントに書き込んでる先生を知っていますが、毎年同じタイミングで同じギャクを放ってこそ、「芸の域」と言えるでしょう。コントだって落語だって、よい作品は同じネタを何度見てもいいでしょう。思いつきのような、しょーもないギャクが、実は一字違わず台本通りだったと分かれば、参観中の高校の先生も息を呑むはずです。
投稿: こぶぎ | 2012年9月14日 (金) 21時03分
さすがはこぶぎさん。この文章の含意をよく読みとっていらっしゃる。そう、この文章のテーマは「的確なオチ」です。
ちなみに、仕事に対して私がよくこぼす愚痴に対しても、妻は的確な返しをしてくれて、溜飲が下がる思いをすることもあります。ま、イッテコイですな。
…というか、さては、KBSギャグコンサートの話を書きたかっただけでしょう!
投稿: onigawaragonzou | 2012年9月15日 (土) 00時47分
おっとけ あらっち!
投稿: こぶぎ | 2012年9月15日 (土) 14時20分