内弁慶ブルース2012
10月13日(土)
この日って、うちの市で、なんかあったの?
東京にいる両親が急遽、週末にこちらに来るという。
数日前、宿を予約しようと思ったら、市内のどのホテルも満室である。
以前、缶詰になって仕事をした、市内にあるレトロな旅館に電話をかける。
「13日、宿泊の予約をしたいんですが」
「すみません。あいにくその日は満室です」と、おかみさんらしき人が答える。
この旅館が満室である、ということは、よっぽどのことである、…というのは、失礼な話か。
「あのう、この日、何かあるんでしょうか?」私は思わず聞いた。
「さあ、実は私どもも、調べがついておりませんで…」旅館のおかみさんも、不思議がっている様子である。
ということで、20㎞ほど離れた隣の市のホテルを予約することにした。
しかし13日(土)の午後は、職場で公開講座のため、半日出かけなければならない。
この日は、「午後は仕事だから」とだけ言って、背広の着替え、両親をアパートに置いて、職場に出かけた。
私のいつもの悪いクセで、何の仕事かを、いっさい言わない。
まったく、厄介な息子である。
両親もそういう私の性格を知ってか、まったく聞こうともしない。
さて翌日(14日の日曜日)。
朝8時半、隣の市のホテルまで迎えに行く。
両親が泊まっているホテルの、すぐ向かい側には、浮世絵の美術館がある。
その美術館には、ふだん一緒にボランティア活動をしている仲間の、Tさんが勤めている。
私はまだ行ったことがなかったが、ホテルの目の前にあることを知り、この機会に両親を連れていくことにしたのである。
しかもこの美術館は、朝8時半という早い時間から開館している。朝イチで美術館に行くことにした。
「浮世絵の美術館?」美術に関心のない両親が訝しむ。
「一緒にボランティア活動をしている知り合いが勤めているんで、この機会に見に行こうと思って」と私。
「ボランティア活動?知り合い?」
両親の頭の上には、大きな「?」(はてなマーク)が浮かんでいるようである。
そういえば、震災で被災した資料のボランティア活動をしている、なんてことも、まったく両親に言っていなかった。
説明するのが面倒くさいので、結局、説明しないまま美術館に入った。
受付にTさんがいらっしゃったが、こっちは野面(のづら)で、しかも両親を連れている、というので何とも恥ずかしくて仕方がない。
しかしそんなことはどうでもよい。美術にまったく関心がない両親が、浮世絵の版画をじっくりと見ながら「すばらしいねえ」と感嘆していたから、やはり連れてきて正解だったのだ。
私たちは、Tさんに感謝をして、美術館を出た。
お昼の時間になり、ラーメン屋に連れて行く。
インターチェンジの近くにある、「K」というラーメン屋である。先日、ひとりでお昼にラーメンを食べようと思って、店の前まで来たのだが、あまりに混んでいたので諦めてお店にはいるのをやめた店のうちの1つである。
今日も少し行列ができていたが、ほどなくして入ることができた。
名物の「トリゴボウラーメン」を食べる。両親は、「こんな美味しいラーメンを食べたのは久しぶりだ」と感激していた。私も久しぶりにこの店のラーメンを食べたが、たしかに、行列ができるだけのことはある。
しかもこの店のラーメンどんぶりは、なんといったらいいか、むかしの蓄音機のスピーカーというか、麦わら帽子というか、とにかくそんなような形をしていて、どんぶりの底の方に、麺がたっぷり詰まっている感じなのである。つまり、意外と量が多いのだ。
両親も私も、たちまちお腹いっぱいになる。
あまりにお腹いっぱいになって眠くなったので、午後はアパートに戻り、しばしの時間、昼寝をする。
気がついたら夕方近くになった。
そうだ、今日は夕方5時から、大学祭のライブのバンド演習があるんだった!
「ちょっと出かけてくる」と私。
「どこに行くの?」と母が聞くが、
「ちょっとね。7時過ぎには戻る」
とだけ言って、出かけた。
実は大学祭でバンド演奏をすることになっていて、その練習に行く、という説明も、面倒くさいので、説明しなかった。
何だかんだで、7時半にアパートに戻る。
「まったくもう…帰ってこないかと思った」と両親は待ちくたびれた様子。
昔から私は、何も言わずに家を出て、何も言わずに家に帰ってくる子供だった。それは、いまでも変わらないんだな。
夕食は、以前にも両親を連れていったことのある回転ずし。ネタが大きいことで有名である。
結局、朝イチの美術館、行列のできるラーメン屋、ネタが大きい回転ずし。
ま、内弁慶の私としては、まずまずの親孝行である。
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