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夢と現(うつつ)の322番教室

10月22日(月)

月曜日の授業は、久しぶりである。

先週は開学記念日、先々週は体育の日だったので、3週間ぶり、2回目の授業である。

教室に着いて、思わず笑ってしまった。

(ここは、昨日ライブをやった教室だ!)

そう、322番教室は、昨日私がバンド演奏した教室だったのだ!

そして今日は、現実に戻り、昨日と同じ場所に立って、授業をする。

夢と現(うつつ)は、紙一重なのだ、と、しみじみ思った。あるいは、夢の続き、というべきか。

久しぶりの授業で、いろいろなアクシデントがあったが、私の授業にはめずらしく、笑いが起こったり、「おもしろかった」と感想を書いてくれたり。

昨日の余韻を、まだ引きずっているのかもしれない。人間は知らず知らずのうちに、何かがきっかけになって、肩の力が抜け、楽に生きることができるようになるのかも知れない。そんなことを思った。

もう一つ、嬉しいことがあった。

夕方のクリーニング作業で、新人の学生が2人、来てくれた。見慣れない学生である。しかも、2人は友人同士ではなく、たまたま今日、ひとりひとりでやって来たのである。

この時期に、新たにボランティア作業に関心を持ってくれる学生がいるとは、めずらしい。

「どうやってこの活動があることを知ったの?」私が2人に聞いた。

「掲示板に貼ってあったチラシを見たんです」

「掲示板?掲示板にそんなの貼ってあったっけ?どこの掲示板?」

「学部の建物の玄関の前にある掲示板です」

「私は、学部の建物の2階にある掲示板で見ました」と、もうひとりの学生。

はて、記憶がない。

…必死に記憶をたどって、ようやく思い出した。

先週、担当した展示に客がまったく入らないことにくさっていた私に対して、見かねた同僚が「こんなに頑張っているんだから、(意固地にならずに)もっと宣伝した方がいいですよ」とアドバイスしてくれたことがあった。

その言葉に奮起して、掲示板を担当する職員の方に、展示のポスターをうちの部局の掲示板に貼ってもらうようにお願いした。

そしてそのついでに、ボランティアのクリーニング作業への呼びかけのチラシも、貼ってもらうことにしたのである。

今までは、非公式の活動だったということもあり、うちの部局の掲示板に貼ってもらうことをためらっていたのだが、せっかくの活動も知られなければ意味がない。同僚のアドバイスは、私の偏狭な思考回路を、ときほぐしてくれた。

そして結果的に、そのチラシが2人の学生の目にとまり、自分も参加してみよう、と、彼らの心を動かしたのである。

たぶん掲示板に貼ったあのチラシは、ほとんどの人の目にとまらぬまま、素通りされているに違いない。しかし、それ以上に、2人の目にとまったことの意味は大きい。

同僚のアドバイスがなければ、掲示板にチラシを貼ることはなかったし、掲示板にチラシを貼らなければ、2人の学生の目にとまることもなかった。些細なきっかけは、ときに不思議なつながりをもたらすものである。

(まるで、ドラマ「高原へいらっしゃい」そのものだな)

まったく客の来ない高原のホテル。支配人の面川(田宮二郎)をはじめとする従業員たちは、何とかして、ホテルの存在を知ってもらおうと奮闘する。

むかしビデオ録画したこのドラマを、最近、また見返しているのだが、彼らの奮闘ぶりを見ていると、どことなく最近の私と重なっているような気がしてならない。

いや、ひょっとしてこのドラマを最初に見た子どもの頃から、そういう生き方にあこがれていたのかもしれない。

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