« 幸運のイニシャルK | トップページ | キョスニムがリユースされた日 »

高原へいらっしゃい

10月18日(木)

結局、今週は展示の対応にかかりきりである。

今日はうちの社長や副社長にも見に来ていただいて、それだけでも、励みになった。人間は、というか、私は、単純な人間である。

芳名帳を見ると、このブログを読んで来てくれたとおぼしき人もいて、ああ、ブログであんな愚痴なんか書くんじゃなかった、あれでは見に来いと脅迫しているようなものではないか、と、自分の愚かさを心から反省した。

とくに恐縮してしまったのは、卒業生のT君である。

隣の市で働いているT君は、仕事が忙しい時期にもかかわらず、わざわざ平日の昼間に見に来てくれたのである。

このブログを読んで、大慌てで来てくれたのではないか、と思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいである。

なにもブログでぼやかなくとも、今日は多くの人が見に来てくれた。この展示を楽しみにして見に来ていただいた町の方々や、授業の課題で最初は仕方ないと思いながらも、見ているうちに楽しんでくれた学生。そして、先生に引率されてきた近くの高校の生徒たち、それに、私が信頼する同僚や職員さん。

昨日から今日にかけての「宣伝」とはまったく無関係だったが、これも「イニシャルKの奇跡」というべきか。

「こうなったら、最終日の土曜日に向けて、宣伝を強化しましょう」

夕方、展示職人のSさんが提案する。

土曜日は、大学祭とホームカミングデーが重なり、多くの集客が見込まれるのではないか、ということからである。

どのようにしたら、効果的に人を呼び込むことができるか、について、担当の職員さんも交えてミーティングを行った。

話し合いを続けているうちに、あるドラマを思い出した。

TBSで、そのむかし放送していた田宮次郎主演「高原へいらっしゃい」(1975年)である。私が日本のドラマの中で一番好きなドラマである。

Imagescant53jf 信州の八ヶ岳高原に、何度も人手に渡り、経営が難しいとされるホテルがあった。このホテルの支配人をまかされた面川(田宮次郎)は、このホテルを限られた予算内で経営し、軌道に乗せようと、人を集め、ホテル再建に乗り出す。しかし、なかなかお客は集まらない。

方々からホテルのメンバーを集める様子は、黒澤明監督の映画「七人の侍」にも通ずるものがある。面川は、自分が集めたメンバーを大切にしながら、ホテル経営を続けていこうとするが、なかなかうまくいかない。

このメンバーの中に、面川のお目付役として派遣された、経理担当の大貫(前田吟)という男がいた。合理主義者で敏腕の大貫は、「情」を重んじる面川と、当初は対立し、面川のなまぬるいやり方を見下していた。

しかし時がたつにつれて、大貫は次第に面川の人間性に惹かれていく。

あるとき、面川は、ホテル経営がまったくうまくいかいことで破れかぶれになり、泥酔してホテルに戻ってくる。ホテルのメンバーたちが、そんなぶざまな面川に嫌気がさし、みんなでホテルを辞めよう、と言い出す。

そのときの大貫のセリフは、このドラマの中でも、屈指の名シーンである。

「わかったよ! 君たちは何時だってそうなんだよ! ちょっと具合が悪いことになると、すぐそうやって逃げ出しちゃうんだよ」

「・・・・」

「君たちはね、いつだって損得だけで生きているんだよ。そういう生き方はな、最低なんだぞ。たとえどんなに損をしたって、一つのことをやりとげなくっちゃ駄目なんだよ。一つのことができなくてな、何ができるって言うんだよ!」

「・・・・」

「七郎、お前は人間の出会いをどういうふうに考えているんだ」

「出会いですか?」

「そうだよ出会いだよ。俺とお前が、こんな山の中で会って、出会うっていうことは大変なことなんだぞ」

「そんなに大変ですか」

「あたりまえだよ。出会いを大事にしなくて何を大事にするっていうんだよ」

「言いたいことはそんなことですか」

「そんなことだと? 出会いってのは一番大事なことなんだぞ。ホテルを棄てて出て行くっていうことはな、その一番大切なものを全部棄ててでていってしまうということなんだぞ」

「・・・・」

「君たちは一生後悔するぞ。60歳くらいになって思い出して後悔するぞ」

「俺たちは後悔しませんよ」

「大貫さんは後悔しないようにすればいいじゃないですか」

「あたりまえだよ! 後悔しないよ! 俺は君たちとは違うんだよ。最後までやりぬくんだよ。一人になったってやりぬくんだよ!」

かつて面川と対立していた大貫は、すっかり心が折れてしまった面川を立ち直らせようと、辞めようとするメンバーたちを説得するのである。それはおよそ合理主義者の大貫には似つかわしくない、ヒューマニズムであった。

面川は、その大貫の心に打たれて、もう一度奮起しようと決意する。

「人間的な弱さをみせる面川」「人間味の溢れる大貫」…これは、それまでの面川や大貫のキャラクターを、裏切る描き方である。

しかしだからこそ、この場面は胸を打つ。

大貫に支えられる面川とは、まわりの友人たちに支えられている、この私なのではないだろうか。ときどき、そんなことを思う。

|

« 幸運のイニシャルK | トップページ | キョスニムがリユースされた日 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

大変結構な展示でした。
奥まった入り口を入れば、堂々たる大きさの資料。やっぱりこれは観とかないと損ですね。

ブログを見て行ったので、ああ、ここらへんの見せ方工夫したんだなと微笑ましく拝見しました。

資料もいいけど、「復活プロジェクト」のみんなの笑顔が素晴らしかったです。楽しんで作業してる姿、これがたまんなくいいんです。

大学近くに用がありましたので、ついでに参じました。
草刈参加出来なかったので罪滅ぼしです。(だって朝起きれないんだも…ゴニョゴニョ)

投稿: 隣町のT | 2012年10月19日 (金) 22時26分

ありがとうございます。展示のバージョンアップした部分は、貴兄のお察しの通りです。
「みんなで力を合わせてビフォーアフター」、よかったでしょう?結局私は、ああいうことをするのが、好きなんですな。

投稿: onigawaragonzou | 2012年10月23日 (火) 00時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 幸運のイニシャルK | トップページ | キョスニムがリユースされた日 »