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ディベート

10月25日(木)

覚えている人、いるかなあ。

むかーし、いまから25年近く前、フジテレビの深夜番組で「ディベート」という番組があった。

当時、バブル経済のまっただ中で、深夜番組がとても勢いのある時代だった。

その頃の思い出については、以前にも書いたことがある

この「ディベート」という番組は、ある論題に対して、チームがそれぞれ賛成派と反対派に分かれ、一定のルールに基づいて討論する、というゲーム感覚の番組である。

一般の視聴者から出場者をつのる。1チーム3人くらいだったと思う。そして、対戦するチームがじゃんけんをして、賛成派になるか、反対派になるかを決める。

ある論題が示され(けっこうくだらない論題が多かったと思う)、まず賛成派の立論、次に反対派の立論、そしてそのあと、それぞれが何度か反駁をし、審査員が勝敗を判定する。立論や反駁の時間が、2分とか1分とか時間が決まっていて、その限られた時間にいかに論理的に相手を負かすか、といった点が勝敗の決め手だった。

見ているだけで、頭が疲れるような番組だった。いま、民放の深夜番組で、こんな実験的な番組はできないだろうなあ。

司会は、当時タレント教授として有名だった、栗本慎一郎という人だった。

栗本慎一郎、知ってるかな?

なんといってもベストセラー『パンツをはいたサル』ですよ!それ以前に、『経済人類学』という本を書いた人でも知られる。むかし、けっこうこの人の本は読んだものだ。のちに彼は、政治家に転身した。

さすがタレント教授だけあって、番組内でのディベートのさばき方はじつに見事だったと記憶する。

一般の視聴者に混じって、お笑いグループ「大川興業」の大川総裁が、何回か出演して、ディベートに挑戦していた。大川総裁は、栗本慎一郎がつとめていた大学の出身者で、番組中では「師弟関係」などとも言われていた。

そんな中で、いまでも覚えているのは、その番組の最終回のときのことだったと思う。

いつも司会ばかりしている栗本慎一郎本人が、いよいよ、「ディベート」に参戦する。

そのときの相手側が、誰だったのかは覚えていない。たぶん一般の視聴者だったと思う。

「論客」として知られる栗本慎一郎である。当然、ディベートは圧勝するだろうと思って見ていた。

しかし、である。

「立論」や「反駁」で、とたんにしどろもどろになり、…「しどろもどろ」というのは大げさな表現かも知れないが、とにかく、制限時間内に自分の意見を言うことができず、しかもその内容は決して明快なものではなく、意外なほどぶざまな結果に終わってしまったのである。

それで、あっけなく負けてしまった。

当時私は、栗本慎一郎を「ディベートの神様」のような存在だと勝手に思い描いていたのだが、そのイメージはもろくも崩れてしまった。

ディベートっておもしろいゲームだなあ、と思った。だって、「論客」といわれる人が、打ちのめされるんだもの。

ただそれは、いまから考えれば、ディベートそのものの面白さではなく、追いつめられた人間の面白さであったように思う。

いきなり論題が与えられ、賛成の立場か反対の立場かをその場で自分の意志とは無関係に決められ、さらに、ごく限られた時間内に立論し、反駁しなければならない。

つまりこれは、一種のスポーツである。

人間、追いつめられたときに、どのようにしてそれをはねかえすか。

これは、ディベートでもスポーツの試合でも、同じだと思う。

そしてそこにこそ、もっとも人間らしい部分があらわれるのではないか、と思うのだ。

誰か、覚えてませんかねえ、「ディベート」っていう番組。

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コメント

何年前だったか、「鼻をかんだとき、ティッシュを見る」ことについて賛成派と反対派に分かれて議論していた番組があったことを思い出しました。
あれは、『ディベート』を参考にしていたのかな、とふと思いました。

投稿: R.I | 2012年10月26日 (金) 10時20分

うーむ。仮に「ディベート」を参考にしていたとしても、かなり本来の意図とは違うものになってしまっていますね(笑)。ディベートの論題は、「それをすることでメリットがあるのかデメリットがあるのか」という観点から作られますから。「鼻をかんだときにティッシュを見る」ことのメリットとデメリットって、何でしょうね?

投稿: onigawaragonzou | 2012年10月26日 (金) 23時01分

確か、「鼻をかんだときにティッシュを見る」ことのメリットは、鼻水の状態で体調が分かるということで、鼻水の種類と体調の関連が述べられ、デメリットはマナーとしてどうかという観点から議論していたように記憶しています。

投稿: R.I | 2012年10月26日 (金) 23時48分

なるほど、それほど本格的ならば立派なディベートですね。ディベートで、もうひとつ大事なことは、「データにもとづいて立論しているかどうか」という点なのだそうで、「鼻水の種類と体調の関連」についてデータを提示しながら立論したということは、これはもう立派なディベートです。

投稿: onigawaragonzou | 2012年10月27日 (土) 00時08分

ディベート、覚えてますよ。出場したかったけど、終了してしまったのが残念です。
栗本さんに勝ったのは、チャンピオン大会の優勝者の茂木秀昭さんです。あと、史上最強戦の優勝者の潮匡人さんとも対戦してましたね。

投稿: | 2013年12月15日 (日) 01時19分

よく覚えておられますね。またこんな番組、あったらいいですよね。やっと時代が追いついたのではないか、と思うのです。

投稿: onigawaragonzou | 2013年12月15日 (日) 20時46分

覚えてると言うよりは、録画したビデオテープが残っております。

投稿: | 2013年12月21日 (土) 23時52分

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