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虫のいい話

10月26日(金)

「営業」の話の続き。

何カ所か「お得意先」をまわると、歓迎してくれるところと、そうでないところがあることがわかる。

応接室に案内してくれてじっくり話を聞いてくれるところもあれば、「早く帰ってくれ」というオーラを出してこられる方もいる。

むろん、それは先方それぞれの事情によるものだから、当然のことである。

早く帰ってくれ、というオーラを出された場合には、当然、「短縮バージョン」でお話しをして、すぐにおいとますることになる。

さて、その「短縮バージョン」でお話ししているときのことである。

案内された部屋はガランとしていて、電気もついていない。

(ああ、これは早く話を切り上げなければならないな…)

と思いながら、必要なことだけをお話しする。

お話ししていると、どこからともなく、ブーンという音が聞こえてくる。

ハエが飛んでいるのだ。

やがてそのハエは、必死に話をしている私の頭頂部にとまった。

私は、電気もつけてもらえない薄暗い部屋で、頭頂部にハエがとまったまま、あまり歓迎されていない話を延々としているのである。

(とうとうハエにまでたかられてしまったか…これはいよいよ帰れということだな)

そう思い、「お忙しいところ、大変失礼いたしました」と深々と頭を下げ、おいとました。

どんなに必死に話をしても、ハエがたかってちゃあ、説得力がないよなあ、と、自分のことが、情けないやら、可笑しいやら、であった。

さて、「営業」が終わり、夕方、職場に戻る。

同僚がやってきた。「今日見たら、これ、メールボックスに入っていたんです」

見ると、とても「厳かな書類」である。

「それ、例の『厳かな書類』じゃないですか!」

「ええ。しかも、2ヵ月遅れで」

「厳かな書類」であるにもかかわらず、実際の日付から2ヵ月も遅れて、しかも、無造作に封筒に入れられてメールボックスに投げ込まれていたのである。

私も、その「厳かな書類」をもらうことになっていた。おそらく私のそれも、私のメールボックスに無造作に投げ込まれているのだろう。

本来であれば、「偉い人」が直接手渡すべきものである。いや、別に直接手渡してもらうことは望んでいないが、少なくとも2ヵ月も遅れて、封筒に乱暴に入れられて、無造作に投げ込まれるのはいかがなものか。

「しかも、これを見てください」と同僚は、その「厳かな書類」を私に近づけた。

「何です?」

「虫の死骸です」

えええええぇぇぇぇっ!!

「虫の死骸がくっついていたんです!」

よく見ると、蚊のような、羽のついた小さな虫の死骸が、「厳かな書類」にくっついているではないか!

想像するがよい。たとえば、「卒業証書」とか「表彰状」に、羽のついた小さな虫の死骸がくっついているようなものである。

どんな状況になったら、「厳かな書類」に虫の死骸がくっついたまま、封筒に入れられることになるんだ?

「なんかもう、情けないやらあきれるやらで…脱力しますよねえ」

「そうですねえ」

私たちはそのていどの扱いなのか、と、2人で大笑いした。

「虫」って、脱力するねえ。

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