つまらない意地
つまらない意地、で思い出した。
高校時代、仲のよかった同じクラスのK君がいた。
高校に入学したときから意気投合して、いつも一緒に早弁(弁当を、お昼休みではなく、2時間目と3時間目の間の15分間で食べてしまうこと)をしたりしていた。
ところが、あるとき、些細なことで、ほんとうに些細なことで、カチンと来たことがあって(いまとなっては、そのきっかけを全然覚えていない。たぶん、はっきりとした理由なんてなかったんだろう)、お互い、まったく口をきかなくなってしまった。
それまで一緒に早弁をしていたのに、それから、別々に早弁をすることになった。
私は、K君くらいしかクラスでは親しい友人がおらず、仕方がないのでひとりで早弁をした。
(こうなったら、向こうが口をきいてくるまで、口をきいてやるもんか…)
この、「こうなったら…」という言葉が出たら、私の意地に火がついた、ということを意味する。
それから、びっくりするくらい、お互い、口をきかなくなってしまった。
いま考えたら、何ともつまらない意地の張り合いなのだが、人間の意地というのは、ひょっとしたら岩をも通す強さなのかもしれない。
その後しばらくたって、なんとなく話をするようになり、以前のような仲のいい友人関係に戻った。そして以前よりも何でも話せる関係になったような気がする。
あの「意地っ張りな自分」は、何だったんだろう?
その後、私もK君も東京を離れてしまったので、もう15年くらいK君とは全然会っていない。
そんなものなのかなあ。
恥ずかしいことに、私は同じようなことを何度もくり返す。高校の部活で親しかったS君と、やはりある時期、ひとことも口をきかないことが続いた。理由は忘れてしまった。
(こうなったら、向こうが口をきいてくるまで…)と、また例の調子である。
その後、またふつうの友人関係に戻り、大学時代には一緒にお酒を飲みに行ったり、彼の就職が決まったときには、ひとりで引っ越しの手伝いに行ったりした。
だがそのS君とも、もう15年以上も会っていない。
そんなものなのかなあ。
大学時代に仲のよかった友人のT君とも、卒業旅行で日本海側を鈍行列車で旅したときに、まだ旅が始まったばかりの段階で、ふとしたきっかけで険悪な雰囲気になり、旅行中、ほとんど口をきかなかった。おかげで、最悪の卒業旅行になってしまった。
(こうなったら…)また始まった。
旅行の最後あたりで、T君とはなんとなく仲直りし、大学卒業後は、彼の結婚式にも呼ばれた。
だがそのT君とも、やはり15年近く会っていない。
やっぱり、そんなものなのかなあ。
…と、ここまで書いてきて、くらーい気持ちになってきた。
どうも原因はすべて、つまらない意地をはるという私の性格にある。
それをなおせば、もう少し楽に生きられるのだが。
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