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ジョークか、本気か

10月29日(月)

午後は1年生向けの授業である。この授業が終わるとすぐに、最寄りの空港から飛行機に乗って関西に行かなくてはならない。明日の朝から、毎年この時期に学生を引率して関西をめぐる「実習」がはじまるのである。

とにかく忙しい、というか、準備もバタバタである。

さて、この1年生向けの授業は、130人くらいが受講している。

最近悩んでいるのは、こっちがジョークのつもりで言った言葉が、かなりまじめに受けとめられているのではないか、と思われることである。

授業のあとの感想に、「先生のおっしゃったあのお言葉は、ジョークなんですか?それとも本気なんですか?」と書かれることもある。

そういう場合、たいていはジョークのつもりでこっちは言っているのだが、本当にそう受けとられているか、不安になってきた。

今日は、こんなことがあった。

「この授業が終わったらすぐに私は、専門課程の実習の授業で、関西に行くんです」と私。この実習は、2年生以上が対象なので、話を聞いている1年生には、その実習がどんなものか、イメージがわいていないようである。

「私は大金持ちなので、飛行機で行くんです」と私。この「私は大金持ちなので…」というフレーズは、私が好きでよく授業で使う、ジョークのフレーズである。

たとえば、「私は、大金持ちしか持っていないというiPodを持っているんですよ」とか、「私は大金持ちなので、インターネットというのを使うことができて、しかもネットサーフィンなんてのもできるんですよ」とか。

別に大金持ちでなくても、iPodを持つことはできるし、インターネットを使うこともできる。何より私は、決して大金持ちなどではないのだ。むしろむちゃくちゃ仕事をしているわりに、ぜんぜんお金が貯まらない方の人である。

私のことをわかっている専門課程の学生は、「こいつ、また冗談を言ってやがる」と、呆れつつも、それなりにこのジョークを受けとめてくれるのだが、私のことをよく知らない学生は、「この先生、大金持ちなんだ…」と、勘違いしてしまうようなのである。

その上、私は続ける。

「でも学生にとって飛行機はお金がかかりますから、学生たちはみんな深夜バスで行くんです。それで、朝、現地集合するんですけど、まず集合場所にたどり着くことが肝要ですね。万が一たどり着けなかったら、単位はあげられませんからね」

これもまた、ジョークである。しかし、やはりこれも本気にしてしまうようである。

授業が終わってから、書いてもらった感想を見ると、こんなことが書いてあった。

「飛行機なんて乗ったことがないので、大金持ちの先生がとてもうらやましく思います。たどり着けなくて単位をもらえないのも辛いと思うので、学生も飛行機に乗せてあげるくらいの自腹を切ったらどうですか?」

……。

もう、本当にごめんなさい、あれは、ジョークだったんです。

ところでこの感想も、ジョークなのか?それとも本気なのか?

…よくわからなくなってきた。ジョークって、本当にむずかしい。

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