バンド名は「キョスニムと呼ばないで!」
10月21日(日)
思い起こせば、今年の4月のことであった。
ナベサダさんのライブを聴きに行って、久しぶりにアルトサックスを吹きたくなった。
そして5月の連休のこと。滞在先の高原で、素人のオジサンたちが、デキシーランド・ジャズを演奏していたのを見て、15年ぶりに、アルトサックスを本格的に練習しよう、と思った。
あれからほぼ半年。大学祭2日目。今日はそのライブの本番である。
まさか、本当にバンド演奏が実現するとは思わなかった。
ベース担当の3年生のAさんが、人集めをしてくれて、ギター、ドラムス、キーボードをやってくれる学生をさがしてくれた。
全員で練習をしたのは、9月に2回。10月に1回の、計3回だけである。
不安だったので、今日の午後1時。1時間だけ、個人練習をした。
しかし、ぜんぜん自信がない。
本番では緊張して、指使いを全部忘れてしまうのではないか、と思った。
うちのバンドは、3時半頃、演奏開始予定である。
3時頃に会場の教室に着くと、ギターのO君が、
「ちょっと時間が押してます。うちらは、次の次です」
と、扉の前に貼ってあるタイムスケジュール表を指さした。
見ると、「キョスニムと呼ばないで!」というバンド名が書いてあった。
「せっかくだから、中で聞いているよ」と、会場となる教室の中に入って、出演中のバンドの演奏を聞いていた。
しかし、緊張で、まったく余裕がない。
それに加え、若者たちの演奏は、かなり盛り上がっているではないか。
(ああ、出演しようなんて考えるんじゃなかった)と、ひどく後悔した。
出番が近づくにつれ、知り合いが次々とやってくる。
今回私は、自分が信頼する人だけに、「聞きに来てください」と声をかけた。かなり押しつけがましかったので、迷惑だったかもしれない。
せっかく貴重な休みの日に来ていただいた人たちの前で、ヘンな演奏はできない、と、さらに緊張が高まる。
前の出演バンドの演奏が終わり、いよいよ私たちの出番である。
ステージのところで音出しをしていると、前から数列目の席に、サングラスをかけた、明らかに怪しい不審者のようなおじさんが、こっちをじっと見て、ノートパソコンの画面をこちらに向けている。
こぶぎさんだ!
こちらに向けられたノートパソコンの画面を見ると、その画面には、
「교수님 짱!」(キョスニム、最高!)
と、メッセージが書いてあるではないか!
くだらない!くだらなすぎる!
本番直前、思わず笑ってしまい、これで緊張が少しだけ和らいだ。
そして、ベースのAさんのMCにより、いよいよ演奏開始である。
演奏した曲目は、以下の通り。
1,ナイス・ショット(渡辺貞夫)
2.スウィート・マジック(MALTA)
3.モーニング・フライト(MALTA)
どれも、私が高校時代に、日の目を見ないだろうなあ、と思いながら練習していた曲である。
1曲目はもう、ガッチガチである。緊張のあまり過呼吸みたいな感じになって、とてもまともに吹くことはできなかった。
2曲目のスウィート・マジックあたりから、少し余裕が出てきた。
アドリブ・ソロが終わり、客席の方を見ると、こぶぎさんが、相変わらずノートパソコンの画面を私の方に向けて、
「MALTA 짱!」(MALTA、最高!)
とか、
「よっ!ジャズ大名!」
などというメッセージを私に見せている。
どうも見ていると、こぶぎさんは、ノートパソコンの画面に映しだすメッセージを毎回変えるのに一生懸命で、曲なんか聴いちゃいないようであった。
緊張が続いたまま、3曲が終了。
この間のことを、夢を見ていたような感じがして、あまりよく覚えていない。
みんなは、どんなふうに聞いたんだろう?怖くて、確認することもできない。
場違いな演奏で、退屈で、居心地が悪くて、それでそのまま帰っちゃったんじゃないだろうか、とか、さまざまな妄想が頭をよぎった。
ともあれ、私のわがままにつきあってくれた学生たち、聴きに来てくれた方たちには、感謝してもしつくせない。
夕方、東京に帰る妻を車で駅まで送ったあと、一人で運転して帰る車の中で、市川森一脚本・西田敏行主演のドラマ「淋しいのはお前だけじゃない」の、ラストシーンのセリフを思い出した。
大衆演劇に打ち込んでいた主人公の沼田(西田敏行)をはじめとする面々が、最終回で、それぞれ現実の社会に戻っていく。そのとき、沼田はしみじみとつぶやく。
(いい夢、見たなあ)
さあ明日からまた、現実がはじまる。
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コメント
裁判長 これより、裁判員による評議を始めます。
右陪席裁判官 この評議では事実を認定し、被告人が有罪か無罪か、有罪だとしたらどんな刑にするべきかを裁判官と一緒に議論し、決定することになります。
左陪席裁判官 評議を尽くしても意見の全員一致が得られなかったとき、評決は多数決により行われます。ただし、裁判員だけによる意見では被告人に不利な判断をすることはできず、裁判官1人以上が多数意見に賛成していることが必要です。
裁判長 有罪か無罪か、有罪の場合の刑に関する裁判員の意見は、裁判官と同じ重みを持ちますので、しっかりとした評議を望みます。
-------
裁判員1号 でも、被告は自分の出番の前から、会場出入口近くに座って、捜査員の会場進入を邪魔していたんですね。
裁判員2号 おかげで、少なくとも三回は、それに気づいた捜査員達が、廊下を走って階段踊り場付近まで退避せざるを得なかったと、検察側は言っていましたね。
裁判員1号 被告の演奏後も、K-POPファンを装って接近した捜査員を見破ったのか、被告が出口に先回りして待ち構えていたため、その捜査員は舞台側の関係者出口から辛くも脱出したものの、別の捜査員達と、はぐれてしまって、結局、いつもの醤油スパのおいしい店で一人飯して帰ったんでしたっけ。
裁判員2号 公務執行妨害も追加されますね、これじゃ。
裁判員3号 はい、裁判長。
裁判長 どうぞ。
裁判員3号 公判での争点は、被告に文化祭のセンターステージを狙う野心があったかどうか、ということでした。
右陪席裁判官 確かに、今回は教室での慎ましやかなステージでしたが、もし被告が文化祭のセンターステージでも演奏するつもりだったとすれば、これは「大名準備罪」の構成要件となります。
左陪席裁判官 「大名取締法」第16条違反ですね。大名取締法とは「大名」のように自分勝手にふるまう大人から青少年を守るための法律です。検察・弁護双方の弁論も、まさしくここがポイントとなっていました。
裁判員3号 私は、被告はセンターステージを狙っていたと思います。
裁判長 なぜそう思うのですか。
裁判員3号 だって被告の演奏がうますぎますから。例のスタジオでどれだけ練習したんだか。
裁判員4号 しかも選曲もガチンコだ。「ナベサダ」1曲に、「MALTA」はそれより多い2曲もだ。2012年の若者の歓心を、これっぽっちも買おうとはしていないところは、むしろ清々(すがすが)しささえ感じます。
裁判員1号 しかも一曲目は「フュージョン」というより「ファンク」だし。
裁判員2号 普通の選曲なら、1曲目にはチェッカーズの「あの娘とスキャンダル」(映画「TANTANたぬき」主題歌)でも演奏しかけて、「あれ、タヌキの曲じゃ「ナベサダ」じゃなくて、「アベサダ」になっちゃうぜ(バンドメンバーは総コケ)」、くらいのボケは入れてくるもの。
裁判長 神聖な裁判所で、下ネタはご遠慮ください。
裁判員3号 それに被告の衣装だって、タキシードに黒の蝶ネクタイなんて、「チョメチョメ」でおなじみの山城新伍じゃあるまいし。
裁判員4号 あれは、ロンドン五輪開幕式のジェームス・ボンドを意識したギャクなのでは。
裁判員3号 いや、出オチであれば、「大人の塗り絵」のような、衣冠束帯スタイルで登場するでしょう。そのために、わざわざ前日のブログで「リユース」の記事を書いて、ネタ振りをした訳だし。
裁判員2号 やはり、派手な柄シャツに白のDCブランドのスーツでないと、「MALTA」の曲とは観客は気づきませんよ。
裁判員1号 少なくとも、黒サングラスと口ひげは必須でしょう。
裁判員5号 はい、裁判長。
裁判長 どうぞ。
裁判員5号 被告は、文化祭のステージを我が物にしようなどとは一切思っていなかったと思います。
左陪席裁判官 なぜ、そう思うんですか。
裁判員5号 被告の性格からして、もしセンターステージを目指すのであれば、せめてバンドメンバーにはレジュメを渡して、「昭和のフュージョンとは何か」について、みっちり講義を行うはずです。でも、そうではなかった。
裁判員1号 そういえば、曲名の説明で、わざわざ「インスト」だって言ってたり、被告以外のメンバーは誰の曲を演奏するかも、よく分かっていないようでした。
裁判員5号 ナベサダもMALTAもサックスを吹いてるんだから、歌が歌えるはずがない。ということは、当時の映像も見せないままライブに臨んだということになります。センターステージを目指す者が、そんな手抜かりをするものでしょうか。
裁判員3号 ということは、被告の証言通り、今回のライブはボランティア学生をねぎらい、喜ばせるための真摯なパフォーマンスだった、ということですね。
裁判員5号 そうです。
裁判員1号 はじめから思ってたんだ。あんな学生想いの先生だった被告が、裏では「大名になりたい」なんて思っているはずがないって。
裁判員2号 無罪だ。無罪で評決だ。
(一同うなづく)
裁判員6号 あのう。
裁判長 何ですか。
裁判員6号 私は、そうは思いません。
裁判員5号 今さら、何を言うんですか。
裁判員2号 ほお、理由を聞かせてもらおう。
裁判員6号 だって、被告ばかりがソロをとって、ドラムスはおろか、ギターにもキーボードにも、全くソロ演奏をさせてなかったじゃないですか。3曲ともそうでした。
(一同、押し黙る)
裁判員6号 確かに原曲のソロパートはサックスしかなかったことは、既に証拠として採用されています。でも、判例で見た例の「大名」ですら、自分以外のメンバーに一通り、ソロを取らせてあげていたのです。
(しーん)
裁判員6号 ところが、被告にはその素振りすらなかった。これは、まさしく「大大名」の振る舞いではありませんか。
裁判長 (やや間をおいて)真実が明らかになったようですね。それでは評決に移りましょうか。
----
こぶぎ てな感じの台本で、今度の模擬裁判はぜひ。
実行委員 棄却の上、差し戻します。
投稿: こぶぎ | 2012年10月22日 (月) 02時01分
私 しかし、気づかなかったなあ。あの人が捜査員だったなんて。
弁護士 私もです。てっきり、K-Popファンのこぶぎさんが間違って紛れ込んじゃったんじゃないか、と思っていましたから。
私 あの方、演奏が終わるとすぐにいなくなってしまったでしょう?
弁護士 ええ、あなた、あの方に挨拶しようと思われたんでしょう?
私 あまりにもすぐにいなくなってしまったんで、きっと退屈な演奏で、居たたまれなくなって帰ってしまったんだと思いました。
弁護士 また始まった、あなたの被害妄想が。でもたしかに、親しい友人だからといって、全部が全部、好意的というわけではないでしょうからね。
私 やめてくださいよ!また落ち込んでしまう。
弁護士 しかしこんどの公判は、かなり難しいですなあ。
私 やはりそうでしょうか…。
弁護士 いちばんマズイのは、あなたがそのサークルの顧問であるということです。
私 でも私は、音楽サークルの顧問をするのが、長年の夢だったんですよ!
弁護士 それじたいはけっこう。だが、その顧問の立場を利用して、今回のライブに出演したと受けとられかねません。そうなると、私たちには不利です。
私 やはり「大名準備罪」ですか?
弁護士 いや、事と次第によっては「大名罪」になる可能性もあります。それも、いちばん重い「ジャズ大名罪」です。
私 えええぇぇぇぇ!
弁護士 その上ですねえ、あのバンドのメンバーには、あなたの指導学生が2人もいたというではありませんか。
私 はぁ…。
弁護士 こうなるともう、弁護の余地はありません。十分に「ジャズ大名罪」が成立してしまいます。
私 もうダメでしょうか…。
弁護士 いや、幸いなことに、裁判員たちはこの事実に気づいてはいません。このまま逃げきりましょう。
私 まったく、えらいことになっちゃったなあ。こんなことなら、出演するんじゃなかった。
弁護士 身の程を知れ、ということですよ。
私 肝に銘じます。
投稿: onigawaragonzou | 2012年10月23日 (火) 00時37分
わたくしめが「一人ランニングマンごっご」をしたのは、模擬裁判ネタでブログコメントを書くためとか、打ち上げ会を邪魔しないという遠慮とかもあったのです。が、それ以外に、もう一つ理由があったわけで、
むろん よぎそ はんぐる あんほ あにみょん あんさぬん いえぎにか、あぷろ たし まんなるて、まる はるす いぬんごえよ。きょすにむ え さっくす よんじゅ てむね あにむにか、こっちょっじ ませよ。
はじまん、ぷんみょんい でみょん、でみょん らご よぎそ まに さっそそ、うり けんちゃんにか、ちょんまる。
投稿: こぶぎ | 2012年10月25日 (木) 06時37分
ちゃる あらっそよ。
こぶぎそんせんにめ てへそまん まるはんごし あにご たるん そんにむちゅんえど いろん ぶんどぅり いそっすにか いろっけ そっそよ。
くろにか しんぎょん すじませよ。
たうめ きへがいっすみょん ぴみるいやぎ へじゅしぎ ぱらむにだ。
投稿: onigawaragonzou | 2012年10月26日 (金) 00時24分