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直接会って話をする

10月26日(金)

1年に1度か2年に1度の割合で、「営業」(外回り)をやらされる。

この日記をひもとくと、前回は2年前の同じ時期に「営業」をしていた。

私が最も苦手とする仕事だが、じつは私には持論があって、「苦手だと思う」からといって、その仕事に向いていない、とは限らない。むしろ、「自分はこの仕事に向いている」と思いこんでいる人ほど、危険である。

まあそんなことはともかく。

いずれも、私にとってははじめて訪問する「お得意先」ばかりだが、毎年、同僚が代わる代わる「営業」に来ていたので、先方はよく知っていた。

うかがうと、先方は、「おたくだけですよ。こうやって、毎年わざわざ来てくださるのは」と言ってくださる。「おかげで、私どもでは、あなた方の会社の評判がいいです」

実を申すと、私は、慣れない人間がこんなふうに「営業」をして、どれだけの効果があるのだろう、と半信半疑だった。膨大なコストもかかるし、それにそもそもが「武士の商法」である。だが、わざわざ訪問することにより、好印象を持ってくれるという効果もあるのだ、と、今回初めて知った。

やはり、直接会って話すというのは、大事なことなのだ。

映画「七人の侍」の中で、侍のうちの1人である平八も言っているではないか

「話すというのはいいものでな…どんな苦しいことでも、話をすると少しは楽になる」

それで思い出した。

先日、ある大手出版社から、ウィークリーブックの大型シリーズを来年に刊行するので、その中の1冊に、1800字ていどのコラムを書いてほしい、という依頼が来た。

ついては、直接うかがって説明したい、という。

えええぇぇぇぇぇっ!!たかだか1800字のコラムを書くだけなのに、東京から新幹線に乗って3時間もかけて説明しに来るのか???

さすが、大手出版社は違うなあ。

しかもなんと、実際に来たのは、そのウィークリーブックを統括する「デスク」と、私が執筆する号の担当編集者の、2人も来たのである。

交通費だけで4万円もかかっているぞ!

ずいぶんコストのかかる1800字である。

だが、1時間半ていど、2人の方と話をしているうちに、だんだんと構想が湧いてきた。

「では締切までに原稿をお願いします」といって、お二人が帰ったあと、私はその日のうちに1800字のコラムを書き上げ、出版社に送ったのである。締切は1ヵ月ていど先なのに、である。

実際に会って話すということは、さまざまな効果をもたらす。まず、顔を見ることで警戒心が解かれ、安心する。次に、話をしていくうちに、考えがまとまってくる。さらに、わざわざ来てくれた、ということで、その仕事を優先させよう、という意識がはたらく。

…なるほど、だからお金のある大手の出版社は、編集担当者がやたらと直接会おうとするのか。

じつは私には、1800字のコラムを書くよりも前に出さなければならない原稿が山ほどある。矢のような催促を受けながらも、気が重くてなかなか進まないのである。

電話やメールの催促ではなく、直接会って催促してくれたら、少しは書く気になるんだがなあ。

…なんてことを偉そうに言ったら、「ふざけんな!お前ごときのために電車賃使って催促に行けるか!」と言われるだろうなあ。

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