債権者、全員集合
12月15日(土)
ある漫才コンビの1人が、あちこちからお金を借りているが、いっこうに返す気配がない。
業を煮やした債権者たちが、「劇場に行けば、彼は舞台で漫才をしているから、確実につかまえることができる。舞台袖で待ちかまえていて、漫才が終わって舞台袖に戻ったら、彼の身柄を拘束して、お金を取り立てよう」ということになった。
さて、その漫才師は、舞台で漫才をしている最中、舞台袖に債権者たちが集まっていることに気づいた。
そこで漫才が終わると、その漫才師は、舞台袖に戻らずに、そのまま舞台から客席に降りていって逃げていったという。
…むかし聞いた話である。
今日から2日間、東京の大きなホールで、国際シンポジウムのパネラーとして出演することになった。
開始前、控室で待っていると、私を呼ぶ声がした。
「どうもごぶさたしております。Mです」
Y社のMさんである。
「今日のシンポジウムのお話、楽しみにしております」
まいったなあ。Mさんには、数年越しの原稿を待ってもらっているのだ。
「今日あたり、お原稿をいただけるものと思ってまいりました」Mさんが続ける。
「いや、その…このシンポジウムのことで頭がいっぱいでして…」
「そうですか。いずれにしても、ここに来ればお会いできると思いまして…。お原稿の方も、首を長くして待っております」
「わかりました。年末年始返上でがんばります」
ドッと汗が出た。
開始時刻が近づいたので、控室を出て会場となるホールに向かうと、こんどはHさんが来た。
「どうもご無沙汰しております」じつに久しぶりである。
「今日来たらお会いできると思って」とHさん。「1月、よろしくお願いします」じつは1月に、Hさんが主催するシンポジウムで発表することになっていたのだ。
「原稿の方もお願いします」Hさんが続けた。
「す、すみません…。原稿がまだ…」と私。「たしか締切は…」
「今日です」とHさん。「なるべく早く出してください」
「わかりました。なるべく早く出します」
「今日のお話、楽しみにしております」
まいったなあ、と思い、会場となるホールに入ると、こんどは、S社のSさんが来た。
「ご無沙汰しています」私は挨拶した。
「あのう…。こんなときにこんなことを申し上げるのは心苦しいのですが…」
だいたい予想はついた。
「例の原稿、今月末までにお願いします」
「わ、わかりました」
かくして、シンポジウムで登壇するプレッシャーに加えて原稿催促のプレッシャーが重なり、生きた心地のしないシンポジウムが始まったのであった。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 書ける範囲で書いています(2025.07.08)
- 発音なんて気にならない(2025.06.26)
- 高校時代の恩師との対話(2025.06.22)
- 健常者の理屈(2025.06.01)
- 僕がブログを書かなくなった訳(2025.05.11)
コメント