モギ裁判は、歌舞伎だ!
12月7日(金)
昨日に引き続き、職員のSさんに手伝ってもらいながら、朝からポスターとチラシ作り、そして発送作業である。
夕方5時過ぎ、ようやく終わり、仕事部屋に戻ると、携帯の「緊急地震速報」がなり、少し長い揺れが続き、やがておさまった。
沿岸部の津波が心配になったが、何もないことを祈りつつ、夕方から行われる「モギ裁判」会場に向かう。
職場の学生たちが行っている、年に1度の「モギ裁判」には、2年ほど前から見に行っている。理由は二つほどある。
ここ最近、自分で職場のイベントを企画するようになって、何よりも望むことはお客さんが入ることである。自分の企画したイベントの客の入りばかりを心配するのではなく、頑張っている催しには、自分もまたお客として、少しでも観客数に貢献しよう、というのが理由の一つ。
もう一つは、素直に、「モギ裁判」は見ていて面白いからである。知っている学生は1人もいないので、当日券を買って見に行っているのは、たぶん私くらいなものである。
うちの学生たちが行う「モギ裁判」は、芝居仕立てになっていて、裁判をとりまく様々な人たちの人間模様も描き出す。
今回は、「過労自殺」をめぐる訴訟がテーマである。前回2回が刑事裁判だったので、民事裁判を見るのは、これが始めてである。
前にも書いたが、演じる学生たちは、日常で喋る言葉とは違い、相当ゆっくり、はっきりと喋っていて、そのセリフ回しは、かなり仰々しい。歌舞伎のセリフ回しのような感じである。
これは考えてみれば当然の話で、出てくる用語は難しい法律用語なので、相当ゆっくりと話さなければ、観客に伝わらないのである。
見はじめた最初の頃は少し違和感をおぼえたが、これは歌舞伎なのだ、と思って見るようになってからは、むしろ心地よいものになっていった。
そう、モギ裁判は歌舞伎なのだ!
とくに、今回裁判長を演じた2年生のM君は、声がよく通り、歌舞伎役者のような整った顔立ちで、セリフ回しも完全に歌舞伎みたいになっていたもんな。思わず「中村屋!」とか、声をかけたくなってしまったくらいだ。
今回は総じて、学生の演技力が素晴らしかった。とくに過労自殺した会社員の妻を演じたAさんの演技は胸を打ち、不覚にも涙を流してしまった。原告側証人や被告側証人を演じた学生も、迫真の演技だった。
そんな中で、私の心をガッチリとつかんだのは、2年生のS君が演じた、被告代理人(弁護士)である。
熱演していた他の学生たちとくらべると地味な役回りだったが、企業の顧問弁護士にありがちな「慇懃無礼さ」「冷酷さ」を、見事に演じていた。この役を引き受け、しかも嫌味なく演じられたのは、喝采ものである。
だいぶ前に放映された三谷幸喜脚本のドラマ「合い言葉は勇気」(フジテレビ、2000年)の中に、私の大好きなセリフがある。
やはり民事訴訟をテーマにしたドラマなのだが、ドラマの最後の方で、原告代理人の弁護士・赤岩一孝(杉浦直樹)と、被告代理人の弁護士・網干頼母(津川雅彦)が法廷で論戦するシーンがある。
実は赤岩は、若い頃は有名な人権派の弁護士で、網干のかつての恩師だった。やがて網干は師である赤岩と袂を分かち、今では大企業の顧問弁護士となったのである。この法廷は、その2人の、久しぶりの再会の場だった。
公判が終わり、赤岩が網干に語りかける。
「久しぶりに法廷の君を見たよ。
相変わらず、君の言葉は冷たいな。正確だが、実に冷たい。
だから、大企業の顧問弁護士どまりなんだ」
このセリフを杉浦直樹が語ると、実にかっこよい。かっこよいのだ!たぶん三谷幸喜がこれまで書いた数あるセリフの中で、一番好きなセリフかもしれない。
とくに、「だから、大企業の弁護士どまりなんだ」という部分がしびれるねえ。
(ちなみにこのあと、言われた網干は苦笑いしながら「…『どまり』か…」とつぶやく。)
「だからあなたは、○○の○○どまりなんだ」ってセリフ、一度誰かに言ってみたいもんだねえ。
そんなことはともかく、S君の演技を見ていて、このセリフを思い出したのである。
ということで、約2時間半、楽しませていただきました。
…とまあ、こんなに一生懸命に感想を書いたところで、誰に伝わるわけでもないのだが。(原稿零枚)
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