福岡の大人飯
12月22日(土)
昨日の居酒屋の席で、「ソウル・イントロからザ・チキン」の話になった。
その曲の思い出については、数回前のブログに書いたのだが、コバヤシはまだそれを読んでいなかった。
その話をすると、コバヤシが言った。
「そういえばつい最近、いま俺が所属しているビッグバンドで、『ソウルイントロからザ・チキン』を演奏したぞ」
「へえ」
「俺がぜひやりたいと頼み込んだんだ」
「テナーサックスのソロは?」
「最初の『ソウル・イントロ』のソロだけは、ぜひ自分にやらせてくれと頼み込んで、やらせてもらった」
なんとコバヤシは、高校時代に私に譲った「ソウル・イントロ」のソロを、25年経って、ようやく自分のものにしたのだった。
「おい、明日の昼飯だけどな」とコバヤシ。明日(土曜日)は午後3時の飛行機で東京に向かうことになっていた。昼飯を一緒に食べよう、ということになっていたのである。
「水炊きの店、予約できなかった」
福岡は水炊きが有名で、昼は水炊きを食べようということになっていたのであった。だがいまは忘年会のシーズンで、予約がいっぱいだったというのである。
「その代わり、といっては何だが、俺の家で美味い魚でも食わないか?」
「いいねえ」
ということで、今日(22日)のお昼は、コバヤシの家で、コバヤシの手料理をごちそうになることになった。
ホテルをチェックアウトして、お昼ごろ、コバヤシの家に行く。
「ちょっと待ってくれ、もうすぐできあがるから。待っている間に、このぐい飲みの中から、気に入ったものを選んでいてくれ。料理と一緒に、九州の地酒も少し飲んでもらうから」
すべて唐津焼である。写真で一番手前のぐい飲みを選び、これで少しだけ九州の地酒をいただくことにした。
音質のいいスピーカーから流れる、ナベサダさんの音楽を聴きながら待っていると、
「おまちどうさま」
と、いよいよ料理の登場である。
いずれも、すべて唐津焼の皿に盛りつけられている。
サバと鯛の刺身盛り合わせ。サバは長崎、鯛は福岡でとれたものである。サバは魚屋で1匹をさばいてもらったのだという。
サバをちょっと炙ったもの。唐津焼の皿もすばらしい。
熊本産の馬刺し。くどいようだが、皿もすばらしい。
カブとブリの煮付け。カブがめちゃくちゃ美味しかった。ブリも脂がのっていた。こんど自分でも作ってみよう。もちろん器(うつわ)は唐津焼である。
カブの葉っぱの部分と皮の部分、つまり、煮付けで使わなかった部分を浅漬けにしたもの。このあたりの細かな気遣いが、コバヤシの真骨頂である。
そして最後。サバの刺身をゴマであえたもの、つまり「ごまさば」を、ごはんの上に乗せて食べる。
「すげえなあ」
味も最高である。
考えてみれば、手料理をふるまってくれる友人なんて、まわりを見渡しても、コバヤシくらいなものだ。
もっとも、これだけの料理の腕を持つ友人が、そもそもいない。
もちろん、焼き物と料理が趣味である、という要素が大きいのではあるが、こいつに美味いものを食わせてやろう、こいつと一緒に美味いものを食おう、という思いがなければ、成り立ち得ない関係である。
親しい関係、というのを突きつめていくと、最終的には美味しい食事に対する価値観の共有、というところに行きつくのではないか、と思う。
最後のサバめしを食べ終わると、あっという間に出発の時間になった。
「もう少し時間があれば、唐津に案内できたんだけどな」地下鉄の駅まで見送ってくれたコバヤシが言った。
「また来るさ」
地下鉄は空港に向けて走り出した。
ということで、今回も、唐津観光は、お預けである。
| 固定リンク
「コバヤシ」カテゴリの記事
- 大阪のバーの夜(2023.01.21)
- 新大阪再会(2022.11.20)
- 表現力について(2022.10.28)
- 人生のメリーゴーランド(2022.10.26)
- 食を巡るご縁(2022.08.23)
コメント