とんだホワイトクリスマス
12月25日(火)
お昼に終わるはずの午前中の会議が、昼食休憩をはさんで午後2時まで続いた。
また一つ、仕事が増えることになるらしい。仕事というのはこうやって増えていく、という見本のようなものだ。
会議が終わると、外はすっかり大雪である。
(まったく、とんだホワイトクリスマスだ…)
仕事部屋に戻り、2時からは、来訪する学生への対応が続き、あっという間に夕方である。
(いったい自分の仕事は、いつになったら始められるんだ?)
だんだん憂鬱になってきた。
今日はクリスマスか…。
クリスマスといっても、何の感慨もないが、若い頃、毎年クリスマスの日にやると決めていたことが、1つあったことを思い出した。
それは、毎年この日には、「YENレーベル」というレーベルが出した「We Wish You A Merry Christmas」(1983年)というアルバムを聴く、という習慣である。この習慣は、若い頃の、ある時期まで続いた。
このアルバムは、「YENレーベル」に所属している細野晴臣、高橋幸宏、越美晴、立花ハジメ、戸川純、上野耕路、それに他のレーベルの大貫妙子、ムーンライダース、伊藤銀次、ピエール・バルーなどが参加した、クリスマスアルバムである。
参加しているミュージシャンだけでもすごいが、さらにすごいのは、このアルバムは、単に各ミュージシャンの過去に発表した楽曲の寄せ集めではなく、このアルバムのために、「クリスマス」をテーマにしたオリジナルの楽曲を提供している、という点である。
おそらく日本で、クリスマスをテーマにしたアルバムとしては、これを越えるレベルのものはないであろう。それくらい、奇跡の1枚、といってよい。収録曲は次の通り。
1..25Dec. 1983/細野晴臣
2..銀紙の星飾り/ムーンライダース
3.BELLE TRISTESSE/越美晴
4.Prelude et Choral/上野耕路
5..降誕節/戸川純
6.Ce jour La・・・・・/ピエール・バルー
7.祈り/大貫妙子
8.ほこりだらけのクリスマス・ツリー/伊藤銀次
9.WHITE AND WHITE/立花ハジメ
10.ドアを開ければ/高橋幸宏
どれも素晴らしい。何が素晴らしいって、「クリスマス」に対して、誠実に向き合った楽曲ばかりである。概してマジメな曲が多いのである。
このアルバムが発売された1983年は、バブル経済がはじまる以前である。クリスマス歌謡は、バブル経済期以降、大衆を煽動する役割をはたしたと思われるが、このアルバムは、それらとは一線を画しているように思う。だから、クリスマスの時期になっても、これらの曲が巷に流れることは、全然ないのである。
その点、すごいのは、ユーミンの「恋人がサンタクロース」である。この曲が作られたのは1980年だが、1987年の映画「私をスキーに連れてって」の挿入歌に使われてから、バブル期以降のクリスマスの定番曲となった。ユーミンの「時代を先読みする力」には、舌を巻くほかない。
ちなみに、ユーミンの「恋人がサンタクロース」と、このアルバムに収録されている大貫妙子(ター坊)の「祈り」を、聴きくらべてみるとよい。同じクリスマスをテーマにした歌でも、こうも切り口が違うものか、と驚かされる。「ユーミンの大衆性、ター坊の抽象性」「体育会系のユーミン、文化系のター坊」という対立が、これほど鮮やかにあらわれた事例はない。
たぶん、こういうのを「隠れた名盤」という。
久しぶりに、CDを探しだして聴いてみるか。
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