ホール・マジック
12月15日(土)
この週末2日間はなんとも気が重かったが、一つだけ楽しみにしていたのは、会場となるホールのことであった。
都心のど真ん中にあるこのホールは、観客を500名収容できる立派なもので、しばしば落語会なども行われているホールである。
子供の頃、テレビで落語の中継などを見ると、「○○○ホールにて収録」というテロップが出ることがあり、それでこのホールの名前を知ったのだった。
「名人」と呼ばれた落語家が演じた舞台と同じ舞台に立てる、というのは、めったにあることではない。
1日目が終わり、夕方からはレセプションである。
私よりかなり年上の、S先生が近づいてきた。
「あなた、話が上手いねえ」
会うなり私に言った。
私はこの日40分間、壇上で話したのだ。
「ありがとうございます」
「本当に上手いよ。ふだん、こういう場所ではあなた、おとなしいでしょう。でもお話しはわかりやすかったし、話すスピードも速すぎず遅すぎずで、聞きやすかったよ。ああいう場所で話すの、慣れているんだねえ」
「とんでもないです。そんなことはありません」
ひたすら恐縮した。
それにしても不思議である。こんなにほめられたことは初めてなのだ。
それに、S先生は、私の発表を、これまで何度も聞いたこともあるはずなのだが、今までそんなことを言ってくれたことはなかった。
S先生は、レセプションに同席していた妻にも、私の話のことをほめたらしい。
「不思議だねえ」と妻。「いつもと同じ調子で話しているのに、どうしてこんなにほめられるのかねえ」たしかにそうである。
そればかりではなかった。何人かの人にも、同じようにほめられたのである。
…と書くと、まるで自慢話をしているようだが、それにつけても不思議なのは、なぜ、ふだんと同じように話しているにすぎないのに、そんなにほめられるのか?まったくもって、よくわからない。
しかし、2日間このホールにいて、なんとなくその理由がわかってきた。
私だけではない。舞台に上がった人、みんな、話が上手なのである。
正確に言うと、上手に聞こえるのである。
ひょっとして原因は、音響設備にあるのではないだろうか。
伝統ある都心のホールだから、音響設備も一流である。音質管理や音量調節は、すべて舞台裏でプロが行っている。つまり最高の環境のもとで、私たちは喋っているのである。
たしかに、こんな環境のもとで落語を聴けば、より面白く聞こえるだろうなあ。
結論。上手に話す秘訣は、最高の音響設備のもとで話すことである。
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