8号のバースディケーキ
1月7日(月)
今日は誕生日。例によって、「誰にも言わない作戦」。
午前、妻が私にメールの返信をしてきたついでに、
「誕生日って、明日でした?今日でした?とりあえずおめでとうございます」
と書いてきやがった。
まあ昨年はすっかり忘れられていたから、それにくらべたらマシである。
今年は海の向こうからのお祝いメッセージもない。
ということで、妻はギリギリ合格。あとは全員不合格。
…と思っていたら、夕方5時、3年生のTさんが仕事部屋にやってきた。
見るとTさんだけではない。3年生の女子が8人もいるではないか。
「あけましておめでとうございます!そして誕生日おめでとうございます!」
Tさんは、大きなケーキを持ってきていた。
「どうして、私の誕生日が今日だって知ってたの?」
「だって先生、授業で言ってたじゃないですか」
…記憶にない。よっぽど祝ってもらいたくて、無意識に口をついて出たのだろうか。
「ハッピーバースディの歌を歌った方がいいですか?」3年生のTさんが聞いた。
「そりゃあ歌ってもらいたいねえ」
「でも、近所迷惑になりませんか」
「べつにたいしたことないでしょう」
8人でハッピーバースディの歌を歌い始めた。いざ歌を歌ってもらうとなると、めちゃくちゃ恥ずかしい。
「ずいぶん大きなケーキだねえ」
「これ、8号です」
「8号!!??こんな大きいの1人では食べきれないよ」
「あたりまえです!そのためにケーキ用のナイフと人数分の紙皿を持ってきましたから」
なあんだ。たんに私の誕生日にかこつけて、ケーキを食べたかっただけなのか。
「仕事部屋ではスペースがないから、1階のロビーに行きましょう」
1階玄関のロビーに移動した。
「ろうそくは?」
「あるにはありますけど、火をつける道具がありません。ろうそくをつけますか?」めんどくさいなあ、という感じで、Tさんが言う。
「そりゃあ、せっかくだからろうそくを吹き消したいさ…。そうだ、事務室のK係長はタバコを吸う人だから、ひとっ走りして、ライターを借りてくる!」
えええぇぇぇぇ、めんどくさいなあ、早くケーキを食べたいのに!という学生たちの顔をよそに、事務室に行って、ライターを借りてきた。
…一番ノリノリなのは、オレなんじゃないか?
10本のろうそくをケーキに立て、ろうそくに火をつける。
「早く吹き消さないと、ロウがたれてきますよ!」学生たちは、早くケーキが食べたい一心で言う。
「いやいやいや、ちょっと待て。ろうそくを吹き消すのは、ハッピーバースディの歌が終わるタイミングの時だろう」
「えええぇぇぇぇ!!!またハッピーバースディの歌を歌うんですかぁ」
ということで、1階のロビーで、2回目のハッピーバースディである。早く食べたい一心からか、心なしか2回目の歌はテンポが速かった。
フッ!
パチパチパチ!!!
準備の周到なTさんは、ケーキ包丁、取り分けるための紙皿、使い捨てのフォーク、紙ナプキンなど、一式を揃えて持ってきていた。
さっそくケーキにかぶりつく学生たち。
「本当はあれだろう?ケーキが食べたいだけだったんでしょう?」例によって私が疑心暗鬼になって聞くと、
「そんなことありませんよ。本当に先生をお祝いしようと思ったからですよ」
と、Sさんがケーキをほおばりながら答えた。
「そんな、ケーキをほおばりながら言われてもなあ、説得力がない」
「どこまで疑うんですか!」
さすがにSさんも呆れていた。この被害妄想の癖は、なおさなければならない。
「どうもありがとうございました」ケーキを食べ終わった私は、8人の3年生に感謝した。
「たぶん、来年はないとおもいます」
「どうして?」
「私たち、来年の今ごろは卒論の大詰めでしょう。それどころではないと思うんです」
「そうか。それもそうだな」
それで今年、こんなに盛大に祝ってくれたのか。
彼女たちにしてみても、正月明けからさっそく公務員講座で勉強漬けの日々である。少しは息抜きになったのだろう。
ケーキを食べた8人は、満足して帰っていった。
…ということで今年は、妻と、3年生女子の8人の、合計9人が合格です!
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