ダンボールの泉
1月29日(火)
昨日の「屋台とラーメン」についてのテレビコメントは、別の同僚が引き受けてくれたとのことでした。よかったよかった。
とにかく忙しい。
事務室から問い合わせが来た。
「次の引っ越し作業はいつですか?」
仕事部屋の移転作業は、7割方終わった、というところであろうか。ここでいう「7割方」とは、荷物をダンボールに詰めて移動させた、という意味である。荷とき作業までは含んでいない。
「次に引っ越し業者さんが来るのはいつですか?」
私は職員さんに聞いた。引っ越し業者さんが来るときに合わせてこちらで荷造りをして、荷物を運んでもらおうと思っていたのである。
「もう、業者は来ません」
「え?来ないんですか?」
「もうあらかた移転作業は終わりましたから。あとは業者なしでやっていただきます」
えええぇぇぇぇ!!
聞いてないよ~。さあ困った。
そうなのだ。大規模な移転作業はあらかた終わってしまったのだ。すでに同僚は、耐震工事が終わった建物に戻り、久しぶりに形成された隣近所の同僚たちとのコミュニティを謳歌しているのだ。唯一残されていたのが、私だったのである。
ま、私はどこに行っても孤独なので関係ないのだが。
「よかったら、うちらで手伝いますよ」職員さんが気を遣って言ってくれた。
「いえ、けっこうです。自分で何とかします」
「ご自分でって、無理ですよそれは」
「いえ、大丈夫です」
どうせ俺はここでは孤独なんだ。一人でやるさ、と、事務室を後にした。
そうはいってみたものの、やはり一人ではツライ。
前にも書いたかどうか忘れたが、私はおそらく、この職場で、最も蔵書数が多いと思われる。
軽くブックオフが一店舗開けるくらいの、蔵書数である。
「いや、私の方が多いぞ」と心の中で思っているそこの君!かかってきなさい。勝負してあげるから。
むかし、運動会で「玉入れ」っていう競技があったでしょう。高いところにあるかごに玉を投げ入れて、あとでかごに入った玉を「ひとーつ、ふたーつ」と数えながら、かごの中から一つずつ同時に玉を投げ出して、最終的に多かった方が勝ち、という競技。
あれを「本」でやったら、絶対勝つ自信あるぞ。「いっさーつ、にさーつ」って、数えていったら、たぶん私が最後まで残ると思う。
だって、工事が完了した部屋に、本を配架しようとしてギチギチに並べても、まだ未開封の本のダンボールが80箱以上もあるんだぜ。
今までいったい、どうやってこの部屋に本が入っていたのだろう?
一人で作業をしていくうちに、だんだん腹が立ってきた。
どうして俺だけがこんな目に遭わなきゃならないんだ?
俺が何したっていうんだよう!こんなに真面目に生きているのに!
ダンボールから本を出しても出しても、いっこうに減る気配がない。
あとからあとから、ダンボールが湧き出してくる。こりゃあ、ダンボールの泉だな。
「あのう、ちょっとよろしいでしょうか」
同じフロアの同僚である。
「何でしょう?」
「この廊下においてあるダンボール、お借りしてよろしいでしょうか」
私は本を取り出したダンボールを解体して、仕事部屋の外の廊下に積んでいたのだ。あっという間に背の高さになっていた。
「どうしたんです?」
「仮の仕事部屋からこちらの仕事部屋に本を移すのに使おうかと思って」
「どうぞどうぞ、いくらでもお使いください」
いつしか、同じフロアの何人かが、必要なダンボールを私のところから持って行くようになった。
しかし、である。
複数の人がよってたかって私のダンボールを持って行っても、いっこうになくならないのだ。
ダンボールの泉、ダンボール長者、ダンボールハウス…。
こんなことなら、1個いくらかで貸して、商売をすればよかったかな。
いっそ私の名前を「ダンボール」に変えようか、と思ったくらいだ。
…さて、そんな馬鹿なことばかり考えてはいられない。
今日は天気もいいし、一気に移転作業を進めてしまおう。
おりしも、新しいパソコンが今日、納品されるというのだ。
というわけで、途中、学生2人が来て手伝ってくれて(もちろんアルバイトですよ)、午後から夕方までかかって、9割5分くらいの荷物を、仮の仕事部屋から本来の仕事部屋に移すことができた。
新しいパソコンも設置できて、いよいよ拠点は、この本来の仕事部屋である!
まだ、本のダンボールは100箱ほど未開封だが、あとは時間を見つけて少しずつ整理していくことにしよう。
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コメント
学生時代、段ボールで本棚を作って住んでいる後輩がいました。下宿に行ってみると、壁一面に段ボール箱が、こちらに開いた面を向けてびっちりと積み上がっています。この箱には本を、この箱には小物をと、ちょっとした「カラーボックス」感覚です。
でも段ボール箱の強度は意外にイマイチで、カラーボックス状に積み上げると、本の重みでつぶれます。必要は発明のハナ肇。そこで生み出したのが、ポテトチップの円筒容器を1箱に一本ずつ支柱として立てる、という工法でした。想像できてます? 壁一面に積み上げられた黄土色の「カラーボックス」の、一箱ごとに一本ずつ、色とりどりのポテチの柱が挟み込まれている光景を。
これなら段ボールに入れたまま、本を配架することができますから手間いらずです。
もっと上手(うわて)の同級生もいて、この人は、本の上に布団を敷いて寝ているという噂でした。想像するに、部屋の扉を開けると、本の入った段ボールが下宿の床一面に敷き詰められていて、一段高くなった上で暮らしている、という感じですかね。「床下収納」ならぬ「畳上収納」です。
これなら段ボールの荷解きすらしないで済むので、楽ですよぉ。それに本探しをする度に「ここらへんに埋めといたかなあ」と敷き詰められた段ボール箱を開けながら、実写版「マインスイーパー」というか、「ココ掘れワンワン」的な楽しみも増えますし。
投稿: こぶぎ | 2013年1月31日 (木) 00時16分
ダンボールは200箱以上ありますからねえ。ということはですよ。円筒容器に入ったポテトチップスをまずは200本以上食べなければならない、ということになりますね。
ダンボール箱敷き詰め作戦も、自分の体重を考えれば、あっという間にダンボールがつぶれてしまいますね。つまり、歩くたびに床が抜けてしまうのです。
ダンボールではなく、強化ガラスで作った箱に本を入れたものを、床に敷き詰めればどうでしょう?これだと、どこに何の本があるかすぐにわかります。
投稿: onigawaragonzou | 2013年2月 1日 (金) 00時54分
段ボール200箱を、ガラス箱200箱へ入れ替える余計な手間が増えますな。体力もさらに必要になるでしょうから、「図書館体操第一」で鍛えてみてはいかが?
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=qcMfJmcR4is#!
投稿: こぶぎ | 2013年2月 1日 (金) 04時02分