うっかり脳体験
先月、職場の建物の耐震工事が終わり、いよいよ「仮の仕事部屋」から「本来の仕事部屋」に戻ることができるようになった。そして1月も後半を迎えた。
「引っ越しはもう終わったんですか?」とよく聞かれるのだが、
「まだ終わっていません」
ほかの同僚はとっくに引っ越しが終わっているが、私だけはまだ陸の孤島である。
それでも、「仮の仕事部屋」から、学生に手伝ってもらいながら、本のほとんどを箱詰めして「本来の仕事部屋」のある建物に移したのだが、なにしろダンボールにして100箱くらいあるので、自分の仕事部屋に置くスペースがない。仕方がないので、廊下をはさんだはす向かいにある空き部屋に、ダンボールを仮置きさせてもらうことにした。
いまは、はす向かいの部屋に置いてあるダンボール箱から本を取り出しては、自分の仕事部屋の書棚に配架する、という単純作業を、延々とくり返しているところである。
つまり作業中は、はす向かいの部屋と、自分の部屋を、かなりの頻度で行ったり来たりするわけである。
これをくり返していくと、だんだん方向感覚がおかしくなる。
俺は今、どっちの部屋にいるんだ?とわからなくなり、トイレが廊下を左に進むとあるはずだと思って、部屋を出て左の方に歩くと、実は逆方向だったり。
トイレの位置は、自分の仕事部屋から見て左だが、はす向かいの部屋から見たら右なので、「自分の仕事部屋」にいるつもりで「はす向かいの部屋」にいると、まったく逆方向に廊下を進むことになるのである。
なんかややこしいな。説明、わかりますかな?
こういうのを、脳がうっかりする「うっかり脳体験」というのか?あるいは「空脳(そらのう)」というのだろうか。
「うっかり脳体験」をしてみたい方は、ぜひ、私の引っ越し作業を手伝ってみてください。
さらに最近は、自分が「仮の仕事部屋」にいるのか、「本来の仕事部屋」にいるのか、わからなくなることがある。
いまは、おおかたの本が「本来の仕事部屋」にあり、パソコンや仕事に必要な書類が「仮の仕事部屋」にある、という状態なので、両方の部屋を、行ったり来たりしなければならない。
そんなことをしているうちに、自分がどこにいるかわからなくなってしまうのである。
夜、仕事が終わり、帰ろうとする。
(今日は、この廊下を通って、この階段を下りて、この出口から出て帰ろう…)
と、自分は「本来の仕事部屋」にいるつもりで、その帰り道を漠然とシミュレーションしながら部屋を出ると、自分がいた部屋は「仮の仕事部屋」であり、愕然とすることがあるのだ。
部屋の作りも広さもぜんぜん違うし、部屋のある建物もぜんぜん違うのに、どうしてこんな錯覚をしてしまうんだろう?
しかしこうした「うっかり脳」は、めったに体験できるものではない。
引っ越しが終わるまでのあと少しの間、この「うっかり脳体験」を楽しもう。
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