いまさら「英国王のスピーチ」
12月30日(日)
とてもいいね。絶対見るべき映画である。
いまや私も妻も、TBSラジオ「ウィークエンドシャッフル」のパーソナリティ、ライムスター宇多丸さんの映画評を、もっとも信頼しているのだが、その宇多丸さんは、この「英国王のスピーチ」を、
「『ベストキッド』と『ゴッドファーザー』を合わせたような映画なので、面白くないはずがない」
と評していた。
この映画は、第2次世界大戦直前の1930年代、吃音に悩むイギリス国王の王子・ヨーク公アルバート王子(のちのジョージ6世、コリン・ファースが演じる)が、植民地(オーストラリア)出身の平民である言語療法士、ライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)と知り合い、吃音を克服して、国王としてのスピーチを成功させていく、という史実に基づいたストーリーである。
自らの弱点に悩む主人公が、最初は自暴自棄になりながらも、師を得て、弱点を克服し、己に勝つ、というストーリーは、まさに「ベストキッド」である。つまりこの映画は、スピーチ版「ベストキッド」なのである。
また、「自分はその器ではない」と思い込んでいた主人公が、やがて「国王」の座に就くことになり、国王として成長していく、というストーリーは、まさに「ゴッドファーザー」そのものである。
なるほど。この映画の説明は、この2点に尽きる。
個人的には、この映画には私が好きな要素が盛り込まれている。
1.「師弟」の物語である。
この場合、その「師」というのは、かなり「異端」の人物である点が重要である。ライオネルは、自称・言語療法士だが、実際には資格など持っていない、売れない役者であった。
2.「やんごとなき人」と平民の友情の物語である。
このパターンも好きである。ソン・ガンホ主演の韓国映画「大統領の理髪師」とか、「男はつらいよ 寅次郎と殿様」みたいな設定が、けっこう好きなのだ。あ、古くは「ローマの休日」があったか。
3.屈折した人間の物語である。
ジョージ6世は、子どものころから吃音に悩まされ、それがきっかけで、自分に自信を失っていた。吃音を克服しようとしながらも、日々悩み続ける。コリン・ファースは、その屈折ぶりを見事に演じている。マイナス思考の人こそ、見るべき映画である。
4.紆余曲折した友情の物語である。
2人の友情は、決して盤石なものではないものとして描かれているのがいい。相手に行き過ぎたことを言ってしまったり、相手の思いやりを受けとめられなかったりして、2人の関係は、ときに脆弱になり、そのことに2人は思い悩んだりする。この点をちゃんと描いているのがいいのだ。
いいなあ、イギリス映画。私の気質に合っているのかも知れない。
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コメント
ボ、ボクは、軍隊でいうと、元帥なんだな(国王だから)。
多分、こんな映画じゃありません(初笑)。
今年もよろしくお願いします。
投稿: こぶぎ | 2013年1月 1日 (火) 12時30分
「英国王のスピーチ」もさることながら、私この前「レ・ミゼラブル」を劇場にてひとり鑑賞してまいりました。「レ・ミゼラブル」といえば言わずと知れた、フランス文学の金字塔とも言えるヴィクトル・ユゴーの小説ですが、いろいろと考えさせられるところがあり、個人的には十分楽しめました。ちなみに、映画館を出るやいなや書籍版を買い求めてしまいました、とさ。
………あ、大事なことを忘れていました!明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
投稿: とよ | 2013年1月 2日 (水) 00時12分
ぼぼ僕は、はは裸の大将じゃなくて、はは裸の王様なんだなぁ。
ぼぼ僕は、どっどこかの画家と違って、おお王様だから放浪しちゃいっいけないんだよなぁ。
こっこんな喋り方じゃ、いっいつまで経っても映画が終わらないんだなぁ。
たしかこんなスピーチでしたよね。国王らしくてすばらしい。
ちなみにおすすめ脳天気イギリス映画はビートルズの『マジカル・ミステリー・ツアー』です。スコップでスパゲティを給仕するジョンにびっくり。
明けまして、おめでとうございます。
投稿: だい | 2013年1月 2日 (水) 22時58分
こぶぎさん、とよさん、だいさん。
今年もよろしくお願いします。
投稿: onigawaragonzou | 2013年1月 4日 (金) 00時28分