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スウィングする人たち

1月11日(金)

大部分の人にとっては些細なことかも知れないが、私にとっては、1月11日のイベントは、絶対に成功させなければならなかった。

一昨年の震災で激甚被災地となったR市で被災され、いまも自ら復興の最前線で奮闘しておられるkさんをお呼びしてお話を聞くことは、世話人代表のKさんや私の悲願であった。しかしそれは同時に、私にとって、とても「重い」仕事だった。

R市で津波にかぶった資料をお預かりして、クリーニング作業のお手伝いをしていたご縁で、R市のKさんにお会いしたのは、昨年6月のことであった。そのとき、「ぜひ一度、こちらに来てご講演ください」とお願いしてはみたものの、震災後に一度お会いしただけの私ごときが、依頼する資格などあるのだろうか、と逡巡した。復興の現場では、毎日がいまも戦いである。わざわざ来ていただくからには、「来てよかった」と思っていただけるようなイベントにしなければならないのである。

当日の12時半、講師としてお招きした、KさんとOさんのお二人を駅までお迎えにあがる。

「お昼はおそばでいいですか?」私はお二人に聞いた。

「もちろんです。美味しいそばを楽しみに来たようなものですから」

「じゃあ、山の上のおそば屋さんなんですけど、いいですか?私の、とっておきの店です」

「いいですよ」

私の運転する車は、どんどん山に登っていく。

「本当に山の上なんですねえ」Kさんは驚いていた。

おそばに満足してもらい、2時過ぎに職場に到着した。

そこから、作業仲間のSさんと合流して、お二人を職場の各所に案内する。

お二人をSさんにおまかせして、2時半に私が会場に着くと、すでに何人もの仲間や学生たちが待機していた。

「さあ、設営しましょう」

多くの人たちの協力を得て、お客さんを迎える態勢をととのえた。

新聞記者も取材に来た。

開始直前、ぞくぞくと人が集まってきた。その多くは、職場の同僚や学生ではなく、一般市民の方である。最終的には、70名近くなった。

「敵は身内にいる」という言葉があるが、私の場合、正確には「味方は外にいる」というべきか。

そして4時20分。講演会が始まった。

お二人の講演は、合計でスライド130枚を使った、とても力のこもった講演だった。

講演の最後にKさんは、「震災が遺したものの一つは、Mさん(つまり私)やKさん(世話人代表)といった仲間たちとの強いネットワークをきずけたことだったのではないでしょうか」と言っていただき、その言葉で、私自身が救われた思いがしたのだった。

考えてみれば、このイベントは、多くの「スウィングする人たち」によって初めて実現し得たことだった。

企画を全面的に後押ししてくれ、「絶対に成功させましょう」と励ましてくれた世話人代表のKさん。

印象的なポスターをデザインしてくれた、職員のSさん。

昨日(10日)の配付資料印刷にはじまり、当日は、私が動きやすいようにと、いちばん地味でたいへんな仕事をかってでてくれた、作業仲間のSさんと卒業生のT君。

「当日はどんなお手伝いでもします」と申し出てくれて、当日の講演会でビデオ撮影を担当してくれた、作業仲間のTさん。

50㎞離れた豪雪地帯から学生を2人連れて駆けつけてくれた前の職場の同僚のKさん。

仕事を早めに終わらせて、講演会に駆けつけてくれた同い年の盟友・Uさん。

半日かけて、I県から、盟友のKさんの講演を聞きにはるばる来てくれたMさん。

「手伝ってください」とSOSのメールを出したら来てくれた、たくさんの学生たち。

講演会に来てくれた、約70名のみなさん。

講演会には来られなかったけれど、そのあとの懇親会や二次会に駆けつけてくれた作業仲間たち。

そして、東京から駆けつけてくれた妻。

みんな、私にとっては「スウィングする人たち」である。この講演会で、「スウィングする人」と「スウィングしない人」を、はっきりと見きわめることができた。

あ、もう1人いた。

芳名帳の名前のところに、「湯たんぽラグビー」、そしてその横に「今日は「兄弟船」のマル秘話、たのしみに来ました」と、意味不明な珍文を書いた、こぶぎさん!!

めちゃくちゃ忙しいにもかかわらず、例によってこぶぎさんは、豪雪地帯から往復100㎞かけて人知れずやってきて、講演会が終わっても私に声をかけることなく、帰っていったのである。こぶぎさんなりの、ダンディズムである。

この友情には、感謝してもしつくせない。

さて、講演会が無事終わり、お二人を囲んで懇親会を行った。ふだんの作業仲間15人ほどが集まった。

「みんなで記念写真を撮りましょう。みんな並んでくださ~い」

懇親会の終わりに記念写真を撮ることにした。

私がkさんの横に並んでいると、

「これでどうだ!」

といいいながら、なんとKさんが私に抱きついてきたのである。

ことわっておくが、Kさんは私とほぼ同い年のオッサンである。しかもKさんも私も、お酒を一滴も飲んでいない。さらには私もKさんも、本来はシャイなオッサンなのである。

カシャッ!

かくして、Kさんが私に抱きついている写真が、撮られたのであった。

私はこのとき、Kさんは私を信頼できる仲間として認めてくれたんだな、と安堵した。

この絆は、これからも大切にしていかなければならない。

Aさんのはからいで2次会が企画され、そこでも話が盛り上がった。気がつくともう深夜0時である。

車でお二人を宿泊先までお送りする道すがら、Kさんは、

「今日は楽しかった。本当に楽しかったです。こんなに楽しくていいんだろうか」

何度もそう、おっしゃった。

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