崎谷教授の言葉
このブログでまだ書いてませんよね?ドラマ「すいか」の話。
木皿泉脚本、小林聡美主演のドラマ。2003年放送だから、もう10年も経つのか。
日本テレビ土曜夜9時の枠は、かつて「土曜グランド劇場」と銘打たれ、「熱中時代・刑事編」(水谷豊主演、1979年)とか、「ちょっとマイ・ウェイ」(桃井かおり主演、1979~80年)とか、、「池中玄太80キロ」(西田敏行主演、1980年)とか、「あんちゃん」(水谷豊主演、1982~83年)といった、ハートウォーミングドラマの名作が次々と生まれた時間帯である。「すいか」も、この流れをくむ。
東京の三軒茶屋の下宿「ハピネス三茶」を舞台に、30代半ばで独身の銀行員(小林聡美)、ちっとも売れない漫画家(ともさかりえ)、風変わりな大学教授(浅丘ルリ子)、といった女性たちが、それぞれにさまざまな「過去」や「事情」や「悩み」をかかえながら、些細なことに生きる価値を見いだし、少しずつ前に進み、自分らしさを取り戻していく、という内容である。とくにストーリーめいたものはなく、基本的には、コミカルかつハートウォーミングなエピソードがちりばめられる。
とても地味なドラマで、放送当時は、視聴率はあまりよくなかった。だがこのドラマで、脚本家の木皿泉は向田邦子賞を受賞している。ちなみに向田邦子賞を受賞したドラマにはほかに、「淋しいのはお前だけじゃない」「二本の桜」など、このブログでも紹介したことのあるドラマが名を連ねている。
念のため説明しておくと、木皿泉は一人の脚本家ではない。男女二人の脚本家の共同ペンネームである。つまり男女二人組の脚本家である。寡作だが、心に残る名台詞をちりばめる名人である。
なかでも、浅丘ルリ子演じる崎谷(さきや)教授がすばらしい。
浅丘ルリ子は、「筋を通す女性」を演じさせると、絶品である。映画「男はつらいよ」シリーズで演じた「リリー」が、まさにそういう女性だった。シリーズ中、リリーが最も印象深い「マドンナ」になったのも、「筋を通す女性」というリリーのキャラクターを、浅丘ルリ子が実に自然に演じたからであろう。
「決して媚びないが、それでいて可愛らしい」
これこそが、浅丘ルリ子の真骨頂である。
「すいか」の崎谷教授も、少し風変わりだが、「筋を通す女性」である。しかもその根底には、人間に対する深い「共感」がある。ドラマとはいえ、ああいう人間になりたい、と思う。
私が理想とする「教授」は、漫画「マスターキートン」のユーリー・スコット教授と、ドラマ「すいか」の崎谷教授なのだ。
数ある名台詞の中でもとりわけ印象深いのは、ふられた女性に書いたラブレターを土に埋めている若者(金子貴俊)に、崎谷教授がかける言葉である(第2話)。
「安心して忘れなさい。私が覚えておいてあげるから」
「つらいことは忘れていいんだ」という救いとか、「自分が忘れてしまっても覚えてくれている人がいるんだ」という心の支えとか、これって、とても救われる言葉のように思うのだが、そう思うのは、私だけだろうか。
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