そして誰もいなくなった
1月8日(火)
これって、アガサ・クリスティの推理小説のタイトルでしたっけ?舞台が孤島だったことも、今日のこの話にはうってつけのタイトルである。
原稿の締切に追われる日々である、と書くと聞こえはいいが、そんな言葉がサマになるのは、売れっ子作家とか、売れっ子脚本家である。こちらは単に、要領が悪いだけなのである。
先週末から昨日にかけて、懸案の「大物の原稿」2つのうちの1つにかかりきりになり、昨晩遅く、ようやくメドがついたので、とりあえず担当者に送った。その間にも、別の知り合いから頼まれていた原稿を昨日1日のうちに何とか仕上げた。
そんなわけで今日、憔悴しきって職場に行くと、周囲が慌ただしい。
そうだ!今日は耐震工事が完了した建物に仕事部屋を移すための、引越業者が来る日だった!
とにかく昨晩までは原稿のことで頭がいっぱいで、とても引っ越しの準備ができる状態ではなかった。
それに加えて、来る11日には、自分が企画したイベントが控えていて、精神的にも、引っ越しの準備をするという気分ではなかった。
いちおう職場には、「引っ越しの時期を少し待ってもらえませんか」と交渉していたのだが、しかし、まわりがすでに引っ越しの準備をしているのを見ると、自分も何かやらなきゃ、とせき立てられてしまう。
私が今いる建物には、同じ部局から私のほかに3人の同僚が避難していた。部局から少しだけ離れたところにあるので、私はひそかにここを「陸の孤島」と呼んでいたが、別の同僚は、「アルカトラズ刑務所」と比喩していた。
私はこの建物の中でいちばん大きな仕事部屋をいただいていたので、さしずめ牢名主といったところか。
しかし困った問題がある。
一つは、尋常ではない本の量である。
なにしろ、こちらの「陸の孤島」に引っ越す際にも、3カ月の準備期間を必要としたのである。
単純計算で行くと、いまから引っ越し準備を始めると、完了するのは3月末、ということになる。これではいくらなんでも、担当のK係長から怒られる。
もう一つは、尋常ではない部屋の散らかり方である。
私は原稿を書くときに、周囲に資料を散らかしながらでないと書けないのである。追いつめられれば追いつめられるほど、そうである。
昨晩まで、追いつめられながら原稿を書いていたせいもあり、その状況はますますひどくなっている。
これでは永久に引っ越しできないではないか!
パニックになった私は、学生たちに「SOS」というタイトルのメールを一斉送信した。本の箱詰めを手伝ってほしい、という内容のメールである。
すると、急なお願いにもかかわらず、2人の学生が駆けつけてくれた。ありがたいことである。
しかし実際には焼け石に水で、ほとんど進まない。そうこうしているうちに、3人の同僚たちは、晴れて「出所」したのである。
(とうとう1人になっちまったか…)
正真正銘の牢名主になってしまった。
いや、それをいうなら、やはり「日本沈没」の田所博士である!
ここで体調が急変して倒れても、誰にも気づかれまい。たとえば、本を詰め込んだダンボールを持ち上げたとたんにギックリ腰になってのたうちまわっても、しばらくは誰にも気づかれないまま放っておかれることになってしまうわけだ。
ということは、ここが人生の終焉の地か?嗚呼!オレはここで人生を終えるのか。
…などと、例のマイナス思考がどんどん進んでいく。
いかんいかん。もっと前向きに考えないと。
そもそも「そして誰もいなくなった」というタイトルがよくない。タイトル変更!
「お楽しみはこれからだ」
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コメント
頑張れ!!!
終わったら終わったでさっさと片付けてきっちり切り替えよう!
投稿: 50あらし | 2013年1月 9日 (水) 00時09分
そんな蔵書整理の苦手な鬼瓦さんには、これで決まりでしょう。突っ込みポイント満載で、実に味わい深い。K助手も可哀想すぎるし。
http://www.kajitaku.com/guide/?p=180
投稿: こぶぎさん(仮名) | 2013年1月 9日 (水) 01時32分
げげっ!!まさか50あらしさんが読んでいたとは!!!
いつぞやは記事にしてしまい申し訳ありませんでした。
どうかこのブログのことは関係者(同業者)に秘密にしておいてください。関係者に知られますと、ブログを閉鎖しなければなりませんので。
投稿: onigawaragonzou | 2013年1月 9日 (水) 01時35分
たしかに突っ込みどころ満載の、実に味わい深い文章ですな。しかし先ほどの「やかんブログ」といい、こういう香ばしいサイトをよく見つけてこられますな、こぶぎさん。
投稿: onigawaragonzou | 2013年1月 9日 (水) 01時41分