羅生門的事象
ある一つの出来事も、視点を変えてみれば、まったく違った様相を呈する。
これは、黒澤明監督の映画「羅生門」(1950年)が生みだした、映画的手法である。
「羅生門」が嚆矢となり、このあと、一つの出来事を複数の視点で描く手法の映画が、数多く作られるようになった。ニコラス・ケイジ主演の「スネークアイズ」(1997年)なども、そのひとつである。
考えてみれば、私の身のまわりは「羅生門的事象」に満ちている。そのことに気づいたとたん、これまで信じていたものが揺らぎはじめ、大いなる疑念が生まれる。
「羅生門」の冒頭で、ある事件の裁判を見た杣売が「わからねえ…さっぱりわからねえ」と何度もつぶやくのは、人間社会の本質を言い当てた言葉だと、私は思う。
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