« 味方は外(そと)にいる | トップページ | 精神がない »

「消せるボールペン」の敗北感

2月13日(水)

私の師匠は、.新しい文房具に目がない。

昨年の研究会の席のことだったか。議論が白熱し、私の持っている本を見て、

「ちょっと、それ貸して」

と言われるので、お貸ししたところ、

「ほら、ここにこう書いてあるでしょう」

と、なんと、赤いボールペンで、私の本に線を引き、メモを書き始めたのである!

「あああぁ!何するんですか!」

と、高価な本だったので、思わず私が声を上げると、

「これ、消せるボールペンだぞ。知らないのか?芯の反対側のところで、こすってごらん」

こすると確かに赤い字が消えた。

すると師匠はニヤリとお笑いになった。まるで、勝ち誇ったかのような笑顔である。

このときの私の敗北感といったら…。

そこで初めて私は、「消せるボールペン」なるものがあることを、知ったのであった。

「消せるボールペン」って、いまどのくらい普及しているの?

ホームセンターの文房具売り場に行くと、たくさん置いてあったので、そのうちの赤ボールペンを買ってみた。

仕事部屋で、さあ使おうと、芯を出そうとするが、芯の反対側のでっぱったところを、いくら押しても、芯が出ない。

ふつう、ボールペンって、芯と反対側のでっぱりをノックすれば、芯が出てくるよね。でもこれは、まったく押せない。このでっぱりは、シャーペンでいえば、消しゴムにあたる部分なのだ。

(いったいどうやったら芯が出るんだ???)

5分くらい悩んで、ようやく芯の出し方がわかった。

このときの私の敗北感といったら…。

うーむ。なんとかこれを、勝利に変えたい。

さて昨日、「文房具好き」を自認する同僚と話をした。

「これ、ご存じですか?」

そう言うと、その同僚は赤いボールペンを得意げに私に渡した。

「これ、書きやすいんですよ」

書いてみると、たしかに書きやすい。

この時期、我々の仕事で赤いボールペンはいちばんの必需品である。でもどうせ使うなら、、ストレスを軽減するために、少しでも書きやすいボールペンを使いたいものだと、誰もが「書きやすいボールペン」を探し求めているのだ。

「いいですねえ」と言ってみたものの、ちょっと悔しい。

そこで私はすかさず、背広のポケットから「例のもの」を出した。

「じゃあ、これ、ご存じですか?」

「何です…?ひょっとして、消せるボールペン?」

げげっ!すぐに認識されてしまった。

しかし、「文房具好き」を自認するその同僚も、まだ使ったことがないらしかった。

「どうぞ、使ってみてください」

同僚は、芯と反対側のでっぱりを押して芯を出そうとするが、当然、芯は出ない。

「あれ?あれ?どうやって芯を出すんだろ」

私が答えを言わずニヤニヤしていると、

「ああ、ここをこうするんですね」

と、わずか10秒ほどで、芯を出してしまった。

このときの私の敗北感といったら…。

結局私は、「消せるボールペン」に負けてばかりである。

|

« 味方は外(そと)にいる | トップページ | 精神がない »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

消せるボールペンで監査用の書類を書いて、注意されてる人を見かけたときがあります。

投稿: R.I | 2013年2月14日 (木) 00時29分

 「タマフル」で時々やる文房具特集に感化されて、流行りの文房具を買うようになりましたが、当たりはずれもあるもので、フィットカットカーブなんか、家中の鋏を全部買い替えるくらいキレ味さわやかなんですが、ペンに装着する紙めくりなどは、ペンで紙めくりする技自体に習熟できなくて、結局ダメでした。

 赤ペンはというと、ラミーのローラーボールペンにペリカーノジュニアと、ドイツ製ばかり使っていました。

 ローラーボールペンは、クリップを押すと芯が出る機構になっていて、それを忘れてポケットに丸ごと入れてしまうものだから、銃で撃ち抜かれたかのように何度も胸ポケットを赤く染めてしまいました(さすがラミー製だけあって、ボールペンなのに万年筆以上にインクの出がよいのだ)。

 ドイツの小学生がお習字の時間に使うらしい万年筆のペリカーノジュニアも、安くて、しかも書きやすいのですが、プラスチック製なのでキャップがすぐ割れてしまうし、しばらく使わないとインクが乾いてなくなっちゃうわけで、現在は机の中に。

 かれこれあって、現在はウタマルさんご推薦の三菱ジェットストリーム(1ミリ)に、ZOKKON 命(ゾッコン・ラブ)でございます。油性ボールペンだから消えないし。

 でもね、赤でなくて黒だけど、本当に書きやすいのは4B以上の濃い鉛筆ですよ。細かい文字は書けないし、すぐ減りますが、メモになぐり書きする時なんざ、木製だから何と軽くて、書きやすいこと。芯だってもう出ちゃってるし、敗北感ゼロですわ。

 もうHBには戻れませんぜ。というか「鉛筆=HB」というステレオタイプに、いかに囚われていたことか。
 
 それに、もちろん、ちゃんと消せるし。

投稿: こぶぎ | 2013年2月14日 (木) 09時22分

消せるボールペンの注意書きには、「証書や宛名書きには使わないでください」と書いてあるんですよね。ここでもやはり敗北感が…。

三菱ジェットストリーム(1ミリ)、早速買いました!確かに書き心地はバツグンですね。もっとも、赤ボールペンを使う仕事は、もうほとんど終わってしまいましたが。

あと、「脱HB宣言」に賛成!最近は、学生がHBの鉛筆で書いたと思われる文章が、薄くて読めません。

投稿: onigawaragonzou | 2013年2月14日 (木) 22時31分

 こちらも今日、ロフトの文具売り場で確かめてきましたが、「消せるボールペン」は本当に字が消えるわけではなくて、摩擦熱で透明になるインクで書いているだけですからね。
 それが証拠に、冷凍庫で-10度に冷やすと文字が復活しますぜ。

 本当に消えるものだと思い込んで、弟子の本をどんどん「書き込みあり」にしちゃっている大先生を、果たしてどうやって諌めたらいいものか。

投稿: 消せないこぶぎ | 2013年2月16日 (土) 00時20分

えええぇぇぇっ!!衝撃の事実!そうだったんですか?
たしかこぶぎさんの住んでいる町は、数日前に氷点下15℃をを記録したはず。ということは、こぶぎさんの町では、消せるボールペンで書いて消したはず文字が、そのときいっせいにうかびあがったってことですね。
やはり「消せるボールペン」には敗北感がつきまとう…。

投稿: onigawaragonzou | 2013年2月16日 (土) 01時39分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 味方は外(そと)にいる | トップページ | 精神がない »