精神がない
2月14日(木)
以前にこのブログで書いたかどうか忘れてしまったが、韓国語に「精神がない」という言い回しがある。韓国滞在中に、よく聞いた言い回しである。
どういうときに使うのかというと、「最近仕事が忙しくて精神がなくて、あなたのことはすっかり忘れてました」とか、「家族に心配事があり精神がなくて、仕事どころではない」というように。
こなれた日本語で言うならば、「心に余裕がなくて」という意味だろう。
韓国の人たちは、本当にこの言い回しをよく使うのだ。
しかも「精神」という言葉は、もっぱら「精神がない」という言い回しでしか、出てこない。
日本語だと、「最近忙しくて、あなたのことはすっかり忘れてました」「家族に心配事があり、仕事どころではない」と言えば十分で、「心に余裕がなくて」とは、ふつう言わない。
そもそも「「忙しい」という漢字は、「心をなくす」と書くのである。
韓国語には当然、「忙しい」という言葉もあるのだが、「忙しくて」だけではインパクトがないからなのか、「精神がなくて」という言葉を、必ずつける。
韓国の人たちは、自分を追い詰めるほど働く場合が多いので、「精神がなくて」という言い回しは、たしかにそれにふさわしい表現である。ただし日本でも、「精神がない」ほど追い詰められている人も私の周りににいるので、一概にはいえない。
しかし一方で、この言葉は、とても便利な言葉である。
「精神がなくて」と言えば、たいていのことは納得してもらえる。私も韓国でこの言葉をよく使わせてもらった。
この慣用表現は、いつごろ、どのような経緯で人々に使われるようになったのだろう?
日本語に該当する表現がないのは、どうしてなのか?そこには、どのような文化的差異があるのか?
だれか、レポートを書いてくれないかなあ。
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コメント
「ネイバー」の韓国語版ホームページで、日韓辞書じゃなくて、国語辞典(韓国の国語辞典だから、韓国語を韓国語で説明している)の方で、「精神(チョンシン)」を引くと、2番目に出てくる意味が
物事を感じ、考えて判断する能力。またはその作用 。
です。「精神がない」という用法はこれに当たりますが、日本の国語辞書と引き比べると、この意味合いは日本語の「精神」にはあまりないですね。「精神薄弱」という熟語もありますが、一方で「精神力」を使っている状態は、むしろ判断力を失って気合いで頑張っている状態です。
「チョンシン」と聞いて僕がすぐ思い出すのが「チョンシン チャリョ!」で、「しっかりしろ」とか「気をつけろ」というニュアンスで使われています。直訳すると「精神(を)整えよ」という意味ですから、これも上の意味に通じていますね。ここで使われているような、「気」「正気」という意味合いも、日本語の「精神」に含まれると思いますが、「気をつけろ」とは言っても「精神をつけろ」とは言わないでしょう。
ちなみに中国語の辞書を引くと、中国語の「精神」には「元気」という意味があって、「有精神!」は、「元気を出せ!」となります。「精神を出せ」とは日本語で言わないので、これも日本語とはニュアンスが異なる例でしょう。むしろ「チョンシン チャリョ」は、失敗した相手だけでなく、瀕死の相手にも言う言葉ですので、中・韓の間の方が、より近いのかもしれません。
ちなみに手元の電子辞書を引くと「精神がない」というのを「無我夢中で」と訳していました。夢の中は、精神がない世界なんですな。
投稿: こぶぎ精神 | 2013年2月15日 (金) 23時47分
そうそう!「チョンシン チャリヨ」(精神を整えよ、しっかりしろ)という表現もありましたな。忘れてました。「精神」を使った慣用表現は、この二つが主なものでしょうね。
それにしても、ホンモノのYahoo!知恵袋のようなお答えで、ありがたいことです。さすがにこればかりは、ご隠居と八っつぁんの会話、というわけにはいきませんでしょうな。
投稿: onigawaragonzou | 2013年2月16日 (土) 01時34分
チョルス おじいさま、こんにちは。
ハラボジ おお、チョルスや。旧正月のお年玉でも、ねだりにきたのかい。
チョルス いいえ。実は、ITネタばかりか韓国語の記事にまで「落語台本」調のコメントを要求されて、どうしようかと相談に来たのです。
ハラボジ ああ、またあのブログのことかい。
チョルス 落語台本のコメントは一見、今までの会話体コメントと同じように見えますが、一本書くのにたっぷり3時間はかかるので、地味に大変なんです。
ハラボジ 大体、会話体で書くだけでも入力文字数が多くなる。それでも、普段は思いついた小ボケをつないてゆけば書ける。
しかし落語台本を書くとなると、最初に「サゲ」を考えて、そこへどうやって話を持って行くかの構成を考えなくてはいけないから大変だ...と、お前は、こう言いたい訳じゃな。
チョルス そもそも、我が国には「落語」なんて話芸はありませんし、礼節の国柄だから、ご隠居と言えども、このようにちゃんと敬語を使わないといけません。
ハラボジ チャキチャキした江戸言葉のリズム感など、元から望むべくもないしな。
チョルス むしろ「パンソリ」の方が、国民性に合っていると思います。
ハラボジ しかしチョルスや。かつてこのブログでは「日本式1行詩」(韓国語で五・七五の川柳を作ること)で遊んだこともあった。「落語台本調」のコメントも、やってみたら意外に面白いんじゃないか?
チョルス そうですかねえ。
---------
アッパ と言うわけで、とうとうその女の子は亡くなってしまったとさ。
アドル (号泣)可哀想だなあ。
アッパ その子の唯一の遺言が、お前と一緒に遊んだ時に来ていた、あのカーディガンを一緒に埋めてほしいということじゃったんだ。
アドル でも、あの子は何でカーディガンを一緒に埋葬してほしいって言ったのかなあ。若木の苗でも植えておけば、思い出にできるのに。
アッパ 植物はいけない。もし蝶が、卵でも産み付けたらどうする。
また「サナギ」になっちゃまうぜ。
---------
チョルス 苦、苦しいです。おじいさま。
ハラボジ 何を言うか。このサゲを考えるだけで、一時間もかかったんじゃ(実話)。韓国人の琴線を揺さぶる2大名作である、小説「ソナギ(通り雨)」と映画「手紙」の感動のラストシーンに、日本の「地口(じぐち)」オチを織り込んだ意欲作じゃぞ。
チョルス おじいさま、一言言ってもいいですか。
ハラボジ 何だ?
チョルス どうか精神をお整え下さい。
投稿: ITこぶぎ | 2013年2月18日 (月) 18時32分
(業務連絡)
先ほどの韓国落語「ソナギ(通り雨)」の台本に誤りがありましたので、訂正するついでにサゲも変えて、人情噺風に変えたいと思います。
あと、KBS[ギャク・コンサート」の「アッパ・ワ・アドル(父と息子)」コーナーの見すぎで、父と息子の会話にしましたが、やはり原作通り、息子が寝ている脇での、父と母の会話にしたいと思います。
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アボジ と言うわけで、とうとうその女の子は亡くなってしまったそうだ。
オモニ おじい様が亡くなったばかりなのに、何と可哀想なこと。
アボジ その子の最後の願いが、うちの息子と一緒に遊んだ時に着ていた、ピンク色のセーターで弔ってほしいということだったそうだ。
オモニ でも、どうしてセーターなのかしらねえ。若木の苗でも植えておけば、訪れた人の形見にもなろうものを。
アボジ (つぶやくように)ああ... 植物はいいな。
もし蝶が、その葉に卵を産みつけでもしたら、
「サナギ」のことを思い出すかもしれないから。
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「ソナギ」については、このページあたりをご参照ください。
http://ameblo.jp/harubaru0804/entry-10282936342.html
投稿: ITこぶぎ | 2013年2月19日 (火) 00時31分
おい、そういえば最近、八っつぁん見ねえな。あいつ、どうしてんだい?
どうも本業の大工の仕事が忙しくって、夜も日も明けず仕事をしているらしいぜ。なんでも、期日までに完成させないといけないってんで。
なるほどねえ。「忙しい」ってのは、「心がなくなる」と書くからねえ。しかし、忙しいのはいつものことじゃねえか。
それが今回ばかりは違うんで。棟梁がやたらとああだこうだと文句をつけ、挙げ句の果てには、全然関係のない仕事の愚痴を八っつぁんに言ったりするもんだから、仕事がはかどらねえって、文句こぼしていたぜ。
それもいつものことじゃねえか。いったいこんどは、何にとりかかっているんだい。
五重塔だってよ。
五重塔?へえ、驚いたねえどうも。何でまた五重塔なんて建ててるんだい?
なんでも、江戸で一番高い五重塔を作るって、息巻いていたぜ。
芝にある五重塔よりもかい?
ああ。押上に作るらしいぞ。
面白そうじゃねえか、行ってみようぜ。
…お!いたいた。あんな高いところに登ってやがる。おーい八っつぁーん!…なんだよ、無視しやがった。おーい!何も無視することはないじゃねえか!
うるせえ!
おいおいなんだい、うるせえとは何だ。人がせっかく、酒でもごちそうしてやろうと思ったのに。
いま、それどころじゃねえんだ!もう少しで完成なんだ!黙ってろ!
ずいぶんな言い様だねえ。そんなこと言ったらねえ、もう遊んでやらないぜ。
おお、けっこうよ!
それにしても、ずいぶん高い五重塔だねえ。あんなに上まで登って大丈夫かねえ、八っつぁん。おいおい、何かグラグラしているじゃねえか。
やがて五重塔は一瞬にして崩れ落ちた。
大丈夫かぁ!八っつぁーん。
やがて五重塔の瓦礫から出てきた八っつぁん。
おお、無事だったか!しかしなんで、あんな簡単に五重塔が倒壊したんだ?
いけねえ。忙しくって、心柱を立てるのを忘れてた。
ご存知、「江戸のスカイツリー」の一節でございました。
投稿: onigawaragonzou | 2013年2月20日 (水) 00時32分
(太鼓の音)テンテンバラバラ、テンテンバラバラ
チョルス (歩きながら)おじい様、日本の寄席はいかがでしたか?
ハラボジ チョルスや、さすが本場の「落語」は違うな。ますます韓国落語の創作意欲が湧いてきたわい。
チョルス でも、トリの鬼河原亭権三(ごんざ)の「江戸のスカイツリー」っていうネタは、初めて聞きましたけど。
ハラボジ 五重の塔に登るあたりは、枝雀の「鷺とり」っぽい印象もあったが、違ったな。
チョルス 僕の「ギャラクシーSⅢ(もちろんサムソン製)」でダウム検索しても、このサゲの噺はないようです。
ハラボジ まあ、わしの作った人情噺「ソナギ」の台本を読んで、自分でも新作を書こうと思い立ったのだな。
まずは、忙しいという字は「心がない」と書くから、これをオチにする方針を立てた。そして、ああでもない、こうでもないと考えるうちに、「スカイツリーには心柱が入っているが、それが五重の塔の構造を真似ている」という記事を見つけて、「心がない」=「心柱がない」で行こうと決めた。五重の塔が出てくれば、江戸時代のイメージも広がるしな。
後は志ん朝あたりのユーチューブ落語をBGM代わりにして、江戸っ子言葉をちりばめていったな。
チョルス なんか、見てきたような話ですけど。
ハラボジ しかも、このネタ作りにタップリ3時間は費やしているだろう。
チョルス なぜわかるのですか?
ハラボジ この後に書いた「羅生門的事象」の記事が、普通のブログの文章量で終わっている。しかも書き終わったのは真夜中2時近くだ。さぞかし落語台本の執筆に時間を取られていたんだろう。ワシが言ったように、落語台本は時間がかかるから大変なんじゃよ。
チョルス そんなこと言って、このコメントだって、もうかれこれ1時間半はかかってますよ。それに、本文記事は韓国語ネタから始まって、あっという間に「SWA(創作話芸アソシエーション)の会」みたいな、落語尽くしのコメント欄に変わっちゃってますが、読者のよい子の皆さんは、ついて来れているのでしょうか?
ハラボジ どうかな。噺家のネタだけに、落伍者も多いだろう。
投稿: 鈴本こぶぎ | 2013年2月21日 (木) 00時33分
鬼河原亭権三(ごんざ)でございます。毎度ご贔屓にありがとうございます。
いえね。アタクシも韓国落語を創作しようと思っていたんですがね。いざ考えるとなると、どうも難しくってね。それで、江戸の創作落語でご勘弁願った次第で。
さすが、こぶぎ家ハラボジ師匠の推理はたいしたもんだ。その通りでございますよ。志ん朝師匠をBGMにはしておりませんが、志ん朝師匠を意識した口調になっていることはたしかでございますよ。
それにしても、創作落語は面白いですな。次に考えてみたいネタは、「ゲシュタポ長屋」または「江戸のゲシュタポ」というタイトルの落語でやんすよ。これで1本作りたいと思ってるんですが、さていいネタが浮かびますかどうか…。
投稿: onigawaragonzou | 2013年2月22日 (金) 01時44分