僕の死に方
ちょっと前のことだが、
私と同世代のラジオDJが、生放送のラジオでさんざんくだらないことを喋ったあとの、エンディングの35秒で、次のようなことを言った。
「東京タワーを見て思い出してほしいって人がいて、
で、その後最初にみた東京タワーが、特撮博物館でのミニチュアの東京タワーだったんですけど、
ミニチュアの東京タワーを見て「モスラ対ゴジラ」を思い出すかと思ったら、
ラジオを聴いててくれたというあなたのことを思い出しました。
今後ちょくちょく思い出してはいこうと思いますけど…
お疲れ様でした。
いつか、追いかけます」
最初聴いたときは、何のことかわからなかったが、これが41歳の若さで亡くなった流通ジャーナリスト・金子哲雄さんに対するメッセージであることに気づいたのは、だいぶ後になってからである。
私は最近、ほとんどテレビを見ないのでわからないが、それでも、ときおり見るテレビに金子哲雄さんが出ていたから、当時、そうとう売れっ子だったのだろう。
私とほぼ同世代の人の死。いやがおうでも、気になってしまう。
ふと思い立ち、金子哲雄『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小学館、2012年)を読んでみた。
余命を宣告され、絶望の淵に立たされた彼は、やがて、「自分の死に方」を、徹底的にプロデュースし始める。
自分の墓を、東京タワーのふもとのお寺に用意する。「東京タワーを見たら思い出してほしい」ためである。
死ぬ前に、すべての仕事を片付ける。お世話になった人に、きちんと別れを告げるのである。
そして自分の「死にざま」を、しっかりと記録する。
この本の性格上、読みながら涙が止まらなくなるのは、仕方のないことである。
私がこの本を読んで思ったことは、
「きちんと死ぬためには、ちゃんと生きなければならない」
ということである。
だからこの本は、死の準備のための本ではない。
「ちゃんと生きる」ための本である。
ただ、僕にはとてもできない。
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