ナカヤマさん
中2のころの話をしましょうか。
ラジオを聞いていたら、私と同世代のラジオDJが、つい最近中学校のクラス会に初めて出た、という話をしていて、そのときの話がとても面白かったんですよ。
被害妄想の激しいそのラジオDJは、自分がクラス会に行っても、なんとなく居心地が悪い。
クラス会に参加する人たちは、どちらかといえば学校で主導権をにぎっていた人たちで、そういう人たちに何となくなじみにくかった彼は、実際にはクラス会に来なかった人たちの方が気になる、と言っていたんです。それを聞いて、わかるわかると。
私も、10年ほど前に中学校のクラス会に出たことがあるんですが、そのときに来ていた人たちは、やはり中学時代にやんちゃをしていた人たちがほとんどで、私はかろうじて、生徒会長をしていた、ということだけで、何とかみんなに覚えられていた、という程度でした。
何しろ私の中学時代は、校内暴力とかが問題化していた時期で、私が通っていた中学校も、市内では「問題校」として、目をつけられていたくらいでしたから。
クラス会で、ふと思い出したことがあります。
中学の時に、3年間いじめられ続けたTさんという女の子がいました。その子の家はとても貧乏で、いまから思うと貧乏に対する「差別」に起因するいじめだったと思うのですが、1人だけ、そのTさんに、最後まで味方をしたナカヤマさんという女の子がいました。
ふだんは明るい子ですが、男子がその子をいじめようとすると、
「いじめんじゃねえよ!」
と、すごい剣幕でTさんを守るのです。
「S子!こんど何かされたら、私に言いなさいよ!」
ナカヤマさんは、Tさんのことを何かと気にかけていました。
ナカヤマさんはバスケ部の女の子で、バスケをしている時の姿がとてもかっこよかったんです。中1と中2のときに同じクラスだった私は、そのナカヤマさんに、ひそかに好意を寄せるようになりました。ま、中学生にはよくあることですね(笑)。
ここで、かなりヘビーな読者は覚えているかも知れないけれど、中1のときに、やはり同じクラスだったチバさんというバスケ部の女の子に好意を寄せていた、と書いたことがあります。チバさんとは、2年生になってクラスが違ってしまったから、中2になってからは、もっぱらナカヤマさんと話をするようになったんです。ま、中2のころなんて、そんなものです(笑)。
あるとき、ナカヤマさんがクラスの仲間を集めて、「お昼休みに体育館に忍び込んでバスケをしよう!」という提案をしました。
運動音痴だった私は、バスケとは縁遠い生活をしていました。なにしろ、ボールをパスされて、ドリブルしながら走っていると、走っている自分の足でボールを蹴ってしまう、というくらいでしたから(笑)。
でもそれからというもの、ナカヤマさんと一緒にバスケをするために、お昼休みになると体育館に忍び込んでバスケをするようになったのでした。これも、中2にありがちなことです(笑)。
これもやはり中2のときですが、ナカヤマさんが、中学校のマラソン大会で2位になり、ゴールしたときに、「2位」と書かれた札を先生からもらったんですね。そうしたら、ナカヤマさんは、なんと私にその「2位」と書かれた札をくれたのです。
どうして私にくれたのかはわかりません。たぶん私が、「自分も足が速くなりたいので、お守り代わりにその札がほしい」みたいなことを言ったのではないかと思います。なんか、私が言いそうなことでしょう?(笑)。
実際、私はその札を、しばらくのあいだ、お守りのように大事にとっておきました。もちろん、いまはもうありませんが。
さてそれから15年以上が経ち、30歳を少しすぎたころ、中学校の同窓会がありました。そのとき、いじめられっ子だったTさんが姿を見せ、そこでようやく彼女は、みんなとふつうに話をしたり、お酒を飲んだりすることができたのでした。
Tさんはみんなの前で、カラオケでZARDの歌を歌って、感極まって泣き出してしまいました。それまでのいろいろなことが頭をよぎったんでしょうね。
そして彼女の傍らには、ナカヤマさんがいました。ああ、この2人の関係は、中学生のときから、ずっと変わらなかったんだな、Tさんは、ナカヤマさんに、ずっと信頼を寄せていたんだな、と、そのとき思いました。
いじめられていた子がクラス会に出ようと思うのは、なみたいていの決心ではなかったはずです。それができたのは、彼女にとってナカヤマさんがいたからだろうな、と、そのとき思ったのでした。
ナカヤマさんとは、そのとき二言三言話しただけで、いまはどこで何をしているのか、わかりません。
いまふり返って思うことは、「結局、バスケはちっとも上達しなかったなあ」ということです。
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