大人こそ読め、ジュニア新書
4月21日(日)
原稿がいきづまると、全然関係のない本が読みたくなる、というのは、いつものことである。
江川紹子著『勇気ってなんだろう』(岩波ジュニア新書、2009年)を読み出したら、涙が止まらなくなってしまった。
たぶんいま、心がアレだからだとは思うのだが、それにしても、今年前半期に読んだ本のベスト1かも知れない。
これは、ジャーナリストの江川紹子さんの取材を通して語られた5人、そしてイスラエルの人々の「生き方の記録」である。
アルピニストの野口健さん、元衆議院議員の山本譲司さん、拉致被害者家族のお一人である蓮池透さん、元愛媛県警の警察官である仙波敏郎さん、ボランティア活動家の高遠菜穂子さん、そしてイスラエルの人々。
ここに登場するほとんどの人々は、ある時期、かなりのバッシングを受けた人たちである。
「秘書の名義借り」という罪で実刑判決を受けた山本譲司さんが、その後に歩んだ人生。
拉致被害者の奪還だけを望んできた蓮池透さんにやがて訪れる、心の変化。
誰よりも警察の仕事を愛し、警察の裏金問題を告発した仙波敏郎さんが、組織ぐるみの過酷な「いじめ」を受けながらも、決して警察を辞めなかった生き方。
「自己責任」という言葉で当時の権力者からも罵倒された、高遠菜穂子さんの勇気。
とくに私は、仙波さんの壮絶な人生と、強烈な信念に、思いを致さずにはいられない。
この人たちは、決して、出世したわけでもなければ、多くの人の理解を得られたわけでもない。
しかし誰よりも、自分に向き合い、人間に向き合おうとしている。
取材する江川さんのまなざしは、じつにあたたかい。「こんな文章を書いてみたい」と思わせる、心にスッと入り込む文章である。
この本を読めば、私が日頃いだいている信念なんて、じつにちっぽけなことだということに気づかされる。
まだまだ、やるべきことがあるのだ、ということに気づかされるのだ。
この本は、大人こそが読むべき本である。
この「読みやすい本」すら、手にとらないのだとしたら、いったい何を読むのか?
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