ホテルものにハズレなし
覚えてますかねえ。
ちょっと前に、浅田次郎の「面白そうな小説」を紹介されたんだが、あまりにも漠然としていて何の小説かわからなかった、というお話。
あれが少し波紋を呼んだようで、気になって推理してくれた人が何人かいました。
ある人は、
「その本は、『プリズンホテル』じゃないでしょうか?」
と推理してくれたが、いやいや、ブログにも書いたように、あくまで『プリズンホテル』みたいなテイストの小説であって、『プリズンホテル』そのものではない。
またある人は、
「書店で平積みされていたということは、『一路』という最新刊ではないでしょうか。参勤交代をテーマにした小説ですが、上下巻ですし」
と推理してくれたが、テイストがちょっと違うし、何より最新刊なので文庫本がまだ出ていない、というところが、条件とは異なる。
極めつけはこぶぎさんである。
先日の「ガスト会議」でも議題に上がり、ふだん小説をまったく読まないこぶぎさんが、インターネットを駆使して推理してくれた。
おかげで、浅田次郎のたいていの小説は、タイトルを聞いただけであらすじがわかるようになったという。
そもそもこぶぎさんは、このブログにコメントを書くたびに、新たな分野を開拓する。「泣ける映画」について書いたときには、「泣ける映画」を懐石料理風に紹介する内容のコメントを書くことを思いついちゃったために、「懐石料理」に関して一定の知識をものにしたし、いまは、コメントを落語風に書くために、落語を猛烈に勉強している。
さて、そのこぶぎさんが「ガスト会議」の席で、たしかこう言った。
「まさか、『きんぴか』じゃないよねえ。あんな有名な小説を知らないはずはないだろうしねえ」
そのまさかですよ。たぶん、正解は『きんぴか』です。
といっても、正解を確かめたわけではないのでわからないのだが、たぶん、『きんぴか』で間違いないと思う。
袖すり合うも多生の縁、というから、試しに『きんぴか』を読んでみることにした。ついでに、実はまだ読んだことのない『プリズンホテル』も読んでみることにした。
「浅田次郎って、なんかあざといよねえ」とは、妻の弁。妻の鑑識眼を信じる私からすれば、それはそうだろう、と思う。だがその「あざとさ」は嫌いではない。浅田次郎が希代のストーリーテラーであり、人情話の名手であることは、認めざるを得ないのだ。
たしかに読んでみると、『きんぴか』も『プリズンホテル』も、「笑いと涙の群像劇」、という点で、同じテイストである。しかも悔しいことに、私好みのテイストである。
『プリズンホテル』を読んで思ったのは、
「ホテルものにハズレなし」
ということである。
というか私は、「ホテルもの」が好きなのだ。
日本だと「高原へいらっしゃい」、韓国だと「ホテリアー」。
これらの「ホテルもの」を見て、それに『プリズンホテル』を読んで、「ホテルもの」を面白くするために欠かせない条件があることに気づいた。
1.単なるホテルのドラマではなく、「ホテルを再建する」ことがテーマになっていること。
ドラマ「高原へいらっしゃい」も、「ホテリアー」も、まさにホテルを再建する話である。『プリズンホテル』も言ってみれば、やくざがホテルを再建する話である。
2.総支配人が、異端児だが誠実、といったような、クセのある人物であること。
「高原へいらっしゃい」の田宮二郎、「ホテリアー」のキム・スンウは、まさにそんな感じだった。『プリズンホテル』の花沢も、そんな人物である。
3.料理長もワケアリの人物だが、その腕は超一流であること。
「高原へいらっしゃい」の益田喜頓は、料理の腕は超一流だが、一流ホテルの経営方針と合わずにケンカばかりしている伝説のシェフ。『プリズンホテル』の服部料理長も料理の腕は一流である。
どうも、この3つの条件が、「ホテルもの」を面白くするために必要なようだ。
逆に言えば、この3つのセオリーで「ホテルもの」の小説や映画を作れば、面白いこと間違いなし!である。
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